仏像から考える仏教変遷の歴史あれこれ

仏教 鎌倉

仏教の歴史を学ぶにしても、教科書をただ読むよりも、自分の足を使って実際に見て・感じることのほうが何倍も得るものがあります。

幸いにして日本は世界でも類を見ない仏像や寺院が数多く残っている稀有な国です。これを活かす手はありません。

まずは旅行気分でもって、仏像から仏教について学んでみませんかというのが今回のお話でございます。

書いてる本人も素人ですから難しくありません。仏教が少しでも面白いと思えるような記事になっていたら、これ幸い。

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仏教のタブー

釈迦が菩提樹(ぼだいじゅ)の下で悟りを開き、仏教を開いてから数千年あまり。初期仏教においては、現在のように仏像が観光名所となるとは思っていなかったはずです。

というのも、釈迦が説法をしていた頃は、偶像否定が徹底され、80年の生涯を遂げた後も、500年以上にわたって偶像は造られなかった。

では、釈迦が入滅した後の信仰の対象はどうしていたのかと言えば、釈迦の足跡をかたどった仏足石(ぶつそくせき)や悟りを開いた菩提樹などが釈迦の象徴(イメージ)として信仰の対象となっていました。

仏足石
出典:長谷寺 仏足石|Ik T

日本にも仏足石はありまして、鎌倉にある長谷寺などが有名です。なんとかイメージだけで信仰していた人々も、釈迦の言いつけを破るXデーとも言える日が訪れます。

はじめて仏像が造られたのがガンダーラ(現パキスタン)。

仏像が造られた理由は諸説ありますが、「足なんかじゃものなりねぇ」という人々の声(信仰心)から仏像が造られていったという認識でまず間違いない。

釈迦像
出典:菩薩立像(2~3世紀 ガンダーラ)|PROHideyuki KAMON

仏像が登場してきたのは、およそ紀元1世紀ごろから。

仏教に詳しい方であれば、大乗仏教との関係を指摘するかもしれません。紀元前後に興ってくる大乗仏教によって救済できる人々が増えてきたことから、崇拝の対象として当然仏像は重宝がられました。

大乗仏教は仏教の一派、万人救済を説いているのが特徴。そもそも釈迦と同じ境地に辿りつくには、あまりにも厳しく辛い修行が必要だったことから、悟りを開けるものは限られていました。

こうした背景もあり、大乗仏教は「仏教を大衆化させた」という言い方をよくします。大乗仏教によって仏教がさらに身近なものとなり、仏像も一気に普及していくことになります。

如来像と菩薩像

仏像が造られたのは釈迦をイメージではなく、生で見てみたいという欲求からくるものが大きかったわけですから、仏像のモデルはもちろん釈迦になる。

しかし、大乗仏教が発展してくると、釈迦像以外にもさまざまな仏像が造られるようになってきます。

阿弥陀如来(あみだにょらい)、薬師如来(やくしにょらい)などの「如来」シリーズや文殊菩薩(もんじゅぼさつ)、観音菩薩(かんのんぼさつ)、地蔵菩薩(じぞうぼさつ)といった「ぼさつ」シリーズ。

観音菩薩
出典:Kannon Bosatsu (観音菩薩) 12th Century Japan|InSapphoWeTrust

如来像は出家後の釈迦をモデルにしており、菩薩像は出家前の王子時代の釈迦をモデルにしています。菩薩像の方が着飾って豪華に見えるのはこのため。

ここから分かるのが、仏像にもそれぞれヒエラルキーがあることです。如来像と菩薩像では如来像の方が格上になります。

薬師三尊像
出典:辻の薬師堂(薬師三尊像レプリカ)|Ik T

鎌倉国宝館にある薬師三尊像の立ち位置からもよく分かります。まず中心に鎮座するのが薬師如来像、そして両隣に従うように月光菩薩と日光菩薩がいる位置関係になっています。

如来像が両脇にくることは決してありません。

仏像の変遷は欲望の変遷

さまざまな仏像が造られていく中で、日本ではどのような仏像が人気を呼んだのか。仏像の業界にも「人気」「不人気」というものがありまして、仏像の変遷を辿っていくことで見えてくるものがあります。

阿弥陀如来像
出典:阿弥陀如来|MIXTRIBE

平安時代の中ごろから阿弥陀如来の信仰が盛んになっていき、鎌倉時代に入るとその勢いはさらに加速することになる。

阿弥陀如来像が日本人にこれほど受け入れられた理由として、現世で苦しみに喘ぐ人々は、死後すべからく極楽浄土に連れて行ってくれるという(阿弥陀如来の四十八の大願)救済にありました。

現世において「南無阿弥陀仏」と唱えたものは、必ず阿弥陀如来が極楽浄土に連れてってあげるよと約束してくれたのです。

しかし、人間とはなんと御しがたい生き物なのでしょう

死んだ後の救済ではなく、生きている「今」の救済をしてほしいという風潮が広まっていき、貧困の救済と万病を治す薬師如来の信仰が鎌倉時代以降、庶民を中心に広まっていくことになる。

薬師如来像
出典:Silence, but powerful(木造薬師如来坐像)|Raisa H

死後の救済は阿弥陀如来、現世の救済は薬師如来がしてくれることで、人々はいつでも御加護を受けられるようになったのです。

仏教が日本で広まっていくということは、言い換えれば、貴族から武士・庶民へと広まっていくことと同義です。

貧しい階級へ広まっていく中で、逼迫した生活を送っている庶民にとって、薬師如来の現世の救済に救いを求めたのも当然の流れだったのです。

人間の飽くなき創造力

偶像否定だったはずが、いつの間にか偶像が解禁され、さまざまな仏像が造られるようになっていく。こうして見ていくと、信仰心という名の欲望から、仏像が造られていくようにも思えてしまう。

そして、ついに人間の信仰心、いや、欲望をそのまま具現化したような究極の仏像が登場する。

それが千手観音。またの名を千手千眼勧世音菩薩という。「千」は仏教では「無限」を意味する。

千手観音
出典:Kanze108 faved this|bizmac

千本の手を生やし、しかも手1つ1つに目が刻まれており、さらには顔は十一面。1人ももらさず救済してほしいという思いが具現化した観音像。

ちなみにアマゾンではこの最強観音像が購入できます。

ありがたや~

参考文献・サイト
知っておきたい仏像の見方 角川ソフィア文庫
世界遺産 醍醐寺
釈迦|wikipedia

知っておきたい仏像の見方 瓜生中
美しい仏像は美術品ではなく、信仰の対象として造られた。人ーの思いが込められた仏像がどのように造られたか、どういう救いをもたらすのか。仏像に現れた仏教の世界観が一問一答でわかる、コンパクトな一冊
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