旧約聖書の矛盾!?なぜ創世記において「女」だけが2回創造されたのか

いい時代になったものです。聖書が電子書籍で読めるようになったことで、いつでも読めるようになったわけですから。

しかも、ぼくが購入した聖書は99円という破格の値段。

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興味がある方は是非。と、聖書の押し売りはこのくらいにして、ここからが本題。

創世記によれば、神、ヤハウェさんが天と地と、人を含めたそのたもろもろを6日間で創造なさったわけです。

電子書籍版で久しぶりに旧約聖書を読み返していったわけですが、学生当時には気づかなかったとある箇所がどうも理解に苦しんでしまったんです。

この矛盾ともいえる部分が気になったので、ぼくなりに調べてみようと思ったのがそもそものはじまり。

そこで今回は、この聖書の矛盾についてのお話です。

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はじまり

神によって人が創造されたのは6日目のこと。

神は自分のかたちに人を創造された。すなわち、神のかたちに創造し、男と女とに創造された。神は彼らを祝福して言われた、「生めよ、ふえよ、地に満ちよ、地を従わせよ。また海の魚と、空の鳥と、地に動くすべての生き物とを治めよ」。そのようになった。
出典:旧約聖書 創世記 第一章 日本聖書協会(翻訳)

これが第一章における人が造られたいきさつです。人は神のかたちに真似て造られたんだと分かります。

続いて第二章の冒頭では、「主たる神が地と天とを造られた時」とあるように、7日間の天地創造を具体的にふり返る件(くだり)が書かれています。

そこで、有名な「は泥から生まれた」という一節につながるわけです。

主なる神は土のちりで人を造り、命の息をその鼻に吹きいられた。そこで人は生きた者となった。
出典:旧約聖書 創世記 第二章 日本聖書協会(翻訳)

ここでは「」とは、男と女を指しています。代名詞が「彼ら」となっていたことからも分かりますね。

さらには、第一章にあった「神は自分のかたちに人を創造された。すなわち、神のかたちに創造し、男と女とに創造された」とあり、「すなわち」という具体例を表す接続詞があるのもその根拠。くどいですが大切な部分なので。

そして、神によって造られたエデンの園で生活することになる。

旧約聖書の矛盾

しかし、ここで神が思いもよらないことは発するのです。

人がひとりでいるのは良くない。彼のために、ふさわしい助け手を造ろう。」
出典:旧約聖書 創世記 第二章 日本聖書協会(翻訳)

あれ?人とは男と女を意味しているのではないのか?と疑問が浮上します。さらに、ここでは「」という代名詞が使われていることに気がつきます。

ということは、人とは彼、つまり男だけを意味しているのか?ということになり、天地創造にあった「男と女とを創造した」と矛盾が生じます。

その後の流れを読んでいても、

そこで主なる神は人を深く眠らせ、眠った時に、そのあばら骨の一つを取って、その所を肉でふさがれた。主なる神は人から取ったあばら骨でひとりの女を造り、人のところへ連れてこられた。
出典:旧約聖書 創世記 第二章 日本聖書協会(翻訳)

また、

人とその妻とは、ふたりとも裸であったが、恥ずかしいとは思わなかった。
出典:旧約聖書 創世記 第二章 日本聖書協会(翻訳)

とあることから、第二章で使われている「人」とは、明らかに男だけを意味していることが分かります。

ファウストから読むリリス像

人間の始祖はアダムとエバですが、創世記に記されている記述の矛盾から、神はエバ以前にアダムの妻となる女を造っていたのではないかという考えが生まれることになります。

それがリリスです。

リリスと言えば、ゲーテの『ファウスト』に登場することでも有名ですよね。

ファウスト そいつは誰だい。
メフィストフェレス よく御覧なさい。リリトです。
ファウスト 誰だと。
メフィストフェレス アダムの先妻です。
出典:ファウスト 森鴎外全集11 ちくま文庫

このように、エバ以外の妻を示唆しているセリフがあります。ちなみに、リリス(Lilith)リリトとも表記されます。

さらに同著から詳しいリリス像を見ていくと、

あの綺麗な髪と、自慢そうに附けている、あの、たった一つの飾りとに、気をお著けなさいよ。あれをエサにして若い男を攫まえようものなら、めったに放しっこありませんからね。
出典:ファウスト 森鴎外全集11 ちくま文庫

リリスは男グセの悪い悪魔として描かれています。

アダムとリリスのエピソード

リリスは『ファウスト』以外にもさまざまな文献や聖典に記されているのですが、アダムとの具体的な馴れそめについて記している書物が『ベン・シラのアルファベット』になります。

アダムとリリスの物語の集大成が、8世紀から11世紀に成立した『ベン・シラのアルファベット』です。
出典:いちばん詳しい「堕天使」がわかる事典 森瀬 繚

その内容を簡単にまとめるとこうだ。

彼女はアダムの妻としてイブよりも先に神に創造されたとされており、アダムとリリスは性交していたという。しかし、彼女は奔放な性を楽しむ性格で、正常位にこだわるアダムに対し、獣じみた体位などを要求したという。これにより二人は仲違いし、リリスはアダムのもとを去る。
出典:知っておきたい 天使・聖獣と悪魔・魔獣 荒木正純

性欲旺盛なイメージはゲーテの『ファウスト』に描かれたリリス像とも一致しています。リリスがアダムの元から去ったことで、神はエバを造ったという旧約聖書に記されているなじみ深い記述に戻るわけです。

終わりの始まり

ベン・シラのアルファベットの影響力は凄まじかったようで、このリリスのアダム妻説がさまざまな書物で取り上げられるようになっていったといいます。

『ベン・シラのアルファベット』の影響は大きく、13世紀スペインの法律学者モーゼス・デ・レオンの著したカバラ文献『光輝の書(ゾーハル)』がリリスをアダムの妻と書いている他、イサクとヤコブのコーヘン兄弟は、カバラについての論文『左方流出論』の中で(中略)記述している。
出典:いちばん詳しい「堕天使」がわかる事典 森瀬 繚

また、アダムと別れた後のリリスについても、さまざまな説が存在します。

紅海に身投げした自殺説やエバをそそのかすヘビになった説、そしてサタンの妻になった説というのもあります。あくまで説の一つという認識で、その根拠となると俗説の域を超えないものもあります。

リリス妻説の根拠も実際にははなはだ怪しいですが、こうした説があるのも事実。まぁ、解釈する方に問題があると言われればそれまでですが、天地創造の部分だけでも読んでみてください。

あなたはどう読みときますか?