人類最初の武器 棍棒(こんぼう)発達の歴史

人類がはじめて創り出した武器とは何か、ずばり「棍棒(こんぼう)」である。

それ以後、さまざまな発展をとげながら愛され続けてきた棍棒、実は現在でも普及率はハンパない。

たとえば、ポリスメンが常時携帯している警棒は、名前こそ違えど、その姿形は紛れもなく棍棒が発達したものである。

また、ドラクエしかり、勇者が必ずといっていいほど初期装備(というかそれしか武器がない)する弱小武器に棍棒がある。

ゲーマー、いや国民的ゲームとなったドラクエの認知度を考えると、日本人が一度は装備した武器とも言えるのだ。

ちなみにドラクエwikiによれば、ドラクエシリーズで必ず登場していた数少ない武器の1つに棍棒があるという。

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人類最初の武器たる所以

棍棒はたしかにそこらへんに落ちている棒を拾ってきて、振り回せば武器となるだろう。しかし、それならRPGでこれまたお馴染みの初期装備「木の棒」と表現しても間違いはないはずである。

なら「木の棒」と「棍棒」との違いはなにか。それは、相手を攻撃する意図を持って創られた最初の武器かどうかである。

マール社から出版されている『武器』によれば、棍棒が人類はじめての武器である所以についてこう説明している。

棍棒は、武器として意図的に作られた最初のものと考えることができる。原始人が武器をほしいと思った時にふと手にした棒きれや石が棍棒の原型であり、技術的に発達したものが棍棒である。
出典:武器 マール社 ダイヤグラム・グループ 田島優 北村 孝一

この説明によれば、いつも身近にあった木の棒や棒きれが、ある日を境に「攻撃する武器」として原始人の意識が変わったことになる。

もちろん、当時のリアルな出来事は誰も知る由もないのだが、木の棒に対する意識の変化によって、発達したのは間違いない。

そのため、初期の棍棒は「武器である」という意識の差こそあれど、木の棒などの自然物との外見的な違いはあまりなかったのかもしれない。

しかし、棍棒が時代とともに発達していく中で、さまざまな発展を遂げることになっていく。

そこで次からは、棍棒を5つのグループに分けてそれぞれ紹介していこうと思う。

棍棒の5つグループ

棍棒の種類は5つのグループに分けることができる。

単体棍棒・合成棍棒・連接(れんせつ)棍棒・金属製鎚矛(つちほこ)・職杖(しょくじょう)

である。

このグループを見ただけでも棍棒のバラエティ豊かな発展が伺える。特に鎚矛(つちほこ)や職杖(しょくじょう)、つまりメイスも含まれていることは興味深い。

それでは具体的にみていくことにしよう。

単体棍棒

棍棒の歴史

Ⅰ.メレ(パトゥ・ポウナモウともいう):マオリ族の翡翠(ヒスイ)製棍棒 Ⅱ.フィジーの木製棍棒 Ⅲ.アステカ、ウニマク島出土の鯨のひげ製棍棒
イラスト参照図書:武器 マール社

単体棍棒は金属以外の同じ素材でできた棍棒のことである。材料としては木や骨が多かった。

はじめは自然に落ちている流木や骨をそのままぶん回していたのが、その後殺傷能力を高める加工が施されていく。しかし、あくまで素材は木なら木、骨なら骨と単一の材料である。

棍棒の歴史
出典:batons|Flickr

棍棒というとゴブリンやオーガの武器として描かれることが多いためか原始的なイメージがあるが、警察官の警棒(木製)も単体棍棒のグループに属する。

また、1960年代のニューヨーク警察で採用していた硬質ゴム製の警棒も単体棍棒に属する。金属製以外の素材であれば単体棍棒扱いになるようだ。

それにしても人類と棍棒の歴史の長さに驚く。

合成棍棒

棍棒の歴史

Ⅰ.キリバス(ギルバート諸島):鮫の歯を結びつけた木製棍棒、剣の原型 Ⅱ.北米の平原インディアンの棍棒。柄は生皮で石を固定 Ⅲ.1510年代の鎚矛、木の柄にとがりのついた3枚の鋼板を取り付けてある
イラスト参照図書:武器 マール社

合成棍棒は2種類以上の素材を組み合わせて作られた棍棒のことである。柄の先端に石などの重量のある硬い素材をつけたものの他、柄の両脇に動物の歯を結びつけたキリバスもこの仲間になる。

先端をさらに加工することで、単体棍棒以上の殺傷能力が期待できた。そして、現代の合成棍棒といえば間違いなく釘バットであろう。警棒と同様、未だに使用されているのである。

連接(れんせつ)棍棒

武器3-3

Ⅰ.スイスの星球式鎚矛 Ⅱ.近代ドイツの暴動鎮圧用警棒:スプリングにより柄が伸縮する構造
イラスト参照図書:武器 マール社

棍棒をフレキシブルにしたものが連接棍棒である。多くは鎖状の継手(つぎて)の先端に星状球や短棒などを結びつけている。

戦法としては鎖で敵の武器を絡め取り、攻撃力を低下させたところでダメージを与えるのだが、実際には鎖がたわむため実践で使用するにはそれなりの技術が必要だったという。

フレイル(長い棒と短い棒の適当な長さの2本の武器をつなぎ合わせた武器の総称)や、近代ドイツで使用されていた伸縮自在の暴動鎮圧用警棒も、棍棒のフレキシブル型として連接棍棒に分類される。

イメージとしては、女教師が必ず持っている伸縮自在の指示棒を思い浮かべよう。あの指示棒にスプリングが内蔵され、ものすごく硬くなった棒が鎮圧用棍棒である。

金属製鎚矛(つちほこ)

棍棒の歴史

Ⅰ.18世紀インドの鎚矛:中空で鋼鉄製の矛先には打ち出し模様が施され多数のトゲがある Ⅱ.16世紀初めのドイツの金めっきした鉄製鎚矛
イラスト参照図書:武器 マール社

銅鎧が作られていた地域では、鉄製の鎚矛もつくられるようになる。鎧で武装した敵に対して刀剣以上の力を発揮したからである。

棍棒の歴史
出典:Mace vs Shield|Flickr

鎧を粉砕できなくとも、打撲・骨折といった地味にイヤなダメージを敵に与えることが可能だった。

また、鎚矛はメイスとも訳されるが、ドイツやイタリアを中心に発達していった同じ形状の鉄片を放射状につなぎ合わせた「出縁(でぶち)付き型メイス」(上イラストⅡ参照)や14世紀頃ドイツで誕生した先端が星状の「モルゲンステルン」などが登場した。

棍棒の歴史

Ⅰ.モルゲンステルン:14世紀のドイツで誕生したメイスの一種
イラスト参考図書:武器事典 市川定春

ちなみに、モルゲンステルンを含め星型の頭(刺が放射状に突き出した物体)を持った武器を総称してモーニング・スターと呼ぶこともある。

モーニング・スターというと星型鉄球にチェーンがある武器をイメージしやすいが、この武器はボール・アンド・チェインと呼ぶのが相応しく、モーニング・スターは本来もっと広い意味で使われていた。

職杖(しょくじょう)

棍棒の歴史
出典:Marine takes Timberlake to ball|Flickr

今までは武器としての棍棒を紹介してきたが、職杖は武器というよりも権威の象徴として使用されている。

人類最初の武器として登場した棍棒は、同時に暴力の象徴を示すことから、祭礼用棍棒は「権力の象徴」という意味を含んでいた。

棍棒の歴史
出典:魔法世界の元ネタ図鑑 魔法研究会

職杖は古代エジプトのレリーフにも描かれている。紀元前3000年頃のレリーフには、鎚矛で罪人を叩く上エジプトのナルメル王が描かれている。

権威の象徴とはいってもそこは棍棒、ナルメル王が罪人に対して思いっきり職杖を振り回しているのが分かる。

また、ルネサンス以降のヨーロッパをみても権威の象徴として職杖が作られていた。

棍棒投げたっていいじゃない

棍棒の歴史

Ⅰ.オーストラリア原住民の投げ棍棒(ビクトリア地方) Ⅱ.オーストラリア北西部の投げ棍棒(テグレー川流域)
イラスト参照図書:武器 マール社

我々の祖先がそこら辺にあった棒きれを武器として使いはじめた棍棒だが、なにも打撃専用の武器に固執する必要はない。

はじめはすばしっこい小動物を仕留めるために思わず投げたのかもしれない。

しかしその後、命中率を上げ、使いやすさを追求した投げ専門の棍棒「投げ棍棒」なるものがオーストラリアで誕生する。石などの硬い物質を柄の上部に付けることで飛距離を延ばす工夫が施された。

ただし、攻撃力は向上するものの加工労力が大変なこと、そこらへんの自然石で代用可能なことから、必ずしも効率的な武器とはいえなかったようだ。

ブーメランの登場

棍棒の歴史

Ⅰ.オーストラリア東海岸の戦闘用ブーメラン(プリスベーン地方):波上の線が深く刻まれている Ⅱ.オーストラリア(クイーンズランド地方):赤に白の模様を塗ったブーメラン,いずれもオーストラリア原住民が使用
イラスト参照図書:武器 マール社

投げ棍棒の最終形態はブーメランである。

ブーメランという名前の由来は、オーストラリア(ニュー・サウスウェールズ地方)の原住民が使っていたものだが、現在ではオーストラリア以外の地域の類似の狩猟用武器の総称となっている。

投げ棍棒以上に飛距離を延ばす工夫がなされ、現代のブーメランの形状と同じく「く」の字のような形状をしていることが多い。

また狩猟用や戦闘用ブーメランに限っていえば、投てき者の元に戻ってくることはない。

というのも、ブーメランが自分のところに戻ってくれば、それは紛れもなく敵から攻撃されたものと同じ行為だからである。

このように棍棒の発達の系譜はさまざまな発展をとげ、現在の私たち生活に根付いているのである。人類最古武器は伊達ではなかった。