無意識を意識することで見えてくるものとは|脳はなにかと言い訳する 池谷裕二

アイデア

私たちの日々の行動は、特別に意識しなくとも脳が勝手に計算してくれるおかげで自動的に(無意識的に)体を動かすことができます。

歩いたり・走ったり・喋ったり・・・でも、それは私たちの意識には上らないだけで、実際には頭の中では脳みそがフル回転しているわけですよね。

たとえば「歩く」という動作を考えて見るだけでも、右足の歩幅、左足の歩幅、足を出すタイミング、腕の振り、上半身のバランスなど、実に多くの計算を脳はしています。

今でこそロボットの二足歩行はそれほど難しくなくなりましたが、少し前まではロボットで二足歩行するのさえ困難だったわけですから、私たちの何気ない行動が実は高度な動きだったりするわけです。

一見すると、意識だけがすべてだと思っていると勘違いしがちですが、実は無意識にこそ脳の真の活動があるといえます。脳には「意識できること」よりも「無意識のまま脳が実行していること」のほうがはるかに多いのです。

そして、もしかしたら無意識を知ることが、脳を知ることであり、自分を知ることなのかもしれません。

本書のテーマが、まさに「無意識」なんです。普段は決して気づかない無意識の世界を覗いてみることによって、今まで知らない自分を垣間見れるヒントになるかもしれませんよ。

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「恋は盲目」は科学的にも正しい!?

心理学には『外発的動機付け』という言葉があるそうです。何か報酬を与えることでモチベーションを上げて、目標を達成させることです。

たとえば、親が子供に「算数のテストで80点以上取れたらお小遣いを上げる」といったことで、子供のやる気を引き出すことなどは外発的動機付けの好例です。

報酬を使う方法は、心理学では「外発的動機付け」と呼ばれ、古くから仕事の効率を高める手段としてよく知られている。
出典:脳はなにかと言い訳する 池谷祐一 p52

人がやる気を出すために関係してくるのがドーパミンという物質。報酬を与えることで、ドーパミンの分泌が多くなることがわかっており、これがやる気やモチベーションが上がるメカニズムとなるんだとか。

また、ドーパミンの神経細胞が多くある場所もわかっており、それが「腹側被蓋野(ふくそくひがいや)」という部位。ここを刺激することで、ドーパミンがたくさん分泌するようです。

そして、この腹側被蓋野を刺激させる方法の一つに恋愛があります。ドーパミンといえば快楽を生み出す物質としても有名ですが、実は恋愛をすることでもドーパミンが多く分泌していたんです。

よく「恋は盲目」なんていいますけど、脳科学的にはまさにそのとおりで、周りからいくら反対されても付き合ってしまうのは、ドーパミンによって快楽を感じているため止めることができないのです。ただし、恋愛に妄信的になるのと同時に急に冷めることもよくあること、短期決戦が恋愛には必要なのかもしれませんね。

ストレスは記憶に左右されるって本当?

ストレスは記憶と非常に密接な関係を持っていることは知っていましたか?

この本では「場馴れ」のメカニズムについて説明しています。日本人はなかなか人前で話すという機会があまりないため、結婚式スピーチなどの大勢の前に向けて話をするときに緊張してしまう人も多いと思います。

こうした悩みを解消していく方法として、何度も人前で話す経験をしていことによって克服していく方法があります。

池谷先生の説明によれば、これは経験を積んだことによって「人前で話すときは緊張する必要はない」というふうに意識が変化したからです。

今まで緊張していた自分が変化できたということは、既存の感受性を修復し、それを記憶したことで、感じ方や行動にも変化が起こったと説明できます。

場数を踏んだことで、何度も何度も繰り返していくうちに記憶が上書きされて、新しい行動を身につけることができたということは、つまり、記憶を鍛えるることができればストレスへの耐性も強化される可能性があるということなんです。

たとえば「○○が苦手」「○○が怖い」といったことがあるとストレスの負担も増大してきますが、さきほどの場馴れの例のように、経験を積むことによって「○○って実は怖くなかったんだ」という記憶を上書きしてやることによって、苦手や恐怖を克服するだけでなく、苦手分野が狭まっていくわけですから、ストレスにも強くなる自分へと成長していくこともできるんです。

本書では、記憶を司っている「海馬」を鍛えることがストレス耐性を強くすることができるといいます。

海馬はストレスに打ち克つことで発達し、次に新しいストレスが来ても打ち克つことができ、それによってまた海馬が発達し、さらに大きなストレスを克服できるようになるわけです。
出典:脳はなにかと言い訳する 池谷祐一 p36

苦手意識やストレスを克服していくヒントが記憶を司っている海馬にあったとは面白いですよね。ストレスを克服したい方は参考になるかもしれませんよ。

人間には「不安」という感情は必須?

仕事や学校、家庭などで毎日大小問わず、さまざまな不安や悩みを抱えることって多いと思います。

こうした不安が多きすぎてしまうと、トラウマやうつなどの病気になってしまうのですが、脳科学の立場から考えると、ある程度の「不安」は脳を成長させるために非常に重要なものなんだそうです。

もし、毎日が何の不安もなく過ごせられたら、こんなに幸せなこともないかもしれませんが、私たちの脳というのはどうもすぐ怠けてしまうようで、平穏な毎日をすぐに飽きてしまうのです。

生きることにマンネリ化してしまうことで、人間はやる気が出なくばかりでなく、社会への適応力も記憶力も低下してしまうといいます。

何も悩まないことから生まれた単純な明るさと、悩んだ末に生まれる前向きな明るさは、明らかに違います。悩まない人たちは、記憶力も低下します。そもそも、記憶というのは、未来の自分のためにあります。未来への計画性のない人にとっては、記憶は不要なのです。
出典:脳はなにかと言い訳する 池谷祐一 p265

人生とはそもそも刺激的なもののはずです。不安というとマイナスなイメージを持ちがちですが、池谷先生いわく、「不安は人間の生命力の肥やし」になっていたのです。

脳科学はきな臭い!?

読書好きな人の中には脳科学はちょっときな臭いから手が出にくいとう読まず嫌いな方もいるのではないでしょうか?

たしかし物理や化学とは違って、研究対象となるのは「人」ですから、これほど曖昧なものもありません。

しかし、この本の著者である池谷先生は本書の意義についてこう説明しています。

科学的な知見から派生した私の妄想も、それなりの存在意義があるのではないかと思うのです。あまり決定的でないことも、仮説のまま、思い切って述べてしまってもよいだろう、少なくともそんな本が書店に一冊くらい並んでいてもよいだろう、と考えています。
出典:脳はなにかと言い訳する 池谷祐一 p335

本書が「エッセイ」という形をとっているのもこのためだと思われます。あくまで楽しみながら読める脳科学本として、目から鱗の発見を感じてみてください。

脳はなにかと言い訳する 池谷裕二
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