世の中捨てたもんじゃねぇ!うなぎ鬼(全3巻)がヒューマンドラマだった件

人間の心や本性をテーマとした落合裕介作画、高田侑原作のコミカライズ作品。全3巻で、個人的にはホラーというよりヒューマンドラマな読後感。

設定は確かにキツいですが、テーマとしていることは大なり小なり日常的に誰もが体験してることだから、人生訓とか教訓的な作品と思った方がいいかも。ただしグロさは覚悟したほうがいい。

ちなみに、アマゾンの青年コミックランキングでここ数日上位に上がってきてたので読んだしだい。新作でもないし、何がきっかけで人気が出たのか不思議。

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あらすじ

倉見勝(まさる)33歳。ギャンブルの借金からサラ金に手を出し、気がつけば借金は100万をこえ、首が周らないところまで追い詰められる。そんなときに拾ってくれたのが千脇エンタープライズ社長・千脇。ただこの社長、かなりのブラック。

うなぎ鬼
出典:うなぎ鬼(1)落合裕介 高田侑

倉見の仕事は借金の取り立て。千脇の指示されるまま仕事をこなしていく。しかしある日、千脇から新たな仕事を頼まれれる。

重さが50~60キロのコンテナをマルヨシ水産(うなぎ養殖場)まで運ぶというだけの仕事を任される。だが、1回の運搬で15万というあり得ない報酬にまっとうな仕事ではないことを悟る倉見。

うなぎ鬼
出典:うなぎ鬼(1)落合裕介 高田侑

同僚の富田からはヤクザとの関係や犯罪に手を染めている社長の黒い噂を聞かされる。俺たちが運んでいるモノは一体なんなのか、次第に疑心暗鬼になっている倉見と周囲の人間模様と共にストーリーは進んでいく。

恐怖の描き方

漫画では、描写そのものをあえて描かないことで、恐怖感をより読者に与える手法を取り入れることがありますが、この作品ではこの手法が徹底されており、しかもそれが伏線となってクライマックスに向っていく。

うなぎ鬼
出典:うなぎ鬼(1)落合裕介 高田侑

1巻、うなぎってのはタンパク質なら何でも喰っちまうんだというセリフでまずは先制パンチを食らわせる。この後も断片的な情報を描くことで読者に想像させ恐怖を煽っていく。

うなぎ鬼
出典:うなぎ鬼(2)落合裕介 高田侑

以前働いていたキャバクラの常連客から、死体請負い始末する業者の話を思い出し倉見に話すシーンも恐怖を与える装置としてしっかり働いている。また、倉見がマルヨシ水産の従業員と行きつけのホルモン屋にいったとき、ガリッと何か硬い感触があり吐き出してみると、

うなぎ鬼
出典:うなぎ鬼(2)落合裕介 高田侑

仕事仲間からは魚の骨だと説明されるが、一緒に呑んでいるマルヨシ水産は例のコンテナを届けている会社。しかも、この店で扱っている肉はマルヨシ水産が卸していることを知る。

ウナギ、気味の悪いコンテナの運送、死体請負業者の存在、人間の歯らしき骨。人間の死体をウナギの飼料にすることで誰にもバレずに処分してるのか・・・と想像が繋がっていく。

たとえば、コンテナに入っている死体の描写をストレートに描くよりも、これら客観的な要素が1つ1つ積み重なって恐怖を描いていくほうが読者の想像力が掻き立てられるのは間違いない。

王道の手法といえばそれまでですが、その効果は十分に発揮されている。また、テーマ性に人間の本性みたいなものも扱っているので、それとうまくマッチしていていい相乗効果にもなっている。

心眼と無垢とを体現する少女

この作品にはさまざまな人物が登場しますが、その中でもラストの伏線にもなる少女が実はこの作品の一番のメインキャラだったりする。

うなぎ鬼
出典:うなぎ鬼(3)落合裕介 高田侑

登場キャラのどいつもこいつも本心を隠しながら生きている。とくに女性の豹変っぷりが目立っていて、何か過去にイヤことでもされたのかと思うほど・笑。そんないやらしい登場人物を描きながらも、その対極にいたのがこの少女。

都内にある黒牟(くろむ)はいくあてのない人間たちが作り上げた街。ひとがいやがる仕事を生業にしている街で育った少女は、その人の本心を見透かすキャラとして登場する。

のちほど話しますが、この少女を念頭にラストの意味を探るとまた違った読み方ができて面白い。そして、この少女と同様に作品のキーとなるの千脇社長宅に掛けてあった掛け軸。

うなぎ鬼
出典:うなぎ鬼(3)落合裕介 高田侑

3巻からの中盤からこの言葉がちょくちょく差し込まれるようになる。この書にある「心眼」とは目に見えるものだけを信じるのではなく、心の目、つまり心眼を持って人を見よという意味。まさにあの少女を体現する言葉とも言える。

あのときの告白の真意

結論から言えばマルヨシ水産は死体請負業者の顔を持ち合わせていた。最後まで曖昧にしていたのは人間の底知れぬ怖さや、立場によって変わる心内も描きたかったからだと思う。

うなぎ鬼
出典:うなぎ鬼(3)落合裕介 高田侑

マルヨシ水産の従業員が真実を語る一コマ目、ただれた顔だけを描くことで二面性を表現する。そして、その次のコマで倉見の顔のアップが描かれるが、印象的なのは倉見の目の輝きをかなり強調して描いていること。

これは掛け軸にあった「心眼」という言葉を比喩的に表現していて、読者に対して作者からのメッセージとも受け取れます。

というのも、今までのストーリーを考えると本当にマルヨシ水産は死体を解体していなかったのか?という疑問が残るから。そして、もし彼の告白にいまだ嘘が隠れているなら、これほど恐ろしいものはない。ホントこの場面はゾッとした。

結局、どう解釈するかは読み手次第なんですが、いい意味で含みを持たせているので読み方次第で読後感は違ってくると思う。そして、さっき説明した客観的な恐怖描写がこうしたところで活きてくる。

で、これはラストにも言えることで、ぼくがこの作品をサイコホラーだけでなくヒューマンドラマとも受け取れたのも、人間の汚く醜い部分以外のものを感じ取れたからだと思う。

おわりに

後ろめたいことがあると、人はたいていその帳尻を合わせたくて良い行為をしようと思ったりしますが、倉見もそんなシーンが描かれています。

電車内で座席を占領している若者たちに無言の鉄槌。乗り合わせた乗客から一目置かれ、まんざらでもない倉見。妙な正義感が出てしまったのも、心のどっかに後ろめたさがあったからだと思うんです。

うなぎ鬼
出典:うなぎ鬼(1)落合裕介 高田侑

でも、次のページでは取立てにいった母親からボロクソに罵られる倉見。何とも言えない惨めさ、哀愁さが面白い。個人的にはギャク回。

うなぎ鬼
出典:うなぎ鬼(1)落合裕介 高田侑

この自分ではどうすることもできない不条理さ、まさにリアルな人生の縮図に思えてきませんか。生きていくってのは厳しいんだよ!!!

何気ない日常を描いていてもそこにしっかりと意味を持たせているので、1話1話が無駄がない印象を受けます。3巻とはいっても読みごたえは十分。

うなぎ鬼 落合裕介 高田侑
借金に苦しんでいた倉見勝は千脇に拾われ裏稼業に励むことに。勝に課せられた任務は重さが50~60キロのコンテナをマルヨシ水産に運ぶというものだった。コンテナの中身とは一体
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