ベラスケス最高傑作「ラス・メニーナス(女官たち)」の謎に迫る!

フェリペ4世時のスペイン王国時代、宮廷画家として地位と名誉をかっさらっていた天才・ベラスケスさん。

ルーベンス(同じく宮廷画家)が外交使節としてスペインに来たときにはかなり感化されたようで、その後イタリアに赴き絵画の勉強に励んでいく。

ラス・メニーナスはそんな勉強を経て1656年に制作された最後の傑作作品。集大成ともいっていいこの絵は、実はさまざまな謎が隠されている作品でもあるんです。

かつてピカソもベラスケスの謎に挑戦したのですが、結局解明することはできませんでした。では、この絵にはどんな謎が隠されているのか?

今回はそんなお話。

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ベラスケスは一体誰を描いていたのか?

ベラスケス「ラス・メニーナス」

この絵はマドリードのアルサーカ宮殿にあったベラスケスのアトリエの一場面を描いたとされています。アルサーカ宮殿は残念ながら現存はしていないものの、当時の記録からまず間違いない。

ベラスケス「ラス・メニーナス」

左端、大きなキャンバスの前で筆とパレットを持ちコチラに視線を向けているのが、この作品の作者でもあるディエゴ・ベラスケス本人。

ベラスケス「ラス・メニーナス」

タイトルの「ラス・メニーナス(女官)」とあることから中央にいるスペイン女王マルガリータ・テレサと彼女の両隣にいる2人の女官を描いていると考えられます。

ベラスケス「ラス・メニーナス」

後ろの鏡に映っているのはフェリペ4世と王妃マリアナ。構図から考えて、愛娘テレサの前で見守っているようにも受け取れます。

つまり、フェリペ4世夫妻は絵の外からこの景色を眺めていることになります。私たちが、この絵を鑑賞しているまさにその視点と同じ目線でフェリペ4世夫婦は見ていたという解釈です。

消失点の謎

ベラスケス「ラス・メニーナス」

しかし、この解釈は実のところ矛盾を含んでいるのも事実なんです。

以前に行われた分析によって遠近法による消失点を導き出したことがあったのですが、その分析結果によれば、この絵の消失点はベラスケスの頭部にあることが判明したのです。

つまり、鏡に映っているフェリペ4世夫妻は幾何学的に考えると、私たちと同じく絵の外から見ているという解釈には矛盾が生じることになるのです。

描いていたのはフェリペ4世夫妻?

ベラスケス「ラス・メニーナス」

この矛盾を考えていくと、消失点がベラスケスの頭部にあることから、鏡に映っている鏡像=キャンバスの絵と考えるのが一番しっくりきます。

実はこの巨大キャンパスに描いているのはテレサや女官たちではなく、フェリペ4世夫妻なのではないかという解釈です。

しかし、ここにも疑問点が生じてしまうのです!

ベラスケスが生前に描いた作品の中で、フェリぺ4世と王妃マリアナの2人が一枚の絵の中に組として一緒に描かれた作品は一枚もないのです。

また、通常それぞれ一枚の絵に1人ずつ描かれるのが一般的だった当時の習慣から、フェリペ4世夫妻がモデルと考えるにはどうしても無理があるのです。

では、いったい誰を描いていたのか?未だいくつもの仮説が囁かれている未解決の謎として残っているのです。

ベラスケスの栄光

この作品からうかがえるのはベラスケスの存在感です。宮廷画家でありながら、異例の騎士の称号を手に入れたベラスケス。

下級貴族出身の彼が名実ともに輝かしい名声を手に入れた自負がこの絵に表現されているようにも思えます。

ベラスケスが着ている服を見てください。彼の胸に赤い十字架を確認することができます。これは騎士となった者だけが身に付けることを許された紋章。

ベラスケス「ラス・メニーナス」

92年におこなわれたX線調査によって、この十字架は後から付け足されたことが明らかになっています。

完成当時まだ騎士の称号を得ていなかったベラスケスが、のちに自らが付け加えたのか、それともベラスケスの死後、国王が加筆を命じたのか、これまたいくつもの仮説が飛び交っています。

ただ、興味深いのは背景に描かれている二つの絵の存在です。これらの絵の作品名は分かっており、

ベラスケス「ラス・メニーナス」

左側の絵はルーベンスの「パラスとアラクネ」、右側の絵はヤーコプ・ヨルダーンスの「アポロンとパン」という作品。

ここで注目したいのが、どちらも自らの才能を誇示する人間に対する神の嫉妬という意味が込められている作品であるということです。

この絵からうかがえるベラスケスの存在感を鑑みても、自身の栄光を表現しているのかもしれません。個人的にはそんな印象を強く受け取りました。