マンガの神様が伝授する描き方のコツとは!?|マンガの描き方 手塚治虫

手塚治虫
via Taipei_20110731_12/Lordcolus

マンガをもっと上手に描きたい、アイデアの出し方のコツを知りたいなどなど、マンガの上達のために本書を読むのもおすすめですが、ぼくは、それよりも、手塚先生がどのようにしてアイデアを出し、描いてきたのを知るための一冊、つまりは単純に読みものとしておすすめします。

そして、手塚治虫がやろうとしていた試みが、これまた凄かった。詳しくはあとでじっくり書いていきますが、目や眉毛、口、髪の毛・・・漫画を描く上でこうしたそれぞれのパーツを組み合わせることで、才能など関係なく、誰でも漫画を描けるようにしようとしていたのです。

まさに、壮大で奇抜なアイデアで、それだけでも非常に読み応えがある作品だと思います。最後のページで解説していた漫画家の夏目房之介先生の指摘が、まさにそれでした。

要するに手塚はマンガの絵を、無意識に漢字とおなじように考えたのだと思う。彼の記号に分解できるマンガの手法は、漢字を解(かい)する日本人にとって受け入れやすい手法だったはずだ。だからこそ多くの後継者がその組み合わせを学び、多少絵は下手でも話を展開することができた。そして話や発想が面白ければ、読者は喜んで読んだのだ。
出典:マンガの描き方 手塚治虫 p249

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マンガの原動力

どんなマンガを描きたいかで悩んでいるなら、自分自身と向き合うことでその答えが見えてくるかもしれない。手塚治虫はマンガを描くとき、誰しもが、ある原動力によって描くのだという。それが、

欲求不満

である。

少年漫画では世界を救うヒーローが描かれ、少女マンガでは、目がキラキラした、美少女が描かれる。これらは、すべて書き手の欲求が具現化したものだという。

そして、社会、仕事、政治などに不満を全くもっていない人などいないわけで、こうした不満がマンガという表現媒体を使って描かれるのである。

漫画の中には、なにかしら、描いた本人の煩悩(ぼんのう)というか、モヤモヤの発散がある。それは、何度も言うように、気ままに思うがままに描くからである。そして、その欲求は、たいてい不満を含んでいる。
出典:マンガの描き方 手塚治虫 p19

手塚治虫の幼少期のトラウマ

漫画には何かしらの欲求があるという手塚先生ですが、では、先生自身の作品には、どのような欲求が隠されているのでしょうか。

あるとき町を歩いていると、米兵に道を聞かれた。相手は六人で、かなり酔っぱらってるので、なにを言っているのかわからない。スラングもそうとう混じっているらしく、ぼくの英語力では、返辞もできそうになかった。やっとのことで「自分は英語を話せない」と言ったつもりだが、このとき相手からいきなりなぐられた。年のころは、ぼくとほとんど変わらない米兵である。自分をなぐりつけて、大声で笑いながら去っていった米兵のあとにとり残されて、このときほど腹の立ったことはなかった。
出典:マンガの描き方 手塚治虫 p164-165

手塚青年にとって、このころの記憶は今でも決して忘れることができないという。そして、これが手塚治虫が漫画を描く原動力となる欲求になったというのです。

ただ、なぐられてもがまんしなければならないという屈辱は、今でも頭から消えないで残っている。このときの体験は、今までぼくが三十年描いてきた漫画にすべて出てくるはずである。それは、人間同士のトラブル、偏見、コンプレックス、誤解、それに暴力による解決への怒りとか悲しみとして表れてしまう。
出典:マンガの描き方 手塚治虫 p165

手塚治虫が考えた漫画技法

マンガの描き方にはいろいろな方法があると思いますが、本書で紹介されていたキャラクターの喜怒哀楽の表現の作り方が、とても印象的でした。

冒頭での夏目房之介先生の解説を紹介しましたが、手塚流表情の描き分け方法が漢字の成り立ちと非常に似通っているという指摘は、「確かに」と共感してしまいます。

マンガの描き方 手塚治虫
出典:マンガの描き方 手塚治虫 p76

口・鼻・目・まゆげといったように、それぞれのパーツごとに分けて、番号が付けられています。

マンガの描き方 手塚治虫
出典:マンガの描き方 手塚治虫 p77

そして、これらのパーツの組み合わせによって、さまざまな表情を書き分けることができると説明しています。たとえば3-B-ロ-ろなら笑っている表情といったように、組み合わせることで表情を書き分けていくのが手塚流アドバイス。

これなら、絵が苦手な人でも、キャラクターの表情をバラエティ豊かに描き分けることができまずよね。

これって、ぼくたちが習ってきた漢字の覚え方と非常に酷似しているように思いませんか。漢字は「へん」と「つくり」の組み合わせによって成り立っているのと同じように、顔も分解したそれぞれのパーツの組み合わせによって、さまざまな表現を描くことができるわけです。

ほかにも紹介したいところがたくさんあるのですが、あとは是非実際に読んで楽しんでください。

読んでいただきあるがとうございました。

マンガの描き方―似顔絵から長編まで 手塚治虫
30年以上に亙って、子供たちに夢を与えつづけ、亡くなった今も、不動の人気を保つ天才マンガ家・手塚治虫。マンガ文化に革命を起こし、世界中のクリエイターに影響を与えた“マンガの神様”が、自ら創作現場を語った。手塚ファンのみならずマンガ好き垂涎の一冊
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