ロールパンナ誕生話で見せたジャムおじさんの不審な発言

やなせたかし先生の代表作『アンパンマン』。子供はもちろん、大人にも人気な国民的アニメですが、アンパンマンに登場してくるキャラクターの多くは、食べ物をモチーフにした食べ物縛りが多い。

あんぱんまんにカレーまんにてんどんまんに・・・といますが、その中でも「ロールパンナ」のキャラ設定が、ものすごく深いと、一部の大きな子供たちの間で話題になったことがありました。

『アンパンマン』が誕生した背景には、やなせ先生が若き日の戦争体験が影響していることは有名な話ですが、ここではロールパンナの誕生話から、ロールパンナの魅力と彼(今はまだ言及しない)の発言を追っていきます。

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ロールパンナ誕生秘話

キャラクターの中でも異質な存在のロールパンナちゃんは、その誕生においてもいろいろとややっこしい。

彼女は「わるいこころ」と「やさしいこころ」の二つ(二面性)の性格を宿しているキャラクターですが、この2つの心を持った理由は彼女の誕生に関係しています。

メロンパンナちゃんが10年に1度だけ咲くといわれる「まごころそう」見つけたことをきっかけに、ロールパンナを作ろうと提案するジャムおじさん。

ロールパンナは、ジャムおじざんの力づよい発言から生まれた、偶然の産物でした。

すると ジャムおじさんは ちからづよく いいました。
「この はなにはね、ひとに やさしく、 ひとに つくす ちからが あるんだよ。そうだ、この はなを つかって、あたらしい なかまを つくろう! メロンパンナちゃんの おねえちゃんだ」
出典:ロールパンナのひみつ やなせたかし ブレーベル館

アンパンマンは子供向け絵本なので、すべてひらがなで書かれています。大人には読みにくいのですが、ここで気になるのが、ジャムおじさんの意味深な発言です。

ジャムおじさんの不審な発言

彼(ここからはジャムおじさんのことを「彼」と呼びます)にとっては、恐らく何気ない発言だったのでしょう。しかし、気が緩んだときにこそ、本音が出やすいものなのです。

まず気になるのがこの発言です。

この はなを つかって、あたらしい なかま をつくろう!
出典:ロールパンナのひみつ やなせたかし ブレーベル館

「かぞく」ではなく「なかま」と説明していることに注目したい。彼にとっては、メロンパンナやアンパンマンたちとの関係はあくまで「なかま」であり、「かぞく」ではないと暴露しているセリフなんです。

ここに彼とアンパンマンたちとの間に非常に大きな壁を感じてしまいます。いつも優しいジャムおじさんに限ってそんなことはありえないと思っているでしょう。しかし、この後の発言を読むことで疑惑が確信に変わるはずです。

メロンパンナちゃんの おねえちゃん
出典:ロールパンナのひみつ やなせたかし ブレーベル館

彼にとっては「なかま」ですが、彼から作り出されるしゃべるパンたちの関係は「かぞく」なんだよ、と発言するのです。

つい数秒前までは「なかま」とか言っていたくせに、メロンパンナに説明するやいなや「おねえちゃん」、つまり「かぞく」の関係を彼は無意識に持ち出してきているのです。

おそらくは、しゃべるパンたちと一緒にカテゴライズされたくないという、本音が思わず出てしまったのでしょうが、真相は本人にしか分かりません。

ジャムおじさん
出典:ロールパンナのひみつ やなせたかし ブレーベル出版

どうですか彼の表情、どこか気まずさが見てとれませんか・・・そうでもない?

年下のおねえちゃん

メロンパンナのキャラから考えれば、姉というよりも妹タイプなのは分かりますが、先にメロンパンナが誕生しているわけですから、年齢から考えればロールパンナは当然「」扱いになるはずです。

しかし、実際はロールパンナは年下の姉というキャラ設定になっています。これをどう理解すればいいのか。

このおねえちゃん問題ですが、私たちが生きている世界に照らし合わせて考えていくと、理解しやすくなるかもしれません。

たとえば、アメリカでは「ブラザー」「シスター」といった場合、それが兄なのか弟なのかは言葉だけでは分かりませんよね。これは、アメリカに限らず欧米の言語に多い特徴の一つなんですが、兄弟や姉妹の区別というのはあまり重要視しない国民性の表れとも指摘できます。

一方、日本では大昔にあった家制度なんかを見ても、長男は優遇されていたわけです。中国の歴史を読んでもそうですよね。

ということはですよ、ジャムおじさんの体には、欧米的な文化が染みついている可能性が高いのです。ただし!アンパンマンたちが住む世界では、全員が妖精さんであることには注意しておきたい。

ともあれ、ジャムおじさんの何気ない一言によって、アンパンマンの世界の不思議がまた一つ明らかになったわけです(笑)

メロンパンナ汁

ジャムおじさんの余計な発言によって遠回りしてしまいましたが、ロールパンナの具には、「まごころそうの花粉」だけが入っているわけはありません。

アンパンマンの仲間がまた一人増えることを危惧したばいきんまんが、ばいきん仙人に頼んで「ばいきんそう」をマッドサイエンスによって生み出します。

「ばいきんそうには わるい こころを つくる ちからが ある。 つまり、 アンパンマンの なかまを つくった つもりが、 ばいきんまんの なかまが できてしまうというわけじゃ!」
出典:ロールパンナのひみつ やなせたかし ブルーベル館

ばいきんまんは小型のばいきんメカを遠隔操作して、ロールパンナのパン生地の中にエキスを入れることに成功します。しかし、ばいきんそうのエキスが入っているせいか、思ったようにパンが膨らまない。

不思議がるジャムおじさんにメロンパンナちゃんがこんな提案をしてきます。

「ねえ、 ジャムおじさん、あたしの メロンジュースをいれてみたら、だいじょうぶかもしれない」メロンパンナちゃんは そういうと、やさしい おねえちゃんに あえる ことを ねがって、メロンジュースを パンきじに ふりかけました。
出典:ロールパンナのひみつ やなせたかし ブレーベル館

メロンパンナ汁が配合されたロールパンナ生地をいよいよ竈(かまど)に入れて焼きはじめたとたん、竈(かまど)に雷が落ちて爆発、その中からロールパンナが誕生します。

面倒くさい感情になってしまったのも、今までの工程を考えれば納得です。「まごころそう」に「ばいきんそう」「メロンパンナ汁」、最後は雷でかまど爆破なわけですからね。

いろいろな成分が配合されたロールパンナ。空腹のときにロールパンナが助けにきてくれても、きっと、いや絶対食べることはないだろう。

せいぎとあく

ロールパンナが「あくのこころ」なのか「やさしいこころ」なのかの区別は、彼女の胸にある2つのハートによって見分けることができます。

あおい ハートは ばいきんそうの ちから、 あかい ハートは まごころそうの ちからをあらわしているのです。
出典:ロールパンナのひみつ やなせたかし ブレーベル館

左にある赤いハートがつよく光っているときは、やさしいロールパンナ。そして、右の青いハートがつよく光っているときは、わるいロールパンナ。

当初はばいきんまんにそそのかれて「わるいこころ」のほうが優勢でしたが、メロンパンナの必死の願いによって、次第にやさしいロールパンナになっていく。

彼女の2つの心に、なぜか魅力を感じてしまいます。

※ロールパンナの初めての登場シーンを扱った本は他にもありますが、今回はブレーベル館から出版されている『ロールパンナのひみつ』のみを扱いました。

ロールパンナのひみつ やなせたかし
赤いハートと青いハート、ふたつの心をもつロールパンナ。ロールパンナがなぜふたつの心を持つのかがわかる物語。
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