真実は常に複雑!果たして名探偵コナンは「ミステリ作品」と呼べるのか?

単行本で数えると、既に80巻以上も出版されているバケモノ級の人気漫画・名探偵コナン。少年誌の中で、間違いなく推理作品の代表作といえますが、そんな人気作品にある疑惑が浮上している。

それは、

名探偵コナンはミステリ作品なのか?

という疑問、いや疑惑です。果たしてこの真相は真実なのか、詳しく迫っていこうと思います。真実はいつもひとつ(とはいかないものです)。

ミステリ作品におけるルール

作品を探していくとき、自分の好きなジャンルから調べることはよくありますが、ミステリ作品とはこうあるべきだ!という主張をした人がいました。

彼の名前はS・S・ヴァン・ダイン

1928年9月号の『American Magazine(アメリカン・マガジン)』に寄稿した「ヴァン・ダインの二十則」において、ミステリ作品とはこうあるべきだという原則を20ヶ条にまとめて発表したのです。

たとえば第1則を見てみると、

1.事件の謎を解く手がかりは作中にすべて記述されていなければならない。
出典:ゲームシナリオのためのミステリ事典 ミステリ事典編集委員会 p225

といったように、ヴァン・ダインによって提唱された原則が並べられているのがヴァン・ダインの二十則と言われているものです。

この原則は、推理小説のルールについて書かれたものですが、漫画にも当てはまるだろうということで、次からいよいよ名探偵コナンの検証に入っていきます。

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このルールを名探偵コナンで検証

まずは、ヴァン・ダインの二十則の中にあるいくつかのルールと照らし合わせながら、検証していきます。

今回参考にしたのは、ミステリ事典編集委員会から出版されている『ゲームシナリオのためのミステリ事典』。

ここで紹介されている二十原則は、「概要」という形で1928年当時のオリジナルのものではないですが、資料として十分参考になります。

それでは検証スタートです!

第3則
ミステリの知的な推理の邪魔になるだけなので恋愛要素は不必要である。
出典:ゲームシナリオのためのミステリ事典 ミステリ事典編集委員会 p225

ヴァン・ダインによればミステリ作品において恋愛は御法度

コナン(新一)と蘭の関係は完全にアウトと思いきや、新一はまだ蘭に告白していないので、アウトとも言い切れない(好きなもの同士なのは、誰が見ても明らかですけどね)。

第9則
探偵役は一人であることが望ましい。複数の探偵の存在は推理を分散させてしまい読者に対して公平ではないからである。
出典:ゲームシナリオのためのミステリ事典 ミステリ事典編集委員会 p225

この原則はさすがにアウトになるのでしょうか?

毛利小五郎の職業は探偵ですが、コナン君も探偵を名乗っています。しかし、推理を解き明かすのはあくまでコナン君であって、小五郎ではありません。

しかも、小五郎は毎回睡眠針によって眠らされているわけですから、推理を分散させる人物ではない。

なら、ライバルの服部平次はどうなるのか?第9則でのポイントは、読者を混乱させる可能性があるため、あまりおすすめしないという考え方です。

コナンと平次の登場回では、互いに協力しあって謎を解いていくシーンが多いわけですから、これも完全なアウトとは言い切れません。グレーよりのシロといったところでしょうか(笑)

第13則
秘密結社やマフィアなどに属する人物は組織の保護を受けられるため犯人役にしてはならない。ミステリにおいてはアンフェアになるからである。
出典:ゲームシナリオのためのミステリ事典 ミステリ事典編集委員会 p225

名探偵コナンの最大の謎といえば「黒ずくめの組織」の存在ですが、これこそ、ヴァン・ダインのルールを破っているのではないかと思いきや、果たしてそうなのでしょうか?

13則を見ていくと、犯人役についてのルールのようですが、ここでのポイントは、犯人にしてはいけない理由です。「組織の保護を受けられるため」秘密結社などに属する人物は犯人にしてはならないという理屈です。

名探偵コナンでは、黒づくめの組織には「非情な掟」が存在しています。たとえば「仲間であっても用済みと判断されれば始末される」「ミスした人物も容赦なく始末される」「裏切りものも同様に始末される」。

黒ずくめの組織におけるメンバー同士の仲間意識はかなり薄いものだと考えられるので、「組織の保護を受けられる」かどうかは極めて疑問です。

というわけで、この原則もやはり完全なアウトとは言い切れません。

第16則
執拗な情景描写や文学的長文は避けなければならない。
出典:ゲームシナリオのためのミステリ事典 ミステリ事典編集委員会 p225

いよいよ最後のルールです。

執拗な情景描写や文学的長文は名探偵コナンにはありませんが、なら、くどすぎるキザなセリフ歯がゆすぎるセリフは許されるのかという問題があるはずです。

というわけで完全にアウト。今までグレーながらもなんとかくぐり抜けてきた、ヴァン・ダインの原則ですが、最後の最後でアウトになってしまいました(笑)

あくまで基本原則

今まで検証を重ねてきましたが、解釈しだいでいかようにもなります。

そもそも、この二十則が発表されたのが1928年ですから、昔のルールを現代の作品に当てはめても不具合がでるのは当然のこと。

作品は生きているんですからね。

また、ヴァン・ダインの二十則以外にも、ミステリ小説のルールを明文化した有名なものとして、ロナルド・ドックスが提唱した『ノックスの十戒』なんてのもあります。

しかし、このルールの中には「中国人を主要な人物として登場させてはならない」という文言があります。

この原則が発表された当時、中国は清国が倒れて間もないこともあって、西欧人は中国人を怪しく、超自然的な力を持つ怪人として描くことが多かったため、このようなルールが加えられたといいます(シャーロックホームズに登場する中国人をイメージすると分かりやすい)。

つまり、これらはあくまで「基本原則」であり、さらには当時の政治状況に強く影響していることが分かります。

ミステリ作品を謳っている作品であっても、必ず守らなければならないルールというわけではないというのが現在の考え方のようです。

大切なのは原則よりも、読者が面白いかどうかなわけで、名探偵コナンは間違いなくミステリ作品として面白い!ということです。

黒ずくめの組織の話をまとめたこの作品は特に好きですね。

名探偵コナンvs.黒ずくめの男達
青山剛昌

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