ここ数年読んできたマンガの中でも、最強に面白い進撃の巨人。
原作以外にもスピンオフ作品があると言うことでラノベを読んでみたんですが、これがスピンオフどころか、原作の世界観を補足する「外伝」的な位置づに驚愕。
ヤヴァイ!これ、間違いなく失敗する!!
と直感的に思ったけですが、案の定、原作の設定と食い違う食い違う!というわけで、こちらの作品を反面教師にふり返っていく野暮な企画。
時代設定
ラノベで描かれる「進撃の巨人Before the fall 」(マンガ版もアリ)は、エレンのいる時代からだいたい100年前の設定になります。

出典:進撃の巨人(1)諫山創
懐かしい!
単行本1巻の一コマ。この数字は年号とでもいいますか、時系列を明確にするため描かれていまたしたが、ラノベでも年号が明記されていました。
それによると、
七四三年。
突如として歴史の表舞台に現れた巨人により、人類は絶滅の危機に直面していた。
出典:進撃の巨人 Before the fall 涼風涼
この頃の人類は巨人に対して対抗策はなに一つなく、弱点はもちろん有効な武器も見つかっていませんでした。
この設定からして、なんかイヤ~な予感がしませんか。
その予感通り、原作者以外の作家が巨人の弱点の発見までの過程や、調査兵団の立体起動装置が誕生するまでの過程を描いているんですから、そりゃ失敗するのも当然。
こんな重要な部分は、どう考えても諫山先生が描くべきでしょう!講談社さん。なぜほかの作家に任せたのかが不明。これは、もうアレです、酷過ぎます。
この巨人は奇行種ですか
巨人は夜になると活動が鈍くなるというのは原作、アニメを観た人であれば常識。

出典:進撃の巨人(18)諫山創
また、原作から考えると、夜であっても「月明かりの夜」に巨人が活動していたケースもあり、このことはハンジさんも解説済みです。
レイス家の秘密や憲兵団との交戦がはじまった10巻あたりから、ハンジ予測→ほぼ的中というパターンで伏線が回収されてきましたから、この予測もほぼ事実として解釈してもいいのかなと思います。
でだ、問題はここから。
ラノベで描かれている巨人の描写が非常にまずい。
夜明けが迫っているのか白み始めてきた。直に地平から太陽が姿を現すだろう。それにともない行動は容易になるはずだが、巨人に発見される可能性も高くなるに違いない。
出典:進撃の巨人 Before the fall 2 涼風涼
気になるのが「直に地平から太陽が姿を現すだろう」という箇所。灯火(ともしび)を焚いているという描写があることから、辺りは真っ暗なことが分かります。
まだ太陽が出ていない状況で、巨人が普通に活動している描写。月があるような描写もないので、例の「月夜の巨人」とは考えにくい。
新種の奇行種とも考えられますが、
急所を叩かなければ何度でも蘇る脅威の怪物だが、実のところ行動は制限できる。それが足だ。
出典:進撃の巨人 Before the fall 2 涼風涼
行動が予測可能なのはふつうの巨人だけ。奇抜な動きをする奇行種においては太刀打ちできないのは、原作で幾度となく描かれていたところ。しかも、このときはまだ立体機動装置は開発されていない。
ぼくの解釈が湾曲(わんきょく)しているのかもしれませんが、表現があいまいなのは確かなわけで、ダメダメ。
一番の重要ポイントがあやふや
わざわざほかの作家さんを起用して生み出した作品なのに、一番の見せ場があやふやという残念な仕上がりに。
巨人の弱点は首の後ろ、厳密に言えれば「延髄」になるわけですが、巨人の弱点へたどり着くまでの展開が適当すぎる。アイディアが浮かばなかったんだろうと読んでて思ってしまうほどです。
渾身の力で巨人の首筋に刃を食いこませる。だがその一撃に脆(もろ)くなった刀身は耐えられず、甲高い音を奏でてながら真っ二つに折れてしまった。
出典:進撃の巨人 Before the fall 1 涼風涼
巨人の弱点の発見は幾度かの戦いによって首筋にあることを発見していく流れなんですが、この「首筋」がある時から急に「延髄」へとすり替わっているんです。
弱点となる延髄(えんずい)へと迫るルートを導き出していた。
出典:進撃の巨人 Before the fall 3 涼風涼
このすり替えは酷い。首筋=延髄なの?違うでしょと。
原作者が書いていないからこういうところでいい加減になっちゃう。ダメダメ。
調査結果
久しぶりに単行本全巻揃えるほどハマった作品なので、こういった作品はちょっと違うでしょと言いたくなる。
やっぱり原作の諫山創ではなく涼風涼を器用しているのがそもそもダメ。
原作が完結してない上に、各巻に伏線を幾重にも張り巡らされた作品ですから、進撃の巨人に関して言えば、原作者以外のほかの人が扱っている時点ですでに詰んでます。
連載途中で、他作家が執筆、さらにスピンオフと外伝を合わせたような中途半端な立ち位置。
ラノベ単体としては面白いんですが、「巨人の進撃」というビッグタイトルを借りている時点で、気合を入れて書かないとツッコミのオンパレードになるのは当然。
ただ、「あとがき」を読むと、出版社が企画したみたいなんですよね。なので、涼風氏がどうというよりも、出版社が浅はかすぎるよ。
おすすめはしませんね。
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