
わたなべめぐみさんの児童小説『よわむしおばけ』。90年代NHKで放送されていた『おばけのホーリー』の原作としても有名ですが、今でも根強い人気を誇っている作品(新刊で読めます)。
リアルタイムで見ていたチビッ子がちょうど子育てにさしかかる年代になったこともあってか、わが子に読ませたいと思うお父さんお母さんが多いというのもあると思います。
地域によっては再放送もされてましたから、20代前半でも「懐かしい」とリアクションする人もいるかも。そんな懐かしき名作を今回はご紹介!
コールタール誕生
よわむしおばけはコールタールのできそこないのおばけ。名前もそのまま「コールタール」。「ホーリー」はアニメオリジナルのチョコレートのおばけでしたが、夜が嫌いで、人をおどろかすことが苦手で泣き虫おばけという設定は同じ。
ホーリーはマジョリーヌが焦がしたチョコレートから生まれたおばけでしたが、原作のコールタールはどうやって誕生したのでしょうか。
よわむしおばけシリーズは何冊か出版されていますが、『よわむしおばけ』や『よわむしおばけとサンタクロース』などで誕生秘話が読めます。
うらめし山に住んでいる魔法使いは、おばけをつくることが仕事。まほうの杖でさわったものならなんでもおばけにしてしまいます。あるとき、石をおばけにしようと杖でさわろうとしたとき、猛スピードでダンプカーが走ってきます。
らんぼうなダンプカーによって石がアスファルトの道路にめり込んでしまいます。せっかくおばけにするのにちょうどいい石を見つけたのにがっかりな魔法使い。
それでもあきらめきれず杖をつかってなんとか石を掘りだそうとしたものの、肝心の石はもう粉々。道路にはぽっかりと大きな穴ができてしまいます。
危ないと思った魔法使いは役所に電話(けっこう律儀w)。未練ありありの魔法使いは穴を見ながら杖でぽんぽんとたたき、ようやくその場を去ります。

出典:よわむしおばけとサンタクロース わたなべめぐみ
次の日、道路工事のおじさんたちが穴を埋めにやってきます。コールタールを流し込み穴を埋めて工事は完了。ところが、しばらくすると冷えたコールタールが、
うう、ううん
という声とともに穴から手足を伸ばして這い出してくる。おばけのコールタールの誕生です。ただ、コールタールは魔法使いから直接杖で触られてないので、普通のおばけよりもダメダメなおばけになってしまったのです。
衝撃すぎる正体
NHK「おばけのホーリー」に登場するキャラクターにはホーリーのほかに、キャンディ、ピートン、トレッパー、ニャンギラスなんて猫もいました。
これらは原作には出てこない登場人物たちなのですが、魔法使いのマジョリーヌ様は似たような名前で原作にも登場しているんです。
マジョリーヌといえば、紫色のボディコンを着て、さらにはアイシャドーまで紫にしていた女性。モロに時代を感じるキャラでした。
なら原作ではどうか?
『よわむしおばけとまほうつかい』ではマジョンナという自称魔法使いが登場します。「自称」とついていることからも分かるように、エセ魔法使い。リアルに言うと詐欺野郎ですw
どんな悩みでも魔法でそくざに解決してあげるというのがウリやしく、いやもう、これは立派な心霊商法じゃないですか!しかも、その容姿がすさまじい!!

出典:よわむしおばけとまほうつかい わたなべめぐみ
なんという腐女子感!魔法少女アニメにハマり過ぎたおばさまです。しかもものすごくしゃくれてますw原作にはこんなキャラクターもいたんですね。
きっかけは短大時代の課題
よわむしおばけの創作秘話には面白いエピソードがあるんです。この作品が作られたは作者のわたなべめぐみさんが短大生だったころ。
保育士になるために勉強していためぐみさんは、児童文学講座で創作童話を作るという課題が出されたのですが、実は、この課題がのちの「よわむしおばけ」シリーズへとつながる第一作目たっだんです。
『よわむしおばけ』に収録されている「コールタールのきもだめし」がこのとき提出した創作童話なんだとか。
この講座を担当していた寺村輝夫(てらむらてるお)さんがめぐみさんの作品に魅力を感じ、童話を書いてみないかと勧めたことで、よわむしおばけシリーズが誕生していきます。
短大を卒業しためぐみさんは保育士として働きながら執筆活動を続け、保育士を19年勤めあげたのち、大学の講師として現在は保育士を目指す学生たちを教えているといいます。
思い出
原作とアニメでは設定はかなり違うのですが、やっぱりどこか懐かしさがあります。小さい頃によわむしおばけシリーズを図書館で読んだ方も多いはず。
妖怪ウォッチしかり、いつの時代もチビッ子やかわいいおばけが大好き!ちなみに、ぼくが好きだったお話は「よわむしおばけとカレーライス」でしたね。