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君の名は。 Another Side: Earthboundから考える三葉の父俊樹の本当の姿

登場人物の中でもひときわ謎が多い男・俊樹(としき)。三葉の父親にして町長、作中において重要なポジションにもかかわらず、その詳細はよく分からない。

しかも、ティアマト彗星が糸守町を襲った二度目のあの日、三葉の説得を信じて住民を避難させたのは、まぎれもない俊樹の力によるものでした。

あれほど三葉と罵っていたのに、最後の最後になぜ信じることができたのか実際よく分からないんですよね。

そこで、本編のアナザーストーリーを描いた特別編「君の名は。 Another Side :Earthbound」の登場。この中で、俊樹と二葉の出会いや糸守町の町長になるまでの経緯が描かれています。

本当の俊樹とはどんな人物だったのか、ここでは本編では描かれなかった真実の俊樹像というものに迫っていこうと思います。

二葉との出会い

宮水俊樹、旧姓、澤口(さわぐち)俊樹。三葉の母・二葉と結婚するまでは、民族学者として各地を渡り歩き、その土地の伝承を聞き、自身の研究を深めていた。

糸守町を訪れたのも、そんな研究の一環として宮水神社の宮司にこの土地の歴史について話を聞くためでした。

そこで出会ったのが宮水二葉(三葉の母親)。

研究のために何度か宮水宅を訪れるうちに2人は愛するようになり結婚する。そして、俊樹は二葉に不思議な力があることに気付きはじめていきます。

たとえば、出会って間もないときに俊樹が帰ろうとしたとき、二葉が

「どうしてだかわからないのですが、初めてお会いしたとき、私はあなたと結婚するような気がしたのです。どうしてでしょう。ふしぎですね」
出典:君の名は。 Another Side:Earthbound 加納新太

と予言めいたことを言う。

このときはただただ驚くばかりだった俊樹ですが、結婚してしばらくすると宮水家の血筋を呪うようになっていきます。

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糸守町の悪しき習慣

二葉との結婚を現実にするためには、いくつもの生涯があった。というのも、俊樹には家同士で決めた婚約者がおり、当然家族から猛反対を受ける。

また、二葉の方も、一葉が進めていた婿選びを台無しにされ、さらには知り合ったばかりの見ず知らずの男を婿にすることに強い抵抗を示した。

しかし、最終的に2人は結婚することになる。

全てを失う代わりに。職も家族も失った俊樹は宮水家の婿養子として入り、大変ではあるが穏やかな日々が過ぎていく。

違和感を強く感じはじめたのは、婿として入り糸守町の生活を目の当たりにしたころから。まだ20代の二葉に対して、村人たちにひどく尊敬されていることに気づく。

かつて宮水家は豪族としてこの辺り一帯に強い影響力を持っていた名残りもあるのだろうが、それにもまして二葉の神がかった不思議な力も関係していた。

宮水家に代々受け継がれてきた不思議な力、この力に村人たちはあやかっていたのである。

こと二葉の力は歴代の宮水家の中でも強い力を持っていたことから、二葉の扱いは一葉のそれよりも別格であった。

俊樹はこの異様な状況に違和感を高ぶらせていく・・・そこへ、あの事件が起こったのである。

二葉の死

それは四葉が生まれてからしばらくしてのこと。二葉は病に侵される。前触れはあった。俊樹も妻の異変に気づき、再三にわたって入院検査を強く強く望んだ。

しかし二葉は頑なに拒んだのである。

さらに、症状が悪化するにしたがい「子供たちのことをお願いします」と不吉なことを言うようになっていく。頑として検査はおろか入院すらも拒みつづけた二葉。

愛する娘たちに対して、

ごめんね

と謝るも、その言葉と行動に矛盾を抱く俊樹には彼女の真意を最後まで掴むことができなかった。

これがお別れではないから

二葉は最後にこう言い残し息を引き取った。

呪縛

二葉の理解できない死。早くから病院で治療を受けていれば助かったのではないか、そんな疑問が俊樹を頭を支配し続けた。

それでも月日は流れ、糸守町もいつもの平穏な日常に戻りつつあった。しかし、俊樹だけは未だ立ち直ることができず心は荒んでいった。

そんな父親の豹変っぷりに娘たちも怖がるようになっていく。

時が過ぎても心の傷は癒えず、むしろ強まっていく。そして、俊樹は二葉の死を宮水家の血筋に求めたのである。

宮水神社を中心とするこの町の呪縛、宮水家を特別な存在とするこの古き習慣が妻を殺したのではないかと思うようになっていく。

二葉が最後におかしくなったのは、人々がこの網目を通じて異様な視線を彼女に向けてきたからだ。宮水では、物や人との関係を神(ムスビ)と呼ぶ。ならば、自分は神に裏切られたようなものだ。
出典:君の名は。 Another Side:Earthbound 加納新太

この日を境に俊樹は宮水神社を中心とする悪しき習慣を壊すことを誓う。政治の力によって近代的な構造にこの町を作り変えていくこと心に決めたのである。

その後、神社を受け継ぐことを拒み、家を出た俊樹。三葉と四葉も一緒に家を出るよう説得するも、このときすでに父親に対して恐怖しかいだいてなかった。

あの日の真実

本編で描かれた三葉と俊樹との対立。俊樹視点での描写がなかったこともあり、家族を捨てたバカ親父という印象が目立つが実際にはそうではなかったのだ。

糸守町に根強く残る悪しき習慣は、三葉たちを苦しめることになるという思いもあった。二葉の姿を見てきた彼にとっては憎き悪習以外のなにものでもないのだ。

ティアマト彗星が糸守町に落下する当日、泥だらけの三葉が二度目の懇願をしてきたあの日、俊樹は妻のことを思い出していた。

あのとき三葉を見た俊樹はすでに分かっていたのだ。理屈ではなく直感で。だから震えたのだ。宮水家の血筋を呪い、糸守町の習慣を憎んだ俊樹だが、最後の最後で二葉のあの言葉が頭をよぎった。

「これがお別れではないから」

すべては二葉が予期していたことだったのだ。「私が町長になって三葉の懇願を聞き入れ糸守町を救うことは必然」、彼の中でようやく妻の行動が理解できた気がした。

二度目に三葉に会ったとき、その面影に最愛の妻・二葉を重ねていた。

あとがき

このアナザーストーリーを読むと、また違った「君の名は。」の世界観を楽しめることができると思います。

今回俊樹エピソードを書いてきたわけですが、最後の最後でアレですが、映画・小説(本編・特別編)を参考に思いっきり個人的解釈(特に俊樹の心情描写)がまじっているので、あらすじとは言い切れません(スイマセン)。

あくまでぼく解釈の俊樹エピになりますので、そこはお間違えないように。ただ、おおまかな流れは盛り込んだつもりなので楽しんでいただければ幸いです。

おわり

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