テグネウ戦に決着がつく6巻は、ストーリー上からも一番の見せ場といっていい。
愛に執着しすぎたテグネウですが、彼の存在意義と深く関わっていたことを考えれば、彼の奇行や戦術における矛盾も納得ですし、何より非常に魅力的な敵でした。
恐らく6巻を読んでいくと、特質凶具が登場しすぎていたのが残念に思った人も多いんじゃないでしょうか(これをやっちゃうと何でもアリになりますからね)。
今までのストーリー上、特質凶具を使う戦術をネグネウは使っていましたし、そのために何百年という膨大な月日をかけて準備してきたわけですから、そこは十分すぎるほど分かりますよ。
分かるんですが、道連れの能力やら、核すらも修復可能な治癒能力、凶魔を操れる能力・・・この怒涛の急展開に頭がついていきません。
それに、アドレットも
突然の急展開に、頭がついていかない。
出典:六花の勇者 6巻 山形石雄
って作中でしっかり言ってましたからね。ストーリー展開がちょっと雑だったかなと思ってしまいますが、「愛」を巡るテグネウとアドレットのやり取りは読み応えがありすぎました。
というわけで、そこらへんを中心に書いていこうと思います。
歪んだ愛
6巻で明らかになったのが、ネグネウは魔神のためでなく、自身の快楽のためだけに策略を練っていたことでした。
たった一体の例外が、テグネウだった。彼だけが、魔神への忠誠心を一切持っていなかった。
出典:六花の勇者 6巻 山形石雄
いつも空虚さを感じ、なによりも孤独だったテグネウさん。魔神への忠誠心がない唯一の凶魔であるテグネウが、「愛」にここまでに執着したのも、個人的には自然な流れですんなり理解できた。
凶魔は魔神に対して忠誠心という愛を捧げ、人間は家族に無償の愛を捧げる。テグネグの策略がことごとく瓦解していったのも愛の力にほかならない
奇跡とも呼べる道連れの能力の解除は、フレミーの母親でもある特質凶具の六番の母性という愛によって打ち砕かれます。
テグネウは知っていたはずです。「愛は最高の力」であることをと。となれば、愛を利用する戦術自体が諸刃の刃になりかねないこと、奇跡と認めざるおえないようなイレギュラーが起こる可能性があることは十分考えられる。
「道連れの能力」の解除で見せた奇跡は、テグネウであっても予測することは不可能でした。奇跡を予測できるのなら、それはもはや奇跡でとは呼べない。
誰しもが予測できないからこそ、その現象を「奇跡」と呼ぶのであって、テグネウの戦略がどれほど堅牢だったとしても、そこには完璧さは求められない。
ならどうしてこんな危険な策をテグネウは実行したのかといえば、愛を踏みにじることこそが、彼の存在理由だったからです。
だが今は、自分の全てを肯定できる。自分は愛を得られない。だが、愛よりもずっと素晴らしいものを手に入れられる。この、愛を踏みにじるという快楽を得ることができる。
出典:六花の勇者 6巻 山形石雄
愛こそが最強の力である。愛だけが奇跡を起こし、愛だけが勝利をもたらす。テグネウはそう信じていた。愛を知りえないテグネウだからこそ、愛がどれだけ強い力かわかる。
出典:六花の勇者 6巻 山形石雄
愛の強さを知りながらも、その愛を蹂躙する喜びを堪能するテグネウ。ここにある食い違いに、テグネウが理解していたのかは分からないが、彼の存在意義にまでなってしまったこの喜びに勝てるわけがない。
この自己矛盾が敗因だったと思う。
ハンス・ハンプティの過去
ここでは、5巻からアドレット以上に存在感を出してきたハンスについて考えていこうと思います。今では六花の勇者の中で一番好きなキャラはと聞けば、必ず上位にくるほどの存在を見せるキャラ。
ただ、ハンスには謎も多い。そもそも、六花の勇者になるまでの経歴が、6巻になっても一切描かれていないんですよね。
ナッシェタニアとゴルドフ、モーラとチャモ、アドレットとロロニア、そしてフレミー。それぞれの関係性によって、断片的でもそれなりの人となりは今まで語られてきたように思うんです。
ですが、ハンスに限っては「殺し屋」というくらいしか分かっていない。特殊な職業がゆえに、今まで描かれなかったのかは定かではありませんが、六花の勇者を目指した理由については1巻で説明はしています。
「六花に選ばれた時、おらは魔哭領のわりと近くにいた。おらはまずこの国の王様に会って魔神を倒したらいくらくれるか交渉しただ。王様ってのは気前が良いねえ。前金でがっぽりもらっただ。それから金を隠して魔哭領に来て、そこでモーラに会っただよ」
出典:六花の勇者 1巻 山形石雄
改めてこのセリフを見ていくと、「魔哭領のわりと近く」にいたことが分かります。
六花の勇者になるためには、運命の神に力を示すために闘技場で勝ち抜いて優勝することが絶対条件(アドレットが闘技場に乱入しなければならなかったのもこの条件があったから)でした。なぜハンスはそんなところにいたのか。
暗殺の依頼がたまたまあったから?しかし、暗殺した都市で闘技場に参加するような(しかも優勝している)目立った真似を、果たしてするのだろうかと思いませんか。テグネウでさえ手を焼いたハンスですよ。
そう考えると、ほかに原因がある気がします。たとえば、凶魔との間になんらかの過去が隠されているとか・・・どうでしょうか。まさか、スピンオフとして『六花の勇者 外伝』なんてのが出版されたりして。
地上最強の男
テグネウを打ち破ったことで愛する心を失ってしまったアドレット。
彼の心は閉ざされ、魂は過去にとらわれ、暗い復讐の炎に燃えていた。誰のことも愛さず、誰のことも友と思わず、憎しみだけが胸を満たしていた。
出典:六花の勇者 6巻 山形石雄
テグネウが言っていた「フレミーはアドレットに始末させよう」という思いつきも、最後の最後でアドレットに耳打ちしたセリフによって、成就してしまうのか、今後の展開が気になります。
テグネウの心理戦は凄まじいものでしたが、そこには利己的な思惑がありました。とすれば、この後のガーイック戦のさらなる激戦が予想されます。
しかもですよ、テグネウ戦で少し残念だった特質凶具もいなくなったわけですから、新たな気持ちで六花の勇者を堪能できるのはうれしい。
そして、エピローグで意味深な終わり方をしていた、魔神と一輪の勇者の関係、そして、あの流れから考えれば、アドレットは殺されることはないはずです。
復讐に憑りつかれてしまったアドレットの今後はどうなのるか。できることなら、フレミーの愛で奇跡が起きることを密かに願っています。
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