マンガ感想論

シガテラ全6巻感想 あっけないハッピーエンド

シガテラ 古谷実

シガテラは古谷実のシリアス作品第2弾目にあたる作品、2003年からヤングマガジンにて連載され、単行本全6巻で完結。

タイトルの「シガテラ」は毒素に侵された魚介類を摂取することで起こる食中毒のことを指すようで、荻野がまさに「毒」を持った主人公として描かれている。

シリアス作品の中でもラストが絶望で終わっていないのが特徴で、作品も少し肩すかしというか物足りない感じが個人的にはする作品ですね。

あらすじ・ストーリー

高校生・荻野優介は高校一年の頃から谷脇に目を付けられいじめられていた。彼の親友・高井貴男も荻野同様いじめの被害に遭い辛い日々を送っていた。

シガテラ
出典:シガテラ1 古谷実

荻野はパシリと人間サンドバックに、高井は実家が裕福だったことで毎月「月謝」と称してかなりの金額をカツアゲされていた。そんな地獄のような高校生活の中で彼らを救っていたのが趣味のバイク。

荻野は免許を取るために教習所に通いバイトもはじめた。そんなとき同じ教習所に通う1つ年上の女子高生・南雲ゆみが荻野を好きだと知り2人は付き合うことになる。

シガテラ
出典:シガテラ1 古谷実

イジメに遭いながらも初めての彼女、荻野の人生は少しずつ好転していくかにみえたがそうはならなかった。高井が突然学校に来なくなり、そのまま退学してしまう。

シガテラ
出典:シガテラ1 古谷実

谷脇への憎悪は消えることはなく、ネットで知り合った名前も年齢も知らない「森の狼」と名乗る男に谷脇を殺してほしいと依頼する。

日に日にエスカレートしていく森の狼の嫌がらせは最終段階に入り、遂には金属バットで頭部を殴打され谷脇が拉致られてしまう。

荻野を巻きこみ暴力と狂気へとストーリーは進んでいく・・・

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荻野という毒

序盤までのストーリーはイジメにあう荻野というキャラ設定だが、単行本2巻目にして谷脇が新しい下僕を見つけたことでイジメ生活は早々に終わりを迎える。

どちらかというとリア充。その後、荻野自身に命の危険が迫るような事件などはなく彼女とのイチャイチャが続く。

古谷作品お決まりの主人公の周囲でエピソードが走馬灯のように描かれていく。シガテラはとくに短いエピソードがバババっと一気に駆け抜ける展開が多く、ハテナと思わせる描写も多々あった。

だが、これらのはすべて「荻野という毒」から派生しているエピソードだと分かれば、タイトルの「シガテラ」が伏線であり、この作品のすべてを物語っていた。

シガテラ
出典:シガテラ6 古谷実

親友の高井がイジメに合うきっかけが荻野にあったのも、森の狼に命を狙われる谷脇もそもそも荻野が高井を連れてきたからだった。毒を廻りにまき散らす荻野は関わったものすべてを不幸にする存在なんだと指摘される。

高井はともかくずっといじめていた谷脇にまで同じ指摘を言われてしまう主人公。これがシガテラのメインテーマでありストーリーの軸になってるんだと思う。

荻野のイジメられキャラはそれほど重要ではない。被害者だと思ってたヤツが実は加害者みたいないな、そんな感じ。ある意味谷脇も被害者の1人であるかのように描かれていたのが、今までの古谷作品とはテイストが違っていたと思う。

あっけないラスト

しかし、そう考えるとラストがあまりにもあっけない。自分に関係を持った人物がどんどんと不幸になっていく。それは恋人の南雲も例外じゃない。

最終的に荻野が出した答えは南雲が好きすぎるから、不幸にする前まで付き合うといい付き合いつづけるというもの。

高校を卒業した荻野は大学受験に失敗しそのまま浪人生となるが、「他人を不幸にする」という漠然とした恐怖は彼の中にとどまり続けていた。

シガテラ
出典:シガテラ6 古谷実

夜夢の中で見た女か男かも分からない顔に「このままうまくいくと思ってるのか」と聞かれる描写が描かれている。全6巻の中で描いてきたのは、荻野が毒の発生源となりまきこんできたエピソードの数々だった。

しかし、この不安がたった1ページにしてすべてが克服されてしまう。

シガテラ
出典:シガテラ6 古谷実

荻野優介は強くなった

この一行によって今までの不安が払拭されて、一番努力した浪人、そして大学時代をすっとばしてサラリーマンとなった社会人の荻野が描かれている。

章タイトルにあるようにすべては「大人」で強引にまとめにはいってないか?ラストに総スカンをくらったしまった。

全体感想

普通でありたい青年を描いたヒミズとは違うもう一つのシナリオ。一連のシリアス作品に「普通」というテーマを見出すとするならば、こうしたラストもアリだが、各登場人物のエピソードの薄さやラストのあっけない集束感は否めない。

「変わった」の一言ですべてをナシにするのはやっぱり物足りないし強引すぎると思った。リアルな日常を描いてるだけに、一番重要な場面をはしおってしまってはリアルが陳腐になってしまう。

結局荻野はいっときイジメられてたけど、バイトもして免許も取得して、浪人したけど大学入って、、、リア充の話を描いてたにすぎない。そこに作者のメッセージを読み取ることができるのだろうか。

シガテラ 古谷実
出版社: 講談社
出版日: 2003/12/25
言語: 日本語
ASIN: B009SN9WHC

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