ジャンプ発行部数が600万部を超えた1980年代の黄金期に連載していた巻来功士先生が描く当時の舞台裏。
当時の連載マンガを上げると『北斗の拳』『ジョジョの奇妙な物語』『シティーハンター』『聖闘士星矢』『魁!!男塾』『ドラゴンボール』などなど、誰もが知る超人気作品ばかりが連載されてた時代。

そんな黄金期に連載を持っていたのが巻来功士。人気至上主義のジャンプにおいて大ヒットは出なかったものの、作品はコンスタンとに連載できていたようです。
ジャンプ時代の代表作と言えば『ゴットサイダー』ですが、今でもファンの方から出てくる作品は『メタルK』なんだとか。この作品からホラージャンルを知ったという読者もいるのでは。
キッカケは同級生
当時漫画コンテストに意欲的に応募していた巻来青年。大学4年のときには『ぼくは神様』が石ノ森章太郎賞の佳作に入選。小学館の編集者がわざわざ自宅まで会いに来てくれたほど。
しかし、このとき巻来さんと同じく才能ある漫画家の卵が話題になっていた。それが『シティーハンター』や『キャッツアイ』の作者である北条司。しかも、北条は同じ九州産業大学の出身で学部は違えど同級生という関係性。
北条の実力は折り紙つきで、大学4年のときに応募した『スペースエンジェル』が手塚賞に準入選。
ちなみに、巻来も応募するが佳作にも選ばれず残念な結果に。このとき審査員を務めた藤子不二雄先生によれば「絵が子供向きではない」んだとか、分かる気がするw

出典:連載終了! 巻来功士
↑当時の北条司w
それにしてもこのオーラ。大物感がハンパない!次のコマではヘこみまくっている姿が描かれているんですが、このコマを見る限り上条司をかなり意識してたのが分かります。

出典:連載終了! 巻来功士
この後、巻来青年は親に頭を下げて大学を中退、その足で電車に乗り本格的に漫画家を目指すため東京へと上京する。
ライバルはジョジョ
少年ジャンプ時代に描いた作品の中で一番続いたのが1年半連載した『ゴットサイダー』。人気ランキングは上位とはいかないもののそこそこの人気は保っていた。
そんなときに担当編集者になったのがK。はじめて会った時の巻来の第一印象は「この人とは合わない」だったとかww
実際打ち合わせでは趣味が合わなすぎてなんの実りもなく、言い方も気に食わなかったようでいい関係ではなかった。さらにハッパをかけるように、

出典:連載終了! 巻来功士
がんばんないと荒木さんに負けちゃうよ
この頃のジャンプでは、荒木飛呂彦の『ジョジョの奇妙な冒険』が連載スタートしており、今でこそ人気漫画ですが、初期は連載終了候補に上がるほど人気がなかった。
ジョジョとゴッドサイダーは奇しくも同じホラー漫画だったこともあり、シャンプ側としては「同じジャンルは2つもいらない」という意向で、どちらかを終わらせることになっていた。
最終的にはジョジョが生き残り、今でも連載が続くモンスターマンガへと進化。
編集者とマンガスタイル
巻来青年が上京してすぐに連載が決まったエピソードを読むと、才能があることは十分に物語っている。
だがしかし!
あの頃のジャンプは今もなお第一線で活躍しまくっている漫画家さんばかり。時代が悪かったなと思わざるおえない。なんだかんだで実力の世界ですからね。
ただ、巻来がジャンプで連載をしていく中で才能はもちろん、それ以外に編集者との関係が漫画家の将来を左右するくらい大事だと強調する。

出典:連載終了! 巻来功士
『連載終了!』の出版記念でTOCANA(トカナ)にアップされたインタビュー記事を読んでも、漫画家と編集者との関係に触れており、ジョジョに負けた理由に編集者の存在を上げている。
巻来「編集さんのアドバイスを受けてバトル漫画になったあたりからじゃないでしょうか? たとえば、“スタンド”は荒木さんが完全に少年漫画家になった証明ですからね」
出典:荒木飛呂彦になれなかった、もう1人の天才カルト漫画家|TOCANA
ジャンプ連載時代、編集者にあまりいい思い出がなかった巻来。次から次へと代わっていった当時の担当編集者が必ずといっていいほど言われたのがこの一言。

出典:連載終了! 巻来功士
巻来君は1人でも大丈夫
最後のページで初代担当編集者の堀江信彦さんとの対談インタビューが収録されてますが、ここで堀江さんが「巻来さんはストーリーテラーだから」と分析しています。
漫画はストーリーとキャラクターの2つが必要。巻来さんは根っからのストーリーテラーだから構成はうまいんだけど、キャラクター作りが苦手。必要だったのはキャラクターについてのアドバイスだったのだ。
「この時、こういう顔じゃなくてさ」とか「女の子、こんなキャラしてさ」「仕草がこうでさ」とか。そういう事を話せる編集者がもっといたらよかったんだけど。だから編集者のほうも巻来君に対して「自分は必要じゃない」って感じちゃったんだね。「巻来君は自分でやれる人だから」って。
出典:連載終了! 巻来功士
当時の歴代の担当編集者は堀江も含めて巻来とおなじストーリーテラータイプで、キャラクターについてのアドバイスができなかった。ゴッドサイダーの連載終了のあと、ジャンプからの連絡は途絶えていき、結局少年誌から青年誌(スーパージャンプ)に移ることになる。
あとがき
ジャンプ黄金期の裏話と聞いて読んでみると、思ってたよりあっさり目でした。一歩離れたところから客観的に描かれており、タイトル名から佐藤秀峰さんの『漫画貧乏』を連想してしまったが、それほどではない。
扱う内容が内容だけにもっとドスグロイ展開でもよかったのかなと。特に顔のアップや変顔で落とそうとするのは内容に合わなすぎて笑えなかった。
とはいえ、あっさり目でサクサク読むことができるので万人向けの内容にあえてしたのかも。
ちなみにゴットサイダーはゴッドサイダーサーガ神魔三国志(全5巻)として2011年に連載されてまして、なんだかんだ息の長い作品。