『不安の種+』は月刊誌『チャンピオンRED』の連載からはじまり、『少年週刊チャンピオン』に移ってからは『不安の種+』とタイトル名を変えて連載。
10ページほどの一話完結型のホラーマンガ。作者は中山昌亮さん。なにげない日常に潜む恐怖を描いた作品で、記憶にジワーッと残る底意地の悪い読後感はフィクションということを忘れさせる威力があったりする。
少年誌で連載されてたってことなので、これ読んだチビッ子たちは絶対夜トイレいけなくなったと思うw
日常
たわいない日常なんだけど、どこかちょっと違う、そんな違和感を描いてるのがこの作品。会社や学校の帰り道、ふと目の前に黒い影が一瞬見える??

出典:不安の種+1 中山昌亮
まばたきをしたかしないかの一瞬の感覚でいつもの風景に戻る。
気のせい?
目の錯覚、あるいは何かの見間違い、となんともいえない不安を感じながらも、いつもの帰り道を歩いていく。さっきの場所ってたしかこの辺りよね?と何気なく横を振り向くと、、、

出典:不安の種+1 中山昌亮
電柱に血痕のあとが付いていた、ゾワゾワ。こんな感じで直接的に読者を驚かすんじゃくてあとから恐怖が忍び寄っていく感覚。しかもこれが日常を描いてるわけで、まさに不安の種でしかない。
タイトル秀逸すぎるwww
しかも、次のページには同じ構図の写真が載せてあるもんだから、「フィクション」とは分かっていても現実とどうしてもリンクさせちゃうわけ。え、本当の話なのって錯覚を誘う構成でさらに恐怖心を煽る。
押し入れ
さっきもいったようにこのマンガはショートストーリー仕立てになっているんだけど、この構成を利用して時系列でたたみかけるようにジワジワ恐怖を描く。
たとえば♯66「押し入れ」という話では、女の子がある日自宅の押し入れから男の子の声が聞こえるようになる。最初は聞こえないフリをしてたのだが、思わずその声に返事をしてしまう。

出典:不安の種+2 中山昌亮
だ・・・誰?
これをきっかけに押し入れからガリガリガリと異様な音がしはじめていく。「ねぇ」という声も相変わらず続き、あるとき押し入れの中から
もう・・・終わらせる
という言葉を残し話は終わる。そして話は変わり♯67『改装工事』では30年以上も野ざらしの家を買い取り新しく家を建てることにした男性。
ボロボロの家を解体していたとき、一畳ほどの半地下のような部屋から一冊のノートが見つかる。

出典:不安の種+2 中山昌亮
そこにはお母さんがどこかへいってしまったこと。男の子が1人お母さんを待ち続けていること。そして、いつまで待ってもお母さんが迎えに来ないことが幼い字で書かれていた。
あるとき「頭の上」に女の子が歩いているのに気づいた男の子。一度は返事に答えてくれたけど、それからいくら返事をしても何も答えてくれなくなった。そして、日記の最後のページには「もうおわらせる」と書かれていた。
♯66「押し入れ」と♯67「解体工事」では1つの怪奇現象についての話なんだけど、時間軸が違うだけでストーリーがつながっていることに気が付きます。
男の子はなぜあそこに居たのか、母親はどこにいったのか、そして「もうおわらせる」とはどういう意味なのか、想像すればするほど恐怖がつのっていく。
そして最後に、女の子が聞いた声は押し入れからじゃなくて、実は床の下からだったわけだ、ゾワッ
怖いのかw
こんな感じでジワジワと恐怖を感じてくる『不安の種+』なんですが、ただ、これホントに怖いのかwといった話もあります。
それが♯5「オチョナンさん」の話。
オチョナンさんというのは小さな子供にしかみえない何か。写真にこっそり写っていたり、1人でお留守番しているときに現れたりするんですが、これといって危害はあたえない。

出典:不安の種+2 中山昌亮
見た目はウッとなる不気味の悪さはあるものの、基本的には無視していればなにも問題はない。ただ、オチョナンさんにはこのほかにも種類がいて、おじいちゃんの家に遊びに行ったときにこのことについて相談する。

出典:不安の種+2 中山昌亮
実はおじいちゃんも子供の頃に見たことがあり、なんでも守り神のような存在らしい。つまり、いい幽霊なんですが、目が釣りあがっているオチョナンさんには気い付けよと注意するおじいちゃん。そうしたら次のコマにwww

出典:不安の種+2 中山昌亮
可愛い孫に笑顔を振りまいている上に怖い怖いオチョナンさんが恐ろしい形相で男の子をしっかり凝視してるわけ。
怖いのは怖いよ。おじいちゃんに気を付けなっていわれた目の前にソイツがいるんだからwもうどうしよもないんだけど、緊張の中に笑いとでもいうか、妙にツボにハマってしまった。
その後もオチョナンさんはこの家族にまとわりついて4巻ではもうものすごいツリ目で出てきます。その後どうなったかは誰にも分からないという後味の悪さ。
中毒性のあるホラーマンガ
ホラーマンガの中でもジワジワ系の『不安の種+』。それぞれのストーリーには結末らしい結末はなく、どちらかというと後味の悪い鈍い怖さが残ります。
サクサク読めるだけに二度三度と読みたくなる中毒性があり、そのたびごとに恐怖が染み込んでくるもんだから厄介。頭からオチョナンさんが離れなくなるという現象を体感してくださいw
いつか自分もこんな怖いな体験するかもしれないと錯覚してしまう、まさに「不安の種」を植え付けられてしまったわけだ。現実とのリンクを組み合わせた傑作。