なぜ佐藤秀峰は「ブラックジャックによろしく」の著作権を放棄したのか|漫画貧乏

漫画家・佐藤秀峰さんが描く赤裸々な漫画業界の裏の裏。ぼくは、漫画やアニメも好きだから、こうした業界の話はとっても興味があるけど、ここまで詳細に書くとは凄すぎです。

アニメ業界もそうですが、サブカル文化の環境ってどうしてこう劣悪なのかと思ってしまいます。まぁ、いちファンとして、なんとなく思い当たらないわけでもないですよ、はい。

たとえば手塚先生からの慣習だとか・・・ね(自粛)。世界に誇れる日本独自のコンテンツなのに、そのコンテンツを創っている漫画家さんたちが、報われないというのは、なんかやるせない。

ぼくはkindle版で読みましたが、現在無料で読むことができます。実際の漫画業界がこれからどうなっているのか、本気で考えさせられます。

スポンサーリンク

漫画家たちの労働環境

単純に労働時間を押しなべて考えるのは、あまり意味がないようには思います。

どんな業界でも、業界の慣習というものがありますから、何も分からない奴が批判しても白けるだけですが、それにしたって漫画業界の現実は誰が見ても酷く映るはずです。

漫画貧乏
出典:漫画貧乏 佐藤秀峰[kindle] P13

佐藤さんがまだ漫画家としてデビューする前のアシスタント時代のことですから、今から20年以上も前の漫画業界なので、現在の業界と混同することはできません。

それでは、「ブラックジャックによろしく」を連載していた2002年頃はどうだったのでしょうか。この頃には、「海猿」の大ヒットもあり、漫画家としてトップクラスの人気を誇っていたわけですが、

漫画貧乏
出典:漫画貧乏 佐藤秀峰[kindle] P26

これが漫画業界の習慣というかよくある日常なのでしょうか。

出版業界が斜陽産業と囁かれるようにとなった現在、本が売れない上に、電子化の波によってさらなる不況へと進んでいる業界と考えると、さらに厳しくなっている可能性は十分にあるはずです。

原稿料の正体

漫画業界には「連載貧乏」という恐ろしい言葉があります。初めての週刊連載。張り切って描いたはいいけれど、人気が出ず半年で打ち切り。残ったのは借金だけ。こんな状況を指す言葉です。
出典:漫画貧乏 佐藤秀峰[kindle] P49

漫画業界は、どんな作品がヒットするか予想することは難しい、いわば「ギャンブル」の世界。本来漫画家をサポートするはずの出版社が、その役割を担っていない現状に佐藤さんはしだいに不信感を抱くようになっていきます。

そもそも漫画家にとって生活の生命線となる原稿料を出版社はどのように決めているのでしょうか?

実は漫画家が食っていけない理由がどうもここらへんにあるようなのです。佐藤さんは一度担当の編集者に「原稿料の定義」、つまり、どうやって原稿料というものが決まるのか聞いたことがあったそうです。

結論から言うと、漫画の原稿料というのは、漫画の制作費ではなく、「(漫画原稿の)作画に対する報酬である」ということが分かりました。
出典:漫画貧乏 佐藤秀峰[kindle] P61

編集長の説明によると「原稿料とは通常、ページ単価で換算され、本誌に掲載された場合、個々のページ単価に、ページ数を掛けて支払われるもので、原稿料改定年度に、連載年数、雑誌への貢献度を考慮し、改訂させる仕組みとなっており、従来は原稿料の内訳については、あまり議論されておらず、あくまでも、作画に対する報酬という規定の枠組みで支払われている」ということでした。
出典:漫画貧乏 佐藤秀峰[kindle] P62

ここから分かるのが、作品を創る上での取材や調査などに掛かる費用、作品を描く上で必要になってくるアシスタントなどの費用は出版社が負担するのではなく、漫画家の自己負担になっているという点です。

出版社は作画に対する報酬しか支払わないとなれば、人気作品を生み出していても、生活できないという状況になるのも理解できます。こうした慣習が現在でも続いているため、漫画家が悲鳴を上げているのです。

なぜ佐藤秀峰は「ブラックジャックによろしく」の著作権を放棄したのか

佐藤さんが出版社を通さずに作品をユーザーに提供していく試みをはじめたのが2008年のこと。現在運営されている「漫画 on Web」の前身である「佐藤秀峰 on Web」が最初にインターネット上で公開した、はじめてのサイトでした。

システム的にもまだ未熟で、改良点がまだまだ山積していたのですが、なんとかサイトオープンにまでこぎつけたことで、新たな一歩を踏み出すことができたといいます。

このサイトでは佐藤さんの作品だけでなく、プロアマ問わず多くの漫画家さんの作品も閲覧・販売できるようなサイトを目指していましたが、初期費用や月額の会費の高さなどがネットとなって、思うように参加者が集まらず、さらにサイトの売上も伸び悩み、運営維持すら難しくなっていきました。

「散々、出版社は漫画家の利益を搾取している」というようなことを言っておいて、自分は漫画家からシステム利用料という名目でお金を巻き上げているだけじゃないか」とも言われました。
出典:漫画貧乏 佐藤秀峰[kindle] P173

その後グッズ販売やほかの電子書籍サイトと連携するなど、さまざまな工夫をしていったのですが、なかなか効果が出ませんでした。そんなときに考え出したのが、「ブラックジャックによろしく」の全話無料でした。

考えた末、僕は著作の「ブラックジャックによろしく」の全話無料公開に踏み切ることを決断しました。
出典:漫画貧乏 佐藤秀峰[kindle] P174

これが話題となりアクセス数が増え、なんとかサイト運営を軌道に乗せることができたといいます。そして、これがきっかけで佐藤さんは著作権をフリー化し、二次使用を自由を許可していくことになります。

漫画でしか伝えられないこと

漫画貧乏
出典:漫画貧乏 佐藤秀峰[kindle] P173

「僕は漫画を信じる」という言葉にすべてが凝縮されているように思います。

僕がいなくても、漫画という表現はあり続けるかもしれませんが、漫画がなくなってしまったら僕は存在できません。漫画をなくしたくありません。
出典:漫画貧乏 佐藤秀峰[kindle] P56

すごい言葉ですよ、本当に。

漫画貧乏 佐藤秀峰 [kindle]
10年後も漫画はあるのだろうか!?出口の見えない出版不況、台頭する新メディア…描いても描いても、原稿料では赤字続き…『海猿』『ブラよろ』の作者の漫画の未来に向けた、孤独な挑戦と実験の記録
Amazon