漫画「オーダーメイド」は週刊漫画TIMES(漫画雑誌)にて連載していた作品で、作者は高橋一仁さん。単行本は全四巻で完結。
ストーリーは青年向けで、グロやエロも毎回登場します。というのもAV(エロビデオ)にまつわるストーリーのため、お色気シーンは普通にある。
といいますか、ない回のほうが少ないってくらいのエロボリューム。ただ、注意したいのは基本鬱展開だってこと、エロ目的で読んじゃうと萎えるから要注意(いろんな意味で)。
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オーダーメイドのあらすじストーリー
作者 | 高橋一仁 |
出版社 | 芳文社 |
連載雑誌 | 週刊漫画TIMES |
巻数 | 全4巻 |
代表作 | パーフェクト・ヒューマンなど |
まことしやかに流れているアダルトショップ「ユートピアン」の噂、とある路地裏にあるこの店には、1本500万円のAVが売られているという。
そのAVでは、客が希望するどんな娘のAVでも作ってくれる、オーダーメイドAVを販売しているというのだ。
まさに男の欲望を具現化した夢のようなAV。初恋の人、未練のある子、芸能人、アイドル、どんな娘のAVでも作ってくれるという。
そんな噂を信じて、欲望まみれの人間たちが一人、また一人とユートピアンへと誘なわれていく、、、己の願望を満たすために。
出典:オーダーメイド2 高橋一仁 芳文社
だが、オーダーメイドAVを観た人間は、その日を境に狂っていく。自分でも気づかなかった本性を知ったことで変わってしまったのだ。
オーダーメイドAVとはなんなのか、誰が何の目的で生まれたのか、そして次第に黒幕の存在が明らかになっていく・・・といったストーリー。
AVで人生が狂ってしまう!?
漫画「オーダーメイド」では毎回、高額AVを購入した人間模様が短編として描かれます。つまり、1巻の中に複数の人間ドラマが描かれるという構成。
ただ、そのいずれの人間もAVを観てしまったがために、人生が狂わされ、精神崩壊や命を落とすなんて転落人生が待ち受けています。
エロだけじゃない理由がここにある!男女がまぐわうシーンはあるのだが、それ以上に人間が狂っていく様がかなりドギツイのだ。
赤荻の場合
運送業者で働く赤荻(あかおぎ)の場合、競馬で500万円の万馬券を当てたことがきっかけで、オーダーメイドAVを依頼することになる。
ギャンブルがキッカケで別れた妻のことが忘れられず、もう一度妻とのセックスをしたいという願望を満たすため、元嫁AVをオーダーする。
一本500万のAV。一体どんな映像なのか、、、一ヶ月後ユートピアンから例の高額AVが届き、さっそく赤荻は観ることにした。
出典:オーダーメイド1 高橋一仁 芳文社
本人!!?
画面に映し出された女性は、紛れもない元妻、まさか、、、本人なのか。500万という高額なお金はそのためだったのか。
元嫁とうり二つの女性が、目の前で喘いでいる姿をみた赤荻は、昔の記憶が蘇り性欲はビンビン、自然とズボンを下ろしてしまう。
性欲を満たすだけならよかったのだが、赤荻は出演している女性が本物の元嫁だと思い、今でも自分のこを好きなのだと勘違いしてしまう。
今まで会わないと誓っていた赤荻はAVで、元嫁の本心を知ったと錯覚、自宅に会いにいくのだが、そこで悲劇が起きてしまう。
綾花の場合
彩花もまたオーダーエイドAVによって人生が狂った一人。綾花は有名なバレリーナとして活躍する才能あふれる女性。
しかし、ここ最近のスランプにより満足な踊りができないでいた。そんなときに見かけたのがオーダーメイドAVのチラシ。
「あなたを成長させる性体験を与えます」という店員の口車に誘われ、綾花は高額AVをオーダーしてしまう。
数日後、ユートピアンから例のAVが届くのだが、その内容というのは、自分と自分がセックスするという奇妙なAVだった。
出典:オーダーメイド2 高橋一仁 芳文社
わたしとワタシ!!?
自分自身のセックスを目の当たりにした綾花は、はじめこそ気持ち悪いと感じるのだが、体はそうではななかったらしい。
いつの間にか左手がアソコへと近づき、そして、気づいてしまう。「これが恋愛なんだ!」と。AVによって極度の自己愛へと陥ってしまったのだ。
自分自身を異常に溺愛するようになり精神のバランスが崩れていく。自分の性癖が開花してしまったことで、社会生活が送れなくなってしまうほど壊れてしまった彩花。
この日を境に、才能ある一人のバレリーナの明るい未来は、一本のAVによって壊されてしまったのであった。
花と隣人
出典:オーダーメイド3 高橋一仁 芳文社
ワタシがんばる!
この漫画はAVによって欲望が露わになった人間が各エピソードに登場するのだが、すべての人間が欲望に負け狂っていったわけでない。
花はオーダーメイドAVを直接観たわけではなく、花が住むアパートの隣人がAVによって狂っていった。隣人を反面教師として、新しい一歩を踏む出すことができた一人。
花のようにオーダーメイドAVがきっかけで不幸な人生に転落せずに、むしろ新しい人生を歩み始めるエピソードも盛り込まれていたりする。
手に届く欲望や性欲が目の前にあらわれたとき、人間は必ずしも本能丸出しになるわけではない、そんな作者のメッセージが込められているのかもね。
描かれる人間模様が残酷すぎる!
こんな風に、各巻で描かれるぞれぞれの人間の転落劇はかなり心にダメージを与えます。AV?なんだかエロそう?と鼻を伸ばしながら読むと思わぬしっぺ返しがきてしまうw
とはいえ、ブラック交じりの転落劇は、たとえば藤子不二雄Ⓐ先生の「笑ゥせぇるすまん」に似ているものがあり、こうした漫画が好きな人ならぜひ読んでみてほしい。
AVという性欲を満たす道具が、本作では性欲+心までも満たすのだが、それは序盤だけ、ラストにはそれを覆すどんでん返しが待っている。
セックスは理性よりも本能が優勢になる行為、そのため、人間の黒い部分、それを本性と言ってもいいが、人間の本性をAVを使って引き出すアイディアは面白い。
オーダーメイドAVの真実
赤荻や彩花のようにオーダーメイドAVを観てしまったことで、人生が狂っていく、いや、正確には狂わされていったというほうが正しい。
というのも、オーダーメイドAVにはなんらかの意図を持った黒幕によって作られていたからだ。黒幕を暴く、ミステリ要素もあるのもこの漫画の特徴。
出典:オーダーメイド2 高橋一仁 芳文社
なら、その黒幕とはいったい誰なのか。そこで、欠かせないキャラが新聞記者の山田律子(やまだりつこ)。
律子は、恋人をオーダーメイドAVで失ったことをきっかけに、謎を突き止めるために動いていきます。彼女の調査によって明らかになったのが、数年前に起こったある事件。
愛妻蘇りプロジェクト
この事件は、不運な事故により若くして亡くなった妻を蘇らせるために、夫である中須クリニック院長・中須正義(まさよし)医師がおこなったイベントだ。
出典:オーダーメイド3 高橋一仁 芳文社
オーディションにより整形可能な女性を集め、選ばれた女性を亡き妻そっくりに整形手術を施すという「愛妻蘇りプロジェクト」、合法ではあるものの倫理的に問題がありすぎた。
当時、このプロジェクトに対してマスコミが大々的に取り上げ世間に知られることになる。オーダーメイドAVはどうやら、このプロジェクト、つまりは主催者である中須正義と深く関係しているのではと律子は突き止めていく。
しかし、オーディション開催の数か月後に中須は自らの命を絶っている。新聞では世間から批判に耐えかねての自殺としているが、実際のところは分かっていない。
だが、中須が自殺をはかったことは確かなこと、オーダーメイドAVと中須正義とのつながりを掴んだものの、確固たる確証を得るまでには至らずにいたのだ。
オーダーメイドの結末ラストとは?
単行本全四巻完結のこの漫画のラストは、オーダーメイドAVをはじめるきっかけ、そしてすべての謎が明らかになります。
謎を突き止めた律子は、黒幕の手によって凄まじいことをされてしまう。あまりの衝撃に失禁してしまう姿も描かれる(ジョボ
ラストに相応しい衝撃度ではあったものの、黒幕の目的が微妙だったのも正直否めない。というのも、オーダーメイドAVをはじめた理由が弱かった。
そんな理由でお前は、いろんな人たちの人生を狂わせてきたのか!ってなるレベルで、その味総スカンな理由は実際に読んでみてほしいところw
ラストコマでは、人間模様漫画あるあるなオチとなっており、普通だったら問題ないのだが、ことこの漫画に関しては、そのオチはどうなのといったラストも読みどころの一つ。
漫画「オーダーメイド」まとめ感想
冒頭でミステリ要素多めとはいったものの、たしかにオーダーメイドAVの黒幕がカギを握っていたのは確かではあるが、尻つぼみなラストはいなめないところ。
欲望に溺れた人間の狂気と転落、そして欲望を引き出すアイテムにAVという設定は楽しめるのだが、全体の構成という俯瞰で見るとラストのオチでダメにしてしまった感があった。
とはいえ、ブラックユーモアな漫画を好む人にはおすすめできる。細かいツッコミはあるものの、各エピソードのブラックさ、ストーリー性は高め。
欲望に人生を狂わされた人間ばかりでなく、欲望をはねのけ新しい人生を歩む人間も描かれていて、ストーリーの奥深さを深めている。
ブラックユーモアたっぷりな漫画。
オワリ