日本各地にある仏像を見ていくと、実にさまざまな手の形があることに気づきます。
それぞれに名前や意味もあるのですが、如何せん数が多いためすべてをご紹介することはここではできませんし、残念ながらぼくにはそんな知識もありません。
ただ、手の形には基本形ともいってもいい「釈迦の五印」というものがあるんですが、見る機会も多いので、まずはこの形を学んでいくのがベストです。
手の形の意味を知ることで、仏像が観光として見る対象から興味の対象と変わっていくので、面白さがより分かるはずです。
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釈迦のクセを模したもの
仏像の手の形は「印」という表現を使うのですが、もともとは釈迦の座禅や説法の姿から生まれたものがはじまりなんだとか。
印には基本的な五種類の形がありまして、釈迦がよくしていたしぐさを5つに分類したものを「釈迦の五印」と呼びます。
まずは禅定印から。
禅定印(定印)
禅定印(ぜんじょういん)は、釈迦が深い瞑想に入ったことを表すしぐさ。
瞑想、つまり釈迦のおきまりの座禅ポーズがこの形になります。また、よくよく見ていくと、手の置き方で意味合いが変わってくるんです。
右手を下に置いているか、左手を下に置いているかで意味が違ってきます。
右手が下の場合は、教えを受けるポーズで、左手が下の場合は、教えを説くポーズを表現しているんです。
仏像の場合は、教えを説いている立場にあるわけですから、基本的には左手が下になっているのですが、逆のパターンもあります。
仏像探索の際には、どちらが下になっているのか見るのも面白い。
説法印(転法輪印)
説法印(せっぽういん)は、釈迦が説法をしている時のしぐさを表現している印。
悟りを開いた釈迦ですが、あまりの難解さに人々に話しても理解されないと思い、しばらくの間、説法することを出し渋っていたんです。
それを見かねた梵天(ぼんてん)が根気よく懇願し、三度目にしてようやく説法をしてくれることになったという逸話(梵天勧請)が残っています。
釈迦がはじめて説法をしたときのしぐさがこのポーズだったわけです。
仏像で言うと、この印を組んでいるのは如来像だけにしか見られません。
施無畏印と与願印
施無畏印(せむいいん)は、相手に安心感を与えるしぐさ。参拝者に気を楽にしてリラックスてくださいというポーズ。
与願印(よがんいん)は、願い事をかなえてくれるポーズで、腰のあたりにあることが多いです。
仏像の印の中で一番見かけるのがこの2つの印になるんだそうです。悟りを開いた釈迦と対面するのは緊張するものです。
そこで、まず手をあげて「まあまあ、楽にしなさい」と気持ちをほぐし、緊張が和らいだところで、釈迦にお願いごとをするわけです。
一般的に施無畏印と与願印がセットになっていることが多いんですが、どちらか一方のケースもあります。
降魔印(触地印)
降魔印(ごうまいん)は、悟りを開く直前に現れた悪魔を退散させたときのポーズ。
釈迦が悟りを開くまさにその瞬間、悪魔が邪魔をしてきたといいます。そのとき、降魔印を組んだところ、地の神が加勢して悪魔が退散、その後、無事悟りを開けたという逸話があります。
日本の仏像ではこの印を組む像はあまりありません。
ケーススタディ 薬師三尊像
出典:辻の薬師堂(薬師三尊像レプリカ)|Ik T
ケーススタディとして、鎌倉国宝館にある薬師三尊像を見ていきましょう。
右手は上げて、左手は下げています。この手の形は・・・施無畏印と与願印ですね。ただ、左手に何かもっているのが見えますが、これは薬壺(やつこ)。印を組みながら何かを持っている仏像は実際に多いです。
薬師如来は病気を治すご利益があるので、なんでも治せる救急箱のような壺を常時もっているんです。
つまり、参拝に来たみなさんの病気を取り除いてあげましょうという御加護を施すポースということがわかります。
このように、仏像の印からなにを表しているのか、またはおっしゃっているのかを理解することができるわけです。
今回は印の基礎となる「釈迦の五印」を見てきましたが、この5つだけでも仏像散策で遭遇する機会はありますので覚えておくといいと思います。
ありがたや~
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