漫画「切子(キリコ)」は別冊漫画ゴラクにて、2014年10月号から2015年2月号まで連載されていた異形女子系漫画。作者は本田慎吾さん。
少年チャンピオンで「ハカイジュウ」描いてた人です。ちなみに、ゴラクは2015年2月号にて休刊してしまったのだが、切子は休刊まで連載していた作品の一つだったりします。
Jホラー漫画とし連載をスタートするも、いつしかツッコミどころの多い作品へと変貌。単行本表紙の作者メッセージにて自ら告白してますw
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漫画「切子」あらすじ
作者 | 本田慎吾 |
出版社 | 日本文芸社 |
連載雑誌 | 別冊漫画ゴラク |
巻数 | 全1巻 |
代表作 | ハカイジュウなど |
葉山良介に届いた、「K」を名乗る差出人から送られてきた同窓会の案内状。そこには17年前に不可思議な自殺をとげた同級生・奥村切子の17回忌に集まろうというものだった。
卒業以来16年ぶり母校に集まった同級生六名。何十年ぶりの再会に自然と懐かしさがこみあげてくる良介たち。しかし、次第に状況が変わっていく。
トイレにいった平野理緒が、便器の前で尻丸出しの無残な遺体が発見される。そして、加藤、渡部、滝本と次々に同級生たちが謎の死をとげる。
これは17年前に死んだ切子の呪いか、はたまた復讐か。廃校で起こる残忍な殺戮、殺人鬼の正体は・・・お前だったのか!!?
漫画「切子」のトリック考察
奥村切子という美少女
出典:切子 本田真吾 日本文芸社
誰よりも輝いていた・・・
17年前に不可思議な自殺をした奥村切子が、今作のすべてのカギ。中学時代、アイドル級の美貌を備えながら、リア充な学校生活をエンジョイしていた切子がなぜ自殺を。
今作の主人公である葉山良介がこの同窓会に参加したのも、切子の17回忌をきっかけに自殺の原因を明らかにしようと思ってのことなのだ!
そして、良介曰く切子とは、「人を怨むような感情とは一番遠い存在」と断言するのだが、これがラストにて巨大ブーメランとして返ってくるとはw
解離性健忘と本当の「切子」
この作品のトリックは一時的な「記憶喪失」。実を言うと、切子を自殺に追いやったのが良介本人であることが判明する。故意ではないにしろ不慮の事故の原因は良介に間違いなくあったのだ。
不慮にせよ自分が切子を突き落としたショックにより記憶の一部が喪失。ショック性記憶障害とでもいおうか、切子の記憶だけが歪んでしまい今に至るというオチ。
ちなみに、事故の原因は切子の顔があまりにもブサすぎて、思わず突き飛ばしてしまったという、とんでもなくゲスい上にしょうもない理由。
そうなると、本当の「奥村切子」とはどんな顔だったのかだということ。どのくらのブサなのか、良介が思わず突き飛ばすほどって、いくらなんでも、、
出典:切子 本田真吾 日本文芸社
突き飛ばしますツ!
目全体が陥没した上に一重、ブタ鼻で顎の中央がモッコリ、輪郭はややホームベース顔です。かなりのブサ顔。ガリガリなのがブサ度をアップ。
この展開はなんなんだツ!
よくこんな作品が世に出たなと、いろいろ思うとこはあるものの、ここではスルー(あくまでフィクションだからね)。
本当の切子の姿とは、ブサがゆえに同級生にイジメられていた。アイドルとはやし立てたのも、切子をからかってのこと。全校生徒の前で歌わせたり、タバコを押し付けたり。
ともかく陰湿ないじめをされていたようだ。良介は記憶が混濁したのをいいことに、切子は校内一の可愛さで、アイドル級の人気者だったと脳内改変してしまっていた。
学生の頃、良介は切子のいじめには加わってはおらず、むしろ止めていたくらい。ただ、中途半端な正義感のせいで切子を死なせてしまうという最悪のシナリオになってしまった。
巨大すぎたブーメラン
同級生が次々に殺されていく中で、ようやく忘れていた本当の記憶を取り戻した良介、
切子を殺したのは俺だ!
と、巨大すぎるブーメランがゆえに、ラストにて自分の心臓にグサリと突き刺さり、さらには抉ってしまったw
切子の自殺の謎を明らかにしようと思ってやってきたつもりが、まさか殺したのは自分だったと気づいてしまったからだ。
さらに恐ろしいのは、今の今までの良介のセリフ。彼のセリフ一言一句すべてにおいて、切子をディスっていたのだ。虐めていた同級生よりたちの悪い主人公。
出典:切子 本田真吾 日本文芸社
この満面の笑みである
一番はじめにディスっていたのも、もちろん良介本人だった。「僕らのアイドル」というパワーワードは、切子をディスるかっこうの火種に。
出典:切子 本田真吾 日本文芸社
火に油を笑顔で注ぐ主人公、一周回ってもはやギャグ。トリックが分かったところで一度読んでみてほしい、きっと違った意味で楽しめるはず。
切子を殺し、さらには17回忌には自ら率先してディスる良介、これほどムナクソ悪い主人公がいるだろうか。しかも、記憶改変によって本人に悪い自覚が最後までないという鬼畜ぶりwww
良介たちを襲う殺人鬼
切子の正体とは?
出典:切子 本田真吾 日本文芸社
りょうすけく~ん
漫画「切子」に登場する殺人鬼の正体についても触れてみたい。といっても、その正体はお察しの通り、不慮の事故により死んでしまった切子の悪霊である。
ヒドイ虐めの怨みが切子を悪霊にさせた。
ただ、悪霊とはいっても、物理的な破壊はもちろん霊感があろうがなかろうが誰にでも見えるらしい。さらにはしっかり言葉を話し、それこそある程度意思疎通が可能。
と一瞬ゲシュタルト崩壊してしまうほどキャラ設定がガバガバではあるものの、切子は悪霊であり、これがジャパニーズホラーなのだッ!
招待状の主はだれ?
ちなみに良介の元に送られてきた「K」という送り主からの招待状ですが、このKとは一体誰なのでしょうか。普通に考えればイニシャル、
切子⇒KIRIKO
となり悪霊が招待状を送ったのでしょうか?
切子が一つ一つ招待状を用意する状況のイメージはホラーというより爆笑ですが、切子が送り主ではありません。送り主の正体は同級生の滝本英孝。彼の職業が作家で、ペンネームが霧島桐生。
霧島⇒KIRISIMA
というわけです。
出典:切子 本田真吾 日本文芸社
Kは僕・・だッ!
誰だよ。ストーリーには全く関係ないどーでもいい展開に少しガックシ。なぜかといえば、じゃあ、どうして切子は良介たちを襲ってきたのかという疑問が浮かぶからですね。
ストーリーからして、切子の十七回忌だから襲ってきたとも思えますが、切子はかつての同級生を襲っているときに決まって
りょうすけく~ん
と良介の名前を連呼しています。
ということは、殺した張本人だとしても、記憶を亡くして美少女と勘違いする大バカ野郎だとしても、切子は良介のことが昔から大好きでした。
だから、16年ぶりに良介が学校にやってきたことで、悪霊になった切子もついつい遊びにきちゃったみたい。なんてけなげな女の子。
漫画「切子」の結末とは
悪霊と化した切子さん。彼女の目的は良介に会いに来たためだと思われます。かつての同級生を殺していくたびに、なぜか巨大化していく悪霊・切子。
最後は廃校を突き破るほどのデカさに巨大化する意味不明な展開へ。そしてすべての記憶を取り戻した良介が切子さんに謝って終わりというラストへ。
切子に殺されなかった良介は「許してもらえた」(←本当は許されてない)と思い故郷を後にする(←本当はストーカーされることに)。
出典:切子 本田真吾 日本文芸社
ラストコマでは、生き残った良介の後ろの窓から覗いてる切子が映り込む。良介を追いかけて都会に来ちゃった(ハート)というラストでジエンド。
その後の良介がどうなったのかは明らかにはなっていませんが、続編となる「切子・殺」にて、その後のストーリーが描かれています。
一体どんな展開になったのか気になるところですが、結論から言えば、かなり壮大な展開にてエンディングを迎えていたことが判明します。
漫画「切子」の続編・真のラスト
前回、母校で生き延びた良介とみずほ。ですが、みずほは残念ながら自殺してしまいます。切子に許されたと思っていたのですが、その後ずーっとストーカーされていたようです。
ただ、切子は悪霊なのでストーカーというよりも「憑りつかれた」というのが正しい表現。切子に憑りつかれたことで自殺してしまいます。
一方、良介も切子に憑りつかれていますが、良介は自殺ではなく心が病みます。アラサーにして中二病が発動してしまう展開へと突入。
死ぬまで、いや、悪霊なので、死んでもなお切子にストーカーされ続けることを悟った良介は、何を思いついたのか日本を滅ぼそうとしますw
出典:切子・殺 本田真吾 日本文芸社
マジですか良介さん
最終的には国会議事堂をぶっ壊そうぜ!という展開になり、巨大化した切子の肩に良介が乗るという草を通りこして大草原な終わり方を迎えることになります。
ヒドイ虐めから生まれた悪霊・切子ですが、いつしか日本存亡の危機という、えらい大ごとへとストーリーは展開していきます。こんなトンデモホラーは良くも悪くも続編まで読む価値アリ!
それにしても、今回一番クズキャラだったのはやはり良介でした。
はじめは正義感あふれる主人公かと思いきや、本当の記憶が戻り、同級生を殺し、挙句の果てには日本転覆まで企てる大馬鹿野郎にまでなり下がってしまいましたwww
漫画「切子」感想・まとめ
漫画「切子」は単行本にして1巻のみ、続編「切子・殺」を合わせても二巻で完結というサクッとスナック感覚でよめるボリュームになっています。
それだけに、細かい設定はかなりはしおった印象です。ところどころツッコミどころがあるのもそのためなのかも。
でも、大まかなストーリーだけを追っていけばホラーとしても楽しめますし、どこにポイントを当てて読むかで印象はガラリと違ってくるはずです。
ちなみに、一度読んでホラーなのが、二度目読んだらギャグになるから、この違いはぜひ楽しんでほしいところです。