キメラアント編で描かれる戦闘シーンは1時間も経過していない攻防劇。けど、そのわずかな時間を状況解説と巧みな心理描写によって描ききります。
それがッ!
HUNTER×HUTER
である。
これも冨樫先生がイメージするプロットが完璧なほどしっかりしているからこそのなせる業なのだろう。だから休載も年一連載も許せてしまう(多分)。
とくに、キメラアント編のラスト!
単行本28巻以降からラストへ向かう怒涛の展開は何度読んでも飽き足りない。そこで、ここではハンターハンターのラストへの怒涛の展開を紹介していこうと思います。
※ネタバレを含みますのであらかじめご注意ください。
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ゴンさんはギャグではない根拠
キメラアント編の特徴に、敵の圧倒的な力があります。特に王と直属護衛軍の3匹は、トリプルハンターでさえ太刀打ちできないほどの能力者。
こうした敵の戦闘力のインフレは少年マンガではありがちな設定ですが、ハンターハンターでは、圧倒的な力の中でも条件や戦略によって、単調な力押しのバトル展開にならないところ。
主人公が窮地に追い込まれて新必殺技によって倒すような定番のストーリーは正直つまらない。ゴンがゴンさんなった件はどうなんだ!とツッコまれそうです。
たしかに一理あります!
ですが、ハンターハンターを1巻から読むと、ゴンの狂気さは作中で度々描かれています。その伏線があるからこそ、ゴンさんはしかるべくしてなったというのが私の読み方。
メルエムvsネテロの最後(ラスト)
蟻の王メリエルの圧倒的な能力の前に、ネテロ会長の勝算は読む前から「ほぼゼロ」というのが誰の目を見ても明らかでした。
ネテロの戦略はメルエムに唯一勝る両手を合わせることで発動する百式観音による攻撃、この一連の所作のみがメルエムの動きよりも凌駕する。
出典:HUNTER×HUTER28 冨樫義博
ただ、この攻撃ではメルエムに決定打を与えることは不可能。そこで、奥の手「百式観音・零式」を発動さるのだが、それすらもメルエムの動きを止めるには至らなかった。
手駒を失い、追い詰められていく中でネテロが繰り出した最後の手が「自爆」という選択でした。まさか、こんな結末になるとは・・・
百式観音による数百・数千の打撃はメルエムに少なからずダメージを与え、零式によってさらなる傷を負わせたネテロ。そして最後の最後、自爆によって相打ちを計る。
この展開は本当に読み応えがあった。先の読めない展開と、衝撃的な結末、さらにこれが決定打となり蟻の殲滅へと繋がる「キメラアント編」の終局。
メルエムとコムギ
29巻以降からラストへ向かうにしたがって、「蟻」だけではなく「人間」の内面も描き感動へと持っていきます。
序盤においてコムギの意義がどこにあるのかと疑問にすら思っていたが、ストーリーが進むにつれて二人の絆が強くなっていく。
出典:HUNTER×HUTER30 冨樫義博
特に、30巻からのメルエムが死を受け入れてからの描写は、コムギの傍に居たいと思うメルエムの人間らしさが読みとれて「敵」という存在だけには思えない複雑な感情が沸き起こった。
キメラアント編を読み終えると、コムギの存在がいかに重要であったのかを思い知らされます。
メルエムがネテロとの戦いで勝利できた要因の一つに、コムギと打ち合った軍義の影響は確かにあった。先読む力は、そのまま戦闘中に活かされいた。
ハンターハンター 【軍儀】二人の想いは孤独狸固(ココリコ)から
キメラアント編ヒロインのコムギ、軍儀の名手としてメルエムに呼ばれたのが最初の出会い。 軍儀を通して2人の距離はだんだんと縮ま ...
人間味をキメラアントに見いだし、読者にメッセージを投げかける冨樫。敵=悪という少年漫画の王道とも言える構図だけでは決して語ることはできないストーリーに仕上げていた。
最後
30巻からの二人の軍儀(ぐんぎ)を指すシーンは感動以外のなにものでもない。
戦力のインフラをどう収束させていくのかという、当初感じていた私の想像は、今にしてみればなんと浅はかなものだったことか!
冨樫先生の手によって今まで落ちていた伏線が一つにつながっていくストーリー構成は、ちょっとした驚きと快感を伴う。
出典:HUNTER×HUTER30 冨樫義博
お主と打って過ごしたかった
ネテロをも凌駕する圧倒的な能力の持ち主である蟻の王メルエム、彼が最後に望んだのはコムギと共に過ごすことでした。
ちなみにキメラアント編のラストではコムギも死亡していまう。
原因はメルエムが受けた毒がコムギにも移ってしまったから。そして、ラストではコムギの膝の上でメルエムが横たわるシーンで終幕する。