映画「かがみの孤城」は、辻村深月氏の同名小説を原作とした劇場アニメ映画で、2022年に劇場公開された作品。
今回、アマプラにて取扱いがはじまったことから観賞。ここでは、ラスト含め気になる場面を考察していきます。

映画「かがみの孤城」あらすじ
雪科第五中学校に通うこころは、クラスメイトとのトラブルから不登校になり、いつしか家にひきこもる毎日を送るようになっていた。
そんなある日、部屋に置いてある姿鏡が突然光りだし、吸い込まれるように異世界へと導かれることになります。
そこには「かがみの孤城」と呼ばれる城があり、狼の仮面をつけた謎の少女・オオカミさまが案内役を務めていた。
孤城には、こころのほか6人の少年少女が招かれていた。オオカミさまは「この城に隠されている鍵を探せば願いが一つを叶う」と告げる。
出典:かがみの孤城
はじめはよそよそしかった7名の子どもたちだったが、時間を共にする中で意気投合し、協力しながら鍵を探しはじめていく。
仲良くなるにつれて、彼らが抱える家庭や学校の悩みを打ち明けあい、やがて孤城の謎と彼らのつながりが明らかになっていく。
パラレルワールドではない世界
まずは、ストーリーを追いながら正体を整理していきます。主人公たちが同じ中学校だと知るのは、アキが制服姿で孤城に来たことからでした。
出典:かがみの孤城
自分たちが通う学校の制服と同じであることに気づき、中学校で会うことを約束しますが、会うことはできませんでした。

ただ、孤城で出会った子供たちはこの学校にはいないと先生から言われてしまい、ウソをつかれたのかと半信半疑になります。
ところが、孤城で再開すると、みんな雪科第五中学校の生徒であること、約束の日にみんな学校にいったというのです!
- みな雪科第五中学校の生徒
- あの日全員が学校に行っていた
これらの事実から、孤城に招かれた7人は時間軸の異なるパラレルワールド(並行世界)からきたのではないかという推測に至ります。
7人の少年少女の正体
ただ、パラレルワールドはオオカミさまにより「違うよ」と早々に否定。オオカミさま曰く、現実世界でも会うことはできるといいます。
出典:かがみの孤城
では彼らの正体とは?
かがみの孤城に招かれた子どもたちの秘密が明らかになるのは、こころが孤城に隠されている鍵を探し出したときでした。
鍵を手に入れたとき、ほかの6人の記憶の断片を覗いたこころ。このとき、彼らの「時間のズレ・時代のズレ」に気づきます。
孤城に集まった7人の中学生たちは、いずれも時空を超えて招かれていたのです。光る鏡をくぐりぬけることで時空を超えていた。
時空を超えた子供たち
孤城に招かれた子どもたちは、時空を超えて招かれており、世代がバラバラの子供たちが、鏡を通り抜けて孤城へとやってきていました。
そのため、孤城内では同世代ですが、現実世界では出生日が違うことから、彼らの会話の中でズレが起こっていました。

世代間のズレ①
マサムネがしていたゲーム「ゲートワールド」(通称:ゲトワ)。マサムネ以外、あまりピンときていませんでした。
唯一、ウレシノだけが知っていたものの、「映画化されたよね」という発言に、マサムネはこれを完全否定します。
話が嚙み合っていませんでしたが、これは世代間のズレから、マサムネの時代には、まだ映画化はされていなかったのです。
世代間のズレ②
出典:かがみの孤城
アキの制服も世代間を匂わせていました。アキが制服姿で孤城にやってきたときの「足元」に注目してください。
今は懐かしきルーズソックスを履いています。90年代に、女子高生を中心にルーズソックスブームが起こりました。
アキが15歳のときは92年。中学生ながら髪の毛を染めたりおませだったアキ。流行をいち早く取り入れていました。
世代間のズレ③
個人的に面白かったのは、アニメに関する世代間ギャップです。本作は、マサムネの声優さんは高山みなみさんが担当していました。
出典:かがみの孤城

作中では、マサムネが「真実はいつもひとつ」というコナンの有名なキメ台詞をいう場面が登場しています。
このセリフに対して、スバルは「なにそれ」と知りませんでした。中学生のスバルが過ごした時代は85年です。
名探偵コナンが連載されたのは90年代になることから、スバルが知らなかったのも当然だったわけです。
時空を超えた7人の年齢整理
主人公たちの孤城での年齢と西暦を整理します。孤城での彼らは同世代ですが、現実世界ではかなり年齢のひらきがあるのが分かります。
また、世代差は7年間隔ですが、こころとリオンだけは同世代です。ちなみに「7」という数字はかがみの孤城においてキーとなる数字でした。

名 前 | 年 齢 | 西 暦 |
スバル | 15歳 | 1985年 |
アキ | 15歳 | 1992年 |
ココロ | 13歳 | 2006年 |
リオン | 13歳 | 2006年 |
マサムネ | 14歳 | 2013年 |
フウカ | 14歳 | 2020年 |
ウレシノ | 13歳 | 2027年 |
スバルとウレシノの現実世界の年齢差は44歳になります。ただ、逆に考えると現実世界で出会う可能性はあります。
彼らは同じ中学校出身ですから、地元が同じなはずです。年齢差はありますが、物理的な理由から出会う可能性はあります。
実際、エンディングでは、現実世界の彼らの様子が描かれており、気づかないまま再開を果たす場面も描かれていました。

オオカミさまの正体について
ちなみに、オオカミさまの正体はリオンの姉のミオでした。かがみの孤城は、ミオが神さまにお願いして作られた異世界でした。
ミオは13歳という若さで病死しますが、孤城の中で鍵を探す期間を一年間としたのも、ミオの亡くなるタイムリミット(命日)を示していました。
7人の記憶とラスト
かがみの孤城に隠されている鍵を見つけ出し、願いを一つ叶えることができたなら、孤城で過ごした記憶は消えてしまうルール。
そのため、本来であれば現実世界に戻ってきた7人は、お互いの顔も名前も、思い出すことはないはずですが・・・。
アキの記憶とラスト
ラストでアキの正体が明らかになります。アキの境遇は、7人の中でもとりわけ辛い状況が描かれていたように思います。

ただ、そんな不遇な環境にも負けず、彼女はケースワーカーとして子供たちのケアをする仕事に就いていました。
さらには、アキが担当していたのが孤城に招かれた子どもたちだったことも判明します。結婚して苗字が「喜多嶋」に代わっていたのです。
ちなみに、喜多嶋先生の記憶は消えていたと思います。そして、こころも同じく記憶を失っていたように感じました。
リオンの記憶とラスト
出典:かがみの孤城
問題はリオンです。リオンは、孤城が消えたあとも記憶は失ってはいなかったように思います。理由としては二つ考えられます。
- 姉との別れの会話
- 進学ルートの変更
リオンが姉のミオと別れるとき、「みんなのことを覚えていたい」という願いにミオは「善処する」と答えていて、願いを叶えたのかなと。
さらに、自分のやりたいことを母親にちゃんと伝えるとミオに約束していて、その約束を守るために雪科第五中学校に行くことを決めた。

映画「かがみの孤城」考察感想まとめ
冒頭シーン。
たとえば夢見るときがある。転入生がやってくる。その子はなんでもできる素敵な子。たくさんいるクラスメイトの中に私がいることに気が付いて、おひさまみたいな眩しい微笑みを浮かべ、「こころちゃん久しぶり」ってまっすぐ近寄ってくる。みんな息をのむ。そんな奇跡が起きたらいいとずっと願ってる
出典:かがみの孤城
この冒頭シーンがラストで現実に。
二年生になり登校を決めたこころは、その日奇跡のようなことが起こります。名前も顔も知らない男の子から、親し気に声をかけられる。
「同じクラスだね」
まるで、昔から知っているような素敵な子。こころが胸の多くでずーっと願っていた願いがか、ラストで現実になる場面は胸アツでした。

一つ気になったのは、昭和ですかと思うほど家庭での父親の存在のなさ。そして、登場するろくでもない奴がいずれも大人の男性だったことw