映画「ミスト」は2007年に上映されたホラー映画。スティーブン・キングの小説の映画化で、監督はフランク・ダラボン。
キングとは相性抜群で、数々の作品を映画化。そもそも、キングの短編小説「312号室の女」がきっかけでホラー映画を撮るように。
07年に上映された作品ではあるものの、その衝撃的ラストから、今でも話題にのぼるほど色あせない映画です。
ならどんなラストなのか?問題はココ。そこで、映画「ミスト」の衝撃ラストに触れつつ、ストーリーを振り返ります。
映画「ミスト」のあらすじストーリー
公開日 | 2007年 |
題 名 | ミスト(The Mist) |
上 映 | 125分 |
監 督 | フランク・ダラボン |
原 作 | スティーブン・キング |
とある田舎町に突如出現した奇妙な霧。スーパーに買い物に来ていたデヴィッドと息子のビリーは、この霧のせいで身動きがとれないでいた。
そのとき「霧の中に何かいる」と、血まみれの男性が店内に駆け込んできた。次第に明らかになる霧の中のバケモノの存在。
しかし、デヴィッドの思いとは裏腹に自分勝手に行動していく人々。そんな中、狂信者ミセス・カーモディは人々を扇動し、異様な状況へと向かう。
危険を感じたデヴィッドたちは、スーパーから出る決断をするが、霧の中で絶望的な真実を知ることになる。最後に彼が下した決断とは?
店内にいた様々な人たち
映画「ミスト」の恐さとは、一言でいえば、極限に追いつめられた人間の心の弱さや脆さ、そして本性を描いているところ。
ただ、本作で描く人間は性悪説ばかりではない。アマンダのセリフにあったように性善説を、人を最後まで信じた人物も描かれていました。
それゆえの衝撃的ラストだったわけですが、ならスーパーにいた人々はどんな考え持ち、行動していたかをふりかえっていきます。
協力したい派
このグループは、主人公デヴィッドらの考え方でした。未知の怪物の存在をまっさきに知り、みんなで団結しようと呼びかけます。
怪物に対する恐怖はあったものの、最後まで理性を失わずに戦い続けました。息子を守る使命感も理性を保てた理由かもしれません。
デヴィッド以外では、新米教師のアマンダ、スーパー副店長のオリー、教師のアイリーンなどが描かれていました。
外に出たい派
霧の中に怪物などいないと考えていた人たち。デヴィッドの隣に住む弁護士のブレントや、彼の意見に賛同してスーパーを出ていった人たちです。
序盤までは、怪物がホントかウソか半信半疑だったこともあり、デヴィッドの話が真実だとは思っていなかった人々が一定数いました。
ブレントは、デヴィッドが自分をバカにしていると思い込んだために、耳を貸すことなくスーパーから出ていった。
ただ、怪物に殺されたものもいたが、生き延びたものもいた。最初にスーパーを出ていった女性は、ラストで生きていたことが判明した。
狂信派
一番たちが悪いグループ。中心人物は、普段は変わり者と陰口を言われていた宗教おばさんこと、ミセス・カーモディ。熱狂的なキリスト教信者。
はじめはカーモディを相手にしていなかったが、怪物の存在が明らかになるにつれて彼女の世迷言を信じ恐怖が蔓延していく。
注目したい冒頭シーン
見たこともない異形の怪物、人間が恐怖によって変貌していく様子は、冒頭シーンを押さえておくことでより鮮明に分かってきます。
冒頭シーンで、この町にどんな人々が住み、どんな噂があり、そして、どんな人間関係かを各登場人物の会話から分かるように演出しています。
何気ない冒頭の演出なんですが、のちにボディブローのように、観ている私たちにじわじわ影響を与えてきました。
隣人ブレント
出典:(C) 2007 The Weinstein Company,LLC. All Rights Reserved.
嵐によって、ブレントの庭の枯れ木が倒木し、隣に住むデヴィッド家のボート小屋をメチャクチャに破壊してしまう。
デヴィッドは、倒壊したボート小屋の補償を巡りブレントと話しあう場面。これが冒頭4分ほどのところで登場します。
実は以前にも、敷地の境界線でブレントと揉め裁判にまで発展していたことが判明。つまり隣人とは反りが合わない関係なのだ。
さらには、ブレントは地元民ではなく他の街から移り住んできた移住民、これもその後の関係性を悪化させる火種となる。
変人ミセス・カーモディ
出典:(C) 2007 The Weinstein Company,LLC. All Rights Reserved.
スーパーに到着したデヴィッドは顔なじみの店員たちと世間話をするシーンで、ミセス・カーモディの評判が明らかになる。
カーモディのこの町での評判があまりよろしくないのは、デヴィッドと副店長オリーとのたわいない会話で匂わせます。
その後も、この町に赴任してきたばかりの教師アマンダは、親切心から声をかけていたが、その返しはヒドイものでした。
変人の世迷言だと鼻で笑い、聞く耳をもたない町の人々。極限の恐怖で、狂言じみた話にさえすがる人間の脆さ、愚かしさは悍ましい。
電力会社と軍隊走行シーン
出典:(C) 2007 The Weinstein Company,LLC. All Rights Reserved.
デヴィッドがスーパーマーケットに買い物に行く途中、電力会社の車両、さらには軍隊の車が複数台すれ違う様子が描かれます。
さらに、この町で起こっている異変に軍が秘密裏に実験している「アローヘッド計画」が関係しているのではなという話が浮上。
作中において、怪物の正体は詳しく描かれてはいないんですが、怪物のヒントは冒頭のセリフや描写ですでに明かされていた。
こんな風に、冒頭でこの町の人間関係を描いたことで、その後の対立や異様な展開がより分かりやすい構成になっていた。
怪物の正体はなんだったのか
化物の正体については作中にて触れています。それによると、異次元からきた生命体(宇宙人)とされています。
住民の間で噂になっていたアローヘッド計画、スーパーにいた軍人ウェインの話から、この計画が実際にあることが明らかになります。
出典:(C) 2007 The Weinstein Company,LLC. All Rights Reserved.
アローヘッド計画とは、科学者による異次元の観察でしたが、嵐によってトラブルが発生、異次元から怪物がやってきたと説明しています。
原因はともかく、アローヘッド計画を遂行していた科学者たちによって、この悲惨な事態が発生したのです。
霧(ミスト)の正体はなんだったのか
怪物の正体だけでなく、タイトルにもなった霧(ミスト)の正体も気になりますが、これについては明らかにされていません。
①設定としての「霧」
霧の出現は記録的な嵐が発生した翌日。デヴィッドは山から湖にかけて白い霧を確認。つまり、山上の軍事施設が霧の発生源の可能性が高い。
出典:(C) 2007 The Weinstein Company,LLC. All Rights Reserved.
デヴィッドがスーパーに行く道中、電力会社や軍隊の車両とすれ違っており、山上の軍事基地が発生源と仄めかしています。
前日の記録的な嵐で、軍事設備が予備も含めて停止したことで、なんらかの事故が発生、霧の中から怪物がやってきたのかも。
②演出としての「霧」
本作は、怪物と人間がガチンコ対決するSFではなく、得体の知れない怪物に襲われる恐怖から人間の精神が崩壊していく様子を描いた作品。
この「得体の知れない怪物」により恐怖感を与えていたのが霧という演出です。スーパーは一面ガラス張りで外はまる見えの状態。
突然の霧によって視界はゼロ。見慣れた町並みが霧という演出によって、一気に不安にさせる場所へと一変させます。
しかも、霧の中からは血だらけで逃げまどう人や見たこともない怪物が突然現れたりと、目に見えないことで恐怖が増幅。
映画「ミスト」のラストについて
ラストについても考えてみたい。この作品は、人間が次第に正常な判断ができなくなっていく恐怖が描かれています。
人々が頼ったのは、変人としてバカにしていた宗教おばさんでした。扇動者は一貫した主張を声高に言うけど、カーモディはその典型でした。
カーモディの狂言が人々に浸透し支持されていくなかで、理性を失くし神への「生け贄」として、人間を殺すまで判断力が欠落した。
一方で、デヴィッドは理性を保ち生きる希望を見いだそうとする。ところがあの結末だ。スーパーに残った人々は助かった可能性は高い。
自分たちが生き延びるために、他人を犠牲にした彼らが生き残るとは、なんとも皮肉であり、救えないバッドエンドだった。
デヴィッドの後悔について
スーパーを出ることを決めたデヴィッドの決断は間違っていなかったと思う。店内の異様な空気は、次なる生け贄の可能性はあった。
霧の中をガス欠になるまで走り続けたものの、結局霧が晴れることはなかった、つまり怪物から逃れることはできなかった。
恐らくデヴィッドたちはそう判断したはず。食糧もガソリンもない状況で、怪物と戦うにもロクに武器もない状態。
この絶望で自殺を選ぶのは誰にも責められない。ただ、息子を殺めたデヴィットが最後に生き残ったのは絶望でしかない。
結局人類は怪物に勝ったのか問題
最後に、結局人類は化物に勝ったのか。あくまで個人的意見ながら、ラストを見る限り人類が勝利したと言えそうです。
出典:(C) 2007 The Weinstein Company,LLC. All Rights Reserved.
というのも、ラストシーンでデヴィッドの横を軍隊の列が通るシーンが描かれていたけど、軍隊が通った後の景色には霧が晴れていきます。
霧は、怪物が異次元からやってきた象徴として描かれています。つまり、霧が晴れる=怪物を駆逐とも捉えることができます。
怪物は人類の武器で倒せることは、今までのシーンで描かれており、人類が勝利というか駆除したとも解釈できます。
映画「ミスト」の感想は賛否両論
怪物との壮絶な戦いを繰り広げると思って、いざ映画を観ていくとこれがまるで別のお話だった、賛否両論な感想を持つのは当然w
ラストの解釈はまさに人それぞれ。スーパーに残ったとしても、生け贄フラグから、デヴィッドの判断が間違いだったとは一概に言えない。
まぁ~そうなのかもしれないけど、ラストの後味の悪さをどう受け止めたのだろうか。私は観たのを少し後悔したかも。
オワリ