マンガ感想論

漫画「ザ・ファブル」感想 変顔、変顔、そして変顔w

ヤングマガジンで2014年から連載している南勝久先生の『ザ・ファブル』。殺し屋が主人公のマンガなのだが、表紙とは真逆にデューク東郷的な王道さはない。

むしろ殺し屋を生業(なりわい)にしているものの「殺さず」を誓う主人公。いかに殺し屋が一般市民に溶け込み普通の生活をしていくかといったある種のヒューマンドラマな香りw

グロさはあるがシュールな笑いがこのマンガの真骨頂なのだ。表紙に騙されてはいけない。

ストーリー・あらすじ

殺し屋ファブル。裏社会においても都市伝説として語られるほど謎に包まれたこの組織は、いつしか「寓話」という意味のFable(ファブル)と呼ばれるようになる。

ザ・ファブル
出典:ザ・ファブル(1) 南勝久

覆面を被り必ず対象者の息の根を止める。身体能力に長けナイフによる近接でも銃による遠隔でも確実に仕留めるファブルは、プロ6年目にして計71人もの人間を葬ってきた、プロ中のプロ。

だが、、、今年はやり過ぎた、殺し過ぎたのである・・・冒頭わずか数ページにしてシリアス要素が一気に薄れていく。

殺し屋ファブル、彼が属する組織からの次なる指名は一年間の潜伏!一般人になりすまし、殺し屋稼業の休業を言い渡されてしまうのである。組織の命令は絶対、ファブルは組の伝(つて)をたどって大阪での真っ当人生がはじまるといったストーリー。

ザ・ファブル
出典:ザ・ファブル(1) 南勝久

佐藤明(あきら)と偽名を使い平々凡々な日常生活へと溶け込むのが今回のミッション。サポート役に佐藤洋子(同じく偽名)を従えて一般庶民の生活がはじまる!

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佐藤明という顔芸

殺し屋のプロとして生きてきた佐藤明、一般市民の平々凡々な生活には当然疎い。そもそも一般市民の「一般」さえなんなのかも分からない、なんたって殺ししかしてこなかった男である。

しかも大阪で世話になるのは、真黒組(まぐろぐみ)というヤクザと来てるもんだから、何もないわけがない。それにしても組の名前なーw

突然、佐藤という若造が真黒組の世話になる。

素性も何も知らされていない若い連中は、手荒な真似で正体を探ろうとしてくる。普段ならこんな弱っちい奴らは問答無用の鉄槌を下す佐藤だが、ここは大阪、俺は殺し屋ではなく一般ピープルだ。

ザ・ファブル
出典:ザ・ファブル(1) 南勝久

迫真の弱小キャラを演出じつつその場をやり過ごす。まさにプロ中のプロ。しっかり一般人になりきっている明。しかし、嫌がらせは終わらない、ヤーさんはしつこいのである。

ザ・ファブル
出典:ザ・ファブル(2) 南勝久

だが、そんなやんちゃな組連中を軽々とまいて逃走。なんたって、そこはプロの殺し屋、勝てるわけがない。しかしである!逃げるときの佐藤のなんとも言えない絶妙な顔w、明らかにバカにしている半笑いw

まさにシュールすぎる笑いのポイント、だがこのマンガ、実のところ顔芸オンパレードなのである。ツボにはまればもう、シュールの虜、ジワジワがいつしか中毒性に変わる!

洋子、お前もか

顔芸は明ばかりではない。

パートナーとして一緒に付いてきた妹・洋子もなかなかの強者(つわもの)。身を隠すためのウソ兄妹だが、一緒に生活しているせいか、ある意味似たもの同士。

ザ・ファブル
出典:ザ・ファブル(7) 南勝久

ひぃ~ ひぃ~

兄妹のフリをしているが笑ったときの目元はまさに兄のそれ、普段の見た目が美人だけにこのギャップは笑わずにはいられへん!

さらに酒が入ったものなら彼女の化けの皮がはがれ男を食い漁る本性が現れる。やはり裏社会で生きてきた女、スゴミが違う。とあるバーでナンパされた洋子、電話番号を交換しエサを確保する。

次なるターゲットは女たらしの河合ユウキ。女郎グモが待ち構える巣穴に何も知らずにのこのこと、顔なじみのバーで会うことになる。

ザ・ファブル
出典:ザ・ファブル(8) 南勝久

大阪へきてまだ日も浅いのだが、マスターからドランククイーンの異名を付けられた洋子。さすがは殺し屋のパートナー。

今宵、ドラグンクイーンに挑む一人の若き子羊、洋子を是が非でもベッドインに誘うことだけしか頭にないユウキ。しかし彼は知らない、ここが女郎グモ(洋子)の巣穴だってことにwもう積んでいるってことにwww

愛すべきキャラたち

大阪で知り合ったユウキはもちろん愛すべき面白キャラたちは多数登場する。ホントに殺し屋が主人公のマンガなのか?と思えるほどの爆笑が待っているのである。

ザ・ファブル
出典:ザ・ファブル(7) 南勝久

真黒組の中でも佐藤の正体を知っている者はごくごくわずか。クロもその中の一人。

クロは正体は知りつつも佐藤に憧れているヤーさん。しかし、どうしても「ファ、マスクの男」とセリフの節々にファブルが出てくるのである。残念ながら頭が弱い子なのだ。

しかもこの言い間違えは終始治らず、ボディブローのように笑いのバロメーターをMAXにしていく。蓄積された笑いが飽和に達するとプププッと自然と笑いが堪えきれなくなるのである。

だが、そんなクロにも夢はある!

裏社会で一花咲かせたいクロは、殺し屋稼業に憧れていく。佐藤を「先生」と慕い、弟子入りを何度も懇願するのだ。佐藤のパシリとして今後も度々登場するキャラ。

ザ・ファブル
出典:ザ・ファブル(7) 南勝久

ファブルの武勇伝を聞いただけで、もうビンビンになるクロ。ドキドキ、ワクワキがもう止まらない!止められない!!

「ザ・ファブル」感想まとめ

殺し屋、ヤクザがメインだけにストーリーとしては組絡みの事件や抗争とグロい展開もあるが、シュールさも等しくある漫画。明の幼少体験やサヴァン症候群を思わせるセリフなど奥行きのあるストーリも魅力。

ヤクザでさえ赤子の手を捻る明の圧倒的強さは、一種の水戸黄門。勧善懲悪のため読後感がスッキリする終わり方もグッド。

もちろん組織からの指令により明自身は人を殺さない(殺せない)。だからモノホンの銃は使わず、身近なもので武器を作っていく。

花火から火薬を取り出し、煙幕弾や殺傷能力の低い弾丸を作り戦いに挑んでいく、縛りプレイのように限られた中で、お手製武器やなんちゃって拳銃を駆使した攻略は、想像の斜め上をいく面白さ、まさにファブルの名にふさわしい手際のよさ。

殺し屋という王道ジャンルの焦点を少しずらしたストーリーは個人的にガッツリハマった。かなりおすすめの漫画ですよ。

ザ・ファブル 南勝久
全巻:22巻(一部完結)
話数:全240話
出版社:講談社
連載:2014年11月-2019年11月

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