食糧人類は講談社が運営する「eヤングマガジン」にて、2016年6月~2018年8月まで連載されていたグロよりなSFホラー漫画。
原作は蔵石ユウさん、そして作画はイナベカズさんが担当。単行本全7巻にて完結。一部ネットでは打ち切り?と囁かれていますが、実際はちゃんとラストを迎えてます。
ちなみに、食糧人種のほかにも蔵石×イナベのタッグ作品はほかにもあり、たとえば『アポカリプスの砦』や『電人N』。電人NはコミックDAYSにて連載中です。
目次
食糧人類のあらすじ・ストーリー
高校生の伊江とカズはバスで帰宅途中、催眠ガスをまかれ何者かに拉致されてしまう。目を覚ました伊江は、冷凍にされた人間が整然と並んでいる光景を目にする。
な、なんなんだ!!?
伊江が連れてこられた施設では、人間がまるで家畜のように扱われていた。切断機で真っ二つにされる子供、薬を投与され強制多産される女、すべては「あの方」のためだという。
一体なにがおこなわれているのか?あの方とは一体誰なのか?施設から脱走を試みる中で、施設の真実、そして人類の新の敵が明らかになっていくといったストーリー。
食糧人種の主要キャラ考察
7巻完結漫画ということもあり、登場人物はそれほど多くはない。主要キャラも片手で数えられるほど、ここでは主要キャラのうちの三人をサクッと紹介。
伊江(いえ)

出典:食糧人類1 倉石ユウ イナベカズ 講談社
この作品の主人公、、、とはいっても、化物と戦ったりはせず、ストーリーが進行する上でのメイン視点としての役割。とはいえ、後半につれて彼の存在感は大きくなっていく。
食糧人類に登場するキャラは、いずれもワケアリな過去を持っているが、こと伊江に関しては過去エピすら紹介されないという悲しき主人公。
施設に拉致られた際、職員から「お前Ⅱ型だな」と言われ重要な伏線にも思えたが、実際にはそれほど意味を持つことはなかった。
友人であるカズも伊江と同じ部屋に送られたこと、さらにナツネや山引がいたことを考えると、目を覚ましたとき扱いづらい奴がⅡ型に区分されたのではないかと推測www
唯一のとりえは瞬間記憶能力。一度見た風景は写真のように記憶できるというものであった。この能力のおかげでナツネらと同行することになった。
ナツネ
カギを握る人物にして人類の未来を救った英雄。ナツネは「増殖種」と呼ばれ、異常なまでの高い再生能力を持つ人間。
そもそもなぜ、こんな特殊能力を持っているかといえば、ナツネの母・山崎さおりが施設に拉致られていたからであった。
さおりはこの施設で増殖種を産むための材料(母体)として利用されていたが、スキをみて脱走に成功、その後ナツネを出産する。

出典:食糧人類2 倉石ユウ イナベカズ 講談社
完全増殖種
ナツネが2歳のときに、身柄拘束のためにやってきた警察によってナツネが増殖種の初の成功例「完全な増殖種」であることが判明。その後、警察から逃れるために逃走。
このとき、母親のさおりは死亡。ナツネは、母親の仇とこんな身体にした大バカ野郎に復讐するために施設に潜伏することになる。
ちなみに、このとき増殖種を取り逃がした津島刑事は責任をとって警察官を退職、なぜ取り逃がしただけで退職なのか疑問に思うのだが、地球に棲みつく化物が関係していた。
山引(やまびき)

出典:食糧人類4 倉石ユウ イナベカズ 講談社
ナツネともう一人の英雄が山引。山引は男性というより中性的なキャラ(いろんな意味で)であり、笑顔がステキ。ちなみに、食料人類に登場する科学はトンデモ科学。
山引は倫理がごっぞり欠如した天才科学者である。東京理系大学に進学した山引は、人間とヒトデやナマコの遺伝子を掛け合わせてキメラを創り出してしまう。
さらには、放射能を浴びたことで特異体質となり、他生物のDNAを取り込むことで新たな能力も会得するという、天才がさらなるスペックを持ち合わせてしまう。
ヤモリのDNAを取り込み天井に張り付く能力を身につけたり、プラナリア(高い再生能力を持つ生物)のDNAを取り込み、刺し傷さえ簡単に再生する身体になったりと何でもアリ。
さまざまなDNAを身体に注入することで、生物の持つあらゆる能力を身につけてしまった山引。ただ、この特殊な身体がのちに人類を救う伏線となっていく。
食糧人類のグロシーン
食糧人類とは、タイトルそのまんまで人類が化物の食糧になっちゃうよという話。そのため、登場するコマはことごとくグロい描写が多い。
とはいえ、R指定にはなっていないので一応は誰でも読むことはできる、、、んですが、それでも人によっては目をそらすほどの残酷さはあるので閲覧注意は言っておきます。
生殖種

出典:食糧人類4 倉石ユウ イナベカズ 講談社
施設に拉致されてきた人間は瞬間冷凍されるばかりではない。排卵誘発剤を打たれ強制的に子供を産み続ける人間も存在する。
それが「生殖種」と呼ばれる人間、薬漬けにされた生殖種は死ぬまで発情し続ける。そして、使いものにならなくなれば廃棄。その寿命は短い。
さらに、職員にとっては生殖種はもはや日常。牢屋に入った女を見て笑みを浮かべて面白がってるほど。地獄のような環境でも人間は馴れてしまうことに怖ろしさがある。
夕凪(ゆうなぎ)の会

出典:食糧人類4 倉石ユウ イナベカズ 講談社
生殖種以外にも、この施設には恐ろしい人間がいる。その名も「夕凪の会」。夕凪の会は施設から逃げた人間を肉体改造する組織。肉体改造とはいっても生易しいもんじゃない。
たとえば、口吻部を手術して伸ばし嗅上皮を移植、4人分の眼球を一つに集め巨大な水晶体と網膜を移植と、もはや人間とはいえない姿形へと作り変えてしまう。
さらに夕凪の会責任者の桐生の命令は絶対。もはや尊厳なの皆無!しかし、夕凪の会が崩壊したとき、こんな身体にした怒りが爆発、桐生の最後は悍ましいものだった。
アイアイと有希
見た目のグロさもさることならが、精神的にもトラウマになるほどの衝撃だったのが、山引の彼女・有希の奇形な姿。
放射能を浴びて特異体質になった山引を心配した有希は自らも放射能を浴びると言い出すものの、山引とは違い、原形がもはやかつての可愛らしい容姿ではなくなってしまう。

出典:食糧人類4 倉石ユウ イナベカズ 講談社
メガネザルやアイアイの遺伝子を取り込んだ有希の姿は、まさに化物そのもの。手にもっているのばバッタをバリバリと音を立てながら食べる有希。
そこには人間としての理性も曖昧になり、むしろ動物としての有希の姿しかない。あんなに可愛かった有希がまさかこんな姿になってしまうとは。その後有希がどうなったかは不明。
食糧人類の伏線・謎まとめ
ここからは食糧人類の核心へと迫る伏線や謎について考察&紹介をしていきます。そもそも伊江が連れてこられた施設とはなんだったのか、まずはそこから見ていきます!
施設の本当の姿
施設の表向きは高レベル放射能廃棄物最終処理場『ゆりかご』という名称ではあるものの、その実態は化物たちのエサを日々供給する飼育場。
なら、なにを飼育しているのかといえば人類、人間。施設内で子供を多産させて怪物の食糧にするだけでなく、外からも拉致という形で連れてくる。
主人公の伊江が下校途中のバスの中で拉致られたのも食糧とするためでした。謎の施設が人間が管理していたというよりも、化物によって管理させられていたというのが真実。
つまり、拉致された人間はもちろん、所長含め施設で働いている職員も、ある意味食糧の一つに変わりなかった。真の黒幕は人間ではなく怪物。
なら、あの怪物は何なのか?
単行本1巻に登場していた巨大な幼体やカマキリのような巨大化物、コイツらの食糧を確保するためだけに人間を殺し加工し増殖させる施設。
普通に考えればおかしい。
警察や国はなにをやっとるのかと疑問が持つところですが、そもそも国自体がすでに化物に脅されているってのが「食糧人類」の世界観なのだ。

出典:食糧人類2 倉石ユウ イナベカズ 講談社
第9話では内閣総理大臣が化物に土下座するシーンがあったように、化物は一国の首相でさえも支配してしまう存在として君臨している。
そして、この状況は日本に限らず、世界各国が同じ状況下。なら、どうして化物はこんなことができるのか。それは、人間の知能をはるかに超越した地球外生命体だから。つまり、
宇宙人
だからというのが化物の正体。
地球温暖化の原因も実は!?

出典:食糧人類2 倉石ユウ イナベカズ 講談社
化物、改め宇宙人は地球にやってきたとき、海底深くにある装置を設置します。人間の技術では到底潜れないほどの深い深い深海にある装置。
この装置は、海底に眠っているメタンハイドレートを掘り出し、大量のメタンガズを大気中に放出するというのも。
ここ数年の地球温暖化の原因が、まさかの宇宙人が設置したメタンガス発生装置にあったというわけです。人類が宇宙人に従っていたのは、地球温暖化を盾に脅されていたから。
ちなみに、この装置は電磁波によって思いのほかあっけなく無効化されます。人類よりも知能が高い宇宙人は、どうやら電磁波対策はしてなかったみたいです(なんだそりゃw)。
ただ、実は話はこれで終わらない!
食糧人類結末!最終巻7巻考察
最終巻となる7巻。化物のこれまでのすべての歴史が語られますが、結局は「食糧人類」というタイトルにすべてが集約していたというオチでした。
人類を凌駕する宇宙人

出典:食糧人類6 倉石ユウ イナベカズ 講談社
人類が住む地球のはるか遠い場所に地球と同じく生命がいる星が存在していました。人類よりも高度な文明をもつその種族が、のちに地球にやってくる宇宙人。
宇宙人は知能が優れていたことですぐに飢餓状態に陥るという特性を持っていたようです。なまじ知能が高いがために消費するカロリーが高いのがその理由。
食欲という欲望には逆らえず、母星の資源を食べつくした宇宙人は、食糧を求めて新たな星への移住計画を立案、その中で見つけたのが我らが地球でした。
宇宙人が「人類」の創造主
ただ、宇宙人が地球を見つけたときにはまだ人類はおろか文明すらない。いるのは動物だけ。宇宙人がたどり着いた地球にはまだ人類が誕生していない時代だったわけです。
そこである動物に目を付けます。それが猿人。猿人を宇宙人の科学力によって進化させます。知能を持たせるために脳ミソを肥大化、二足歩行を可能にする、社会性を持たせる。

出典:食糧人類6 倉石ユウ イナベカズ 講談社
こうして宇宙人の手によって進化したのが人類。つまり、宇宙人は人類を創り出した創造主であり神ともいえる存在。聖書で例えるなら最初の人類であるアダムとイブを作ったのだ。
人類が勝てないのも無理もない。
赤ちゃんが母親に戦いを挑むようなもの。そして、時は流れ人類が溢れかえったころに、宇宙人の本艦が地球に辿りつきます。
宇宙人からしてみたら、猿を品種改良してようやく収穫の時期を迎えた、そんな想いのはず。本作のタイトル「食糧人類」とは、宇宙人が「食糧」として育ててきた「人類」を意味します。
副題には「Starving Anonymous」とありますが、意訳すると「飢えている何か」といったニュアンスになります。「何か」とは、宇宙人のことだったわけか。
秘策は山引の「出産」にあり!
食糧人類のラストでは、カマキリ型の宇宙人が施設を飛び出し世界中へと飛散します。人類が滅亡待ったなし!の状況の中で、ナツネと山引がある作戦を実行します。
増殖種であるナツネ、多生物のDNAを取り込んでいる山引の作戦とは、山引がナツネを取り込む(食べる)ことで大量のナツネを産み出すことでした。

出典:食糧人類6 倉石ユウ イナベカズ 講談社
ナツネの細胞を大量に取り込んだ山引からナツネ赤ちゃんがわんさか生まれます。増殖種のナツネでも青年になるまでも、6年はかかっていたのになぜ短時間で青年になれたのか。
恐らく山引の能力が関係していると思われます。山引はプラナリアのDNAを注入してナツネほどではありませんが、超再生能力を獲得しています。
ナツネと山引が融合したことで、ナツネの再生能力が爆上げし短時間で青年になれた、つまりプラナリアのくだりが伏線になっていたという考察です。
そんなこんなで大量に生まれたたくさんのナツネが、宇宙人との生存をかけたラストバトルへと展開していくわけです。いよいよ食糧人類ラストに迫ります!
ブリオン病による絶滅
大量発生したナツネを産み出した目的は、ナツネを宿主にブリオン病、いわゆる「狂牛病」を意図的に発症させて、宇宙人を全滅させるという作戦でした。
牛肉偽装事件で2000年代に日本で話題になった狂牛病。狂牛病は脳がスポンジのようにスカスカになる病気で、人間にも感染することが分かっています。

出典:食糧人類7 倉石ユウ イナベカズ 講談社
強いストレスと何度も再生する超回復力は、細胞の異常を起こしやすく、案の定ナツネの体内で狂牛病の原因となる異常ブリオンが発生、それを食べた宇宙人が狂牛病に感染したというわけ。
貪欲な宇宙人は感染した死体をも貪りくらうため、狂牛病の感染な爆速に拡大していき、最終的には自らの貪欲さで絶滅してしまいます。
山引の予測であったものの作戦は成功し、宇宙人はすべて絶滅したという人類勝利のラストでエンディングを迎えます。
食糧人類の評価、打ち切り理由まとめ
ここまで「食糧人類」について話してきましたが、ラストの描き方からすれば、ネットで言われているような打ち切りといった感想はなかった。
むしろSFホラー漫画としては、人類滅亡という大風呂敷をあの巻数でうまくまとめたもんだなという印象です。つまり、面白かったという感想ですね。
もちろん、とんでも科学は別として、ツッコミどころがあるのも確か。たとえば、地球温暖化装置を作った宇宙人の意図。人類の滅亡ではなく共存を願っていた彼ら。
ですが、地球温暖化そのものが地球の環境を壊す問題なわけで、人類を管理できたとしても、環境大変動によって結局人類滅ぶんじゃないのと思ってしまった。
ほかにも、宇宙人の知能が人類よりもスゲーって場面が一つもなかったこと。結局、所長の作戦にしても山引の作戦にしても、すべて宇宙人を出し抜けていた。
宇宙人はただ、欲望のままに人類食いまくっていただけで、そこに人類を凌駕する知性もへったくれもなかった。と、気になったところはあるものの、ラストはうまくまとめていたと思う。
真のラストは続く
実をいえば、宇宙人を絶滅させた、、、というのが真のエンディングではありません。宇宙人の餌として食われたナツネ、そして、山引は最後どうなったのか。
死んだのか生きているのか、彼らの安否が真のエンディングにて明らかになります。最終巻となる7巻では夢オチのような印象がありますが、実は、、、というなかなか胸アツなラストです。
詳しくは単行本をどうぞ。
ちなみに、伊江の親友カズのその後ですが、施設で謎の液体を飲んでしまったものの、体格は元に戻ってはいませんが、変な副作用は起こっておらず平凡な日常に戻ります。
最初はグロい漫画だと思ってたけど、ラストまで読んでみると、読んでよかったと思える作品に仕上がっています。おすすめ漫画ですよ。