殺し屋・二郎と怪人山岡さんの大阪進出によって、佐藤兄妹周辺もだんだんと騒がしくなってきた15巻。真黒組抗争前だというのに、この面白さ!
二郎の暗殺成功を皮切りに、砂川の真黒組乗っ取りが始動、いよいよ本格的な抗争へと勃発していく。誰と誰が戦い、誰が生き残るのか、シナリオはいくつも考えられる。
佐藤も対岸の火事とはいかなくなってきた。山岡のシナリオには、彼等もまた登場人物だからである。果たして、このまま大阪に居続けるのか、気になるところだァ!
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山岡の話術
今回の読みどころの1つは山岡さんのセリフ回し。二郎に、佐藤兄妹殺害をチラリとほのめかすシーンでのこと、この言い回しがとてもよかった。
読んだとき思わずゾワッと鳥肌が立つほどの読み応え。
山岡は二郎に、「映画」に例えて説明する。裏稼業(殺し屋)はシャバには決して知られない日陰の世界、そんな誰の記憶にも残らない、自分という存在が誰の記憶にも残らない職業が殺し屋である。
そんな稼業でもファブル二人を殺せば、誰かの記憶に残るかもしれない。映画の「名シーン」が人を感動させ、記憶に鮮明に残るように、二郎も誰かの記憶に残り、そして伝説になる。
出典:ザ・ファブル15 南勝久 講談社
山岡の話術で二郎をうまくけしかける。果たして二郎と佐藤の接触というのはあるのかもみもの。とはいえ、今んところ二郎は伝説になるつもりはないようだ。
死に際の美学
二郎とのやり取りで、もう一つ気になるところがあった。山岡が言う「死に際」の美学である。ヤクザにしろ殺し屋にしろ、肝心なのは死に方である。
死は量より質なんだよ
恐怖を感じないがゆえの死に際の美学か、男気があるセリフであるが、もしやこれは山岡死亡のシナリオもあるのだろうか。
二郎にも「自分の身を考慮しないと」と忠告じみたことを言っていた。そして、山岡自身も死ぬ可能性を否定していない。結局誰が死んで、誰が生き残るのか、今後の展開はいくらでも考えられるわけか、ワクワクだな、おい。
出典:ザ・ファブル15 南勝久 講談社
もし、今回の真黒組抗争で、山岡の死に際が描かれるとすれば、20年前に醜態をさらしながら死んでいったヤクザのような、死に際を見せる最大級の自虐ネタをさらすのか、それとも、山岡さんらしい死に際になるのか、見物。
個人的には、伏線であってほしいところ。恐怖を知らない山岡が不可避の死と対峙したとき、一体どんな表情や態度、行動を見せるのか、ものすごく見てみたい衝動に囚われた。
誰が死に、誰が生き残るのか!
真黒組の抗争はこれから、ここからが一番盛り上がっていくストーリーだけど、その前哨戦ですでに面白い。そして先が読めないストーリー、ザ・ファブル最高だな、おい!
出典:ザ・ファブル15 南勝久 講談社
今のところ山岡が考えている登場人物に、佐藤兄妹も含まれていた。さらには、中国にいる現役ファブルに帰国に準備をさせたりと、山岡監督のキャスティングが着々と進んでいく。
ボスの命令を裏切ってまで佐藤兄妹を狙うのは、単なる好奇心からなんだろうか。真黒組の抗争劇だけでは物足りないのか、どう動くのかさっぱりぱりである。さすがは怪人・山岡さん。
緩急の鋭さは相変わらず
真黒組の抗争激のド緊張展開でも、そこはザ・ファブル、緩急の「緩」も魅力的!今回はクロちゃんのボクシング初体験にも触れておきたいところだが、佐藤の変顔の真相が明らかになったのはスルーできないw
佐藤が仕事の前にやっていた額トントンは一種のマインドコントロールであった。ただ、ここまでは予想内、集中力を高めるためにやっていたことは読めば分かる、問題はそこではない、問題は
出典:ザ・ファブル15 南勝久 講談社
どうして「変顔」をしなくちゃいけないかだ!
佐藤曰く、顔トントンのとき、すべての力を顔に集中しているのだという。あくまでイメージであるが、そのため顔が力みだす、その力みが変顔の正体だったのである!
スッキリしたwww
額トントンは佐藤なりのやり方で、たまたまあの方法が一番しっくりくるらしい。さらに、このコントロール法を身に着けるまでに5年という歳月を費やしたという衝撃事実も明らかになった。
洋子はそんな佐藤の変顔を見て爆笑、言っておくが、洋子よ、お前の顔も大概だぞ!
だが、次のページを開くや状況が一変する。砂川と山岡の初対面シーンというド緊張展開に再び戻るのが、このジェットコースター的起伏の激しさ、悪くないよ。