前回レビューしたハンター試験編に続き天空闘技場編を書いていこうと思います。今編はゴンとヒソカの因縁の対決だけでなく「念」という概念がハンター世界に登場する回でもあります。
師匠ウイングやズシとの修行とゴンの両親までの話をここでは「天空闘技場編」として扱っていきます。単行本でいえば5~8巻あたりまで。
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念と燃
ハンターハンターが少年マンガとしてくくられるのは、なにも少年ジャンプに連載しているからという安易な理由ばかりではない。
天空闘技場編で登場する「念」という概念を心と結びつけたことによって、強いメッセージ性が生まれたのは言うまでもない。
出典:HUNTER×HUNTER6 冨樫義博
ウイングさんはゴン達に最初に教えたのは「念」ではなく燃える方の「燃」でした。キルアはウイングの説明がウソであることを見抜きますが、ウイング曰く「燃」も「念」を操るために必要な過程と考えていた。
それは念を使う上で「心」をなによりも重要視していたから。強大な力ゆえに念能力者の資質がとても大切であると説くウイング。少年マンガとしてはニジュウマルすぎるほどのメッセージ性を持たせた上に、バトルの面白さも損なわせない。
とくにゴンという純真無垢なキャラを考えるとウイングがいかに重要な存在なのかが分かる。それを物語るのがウイングが本気でゴンを叱った場面。
本気のバチコーン
ハンターハンターはいいこちゃんの優等生マンガではない。人間の影の部分もしっかりと描いているから少年マンガの枠を超えた魅力を持たせている。
勧善懲悪ではない複雑な心理描写、キメラアント編ではメルエムとネテロのバトルなんてのは、どっちが悪魔なのか分からないほどのラストを見せていた。
ウイングさんに念を教わるゴンも天性の素質はもちろん、その純粋さで師匠の教えを守り日々鍛錬していく。だがその純粋さがゆえにいい師匠、よき仲間に巡り合えなけば道を踏み外しかねない危うさもあった。
出典:HUNTER×HUNTER6 冨樫義博
ギドとの初戦は狂気すら感じた。今までもゴンは無茶ブリする場面はあった。ハンター試験最終試験のハンゾー戦やゾルディック家のカナリアなど、でもいずれも「命」が取られるまでではなかった。
でも今回は生死を問わないデスマッチ、そんな状態で無謀にもオーラを解いて絶の状態で戦い続けるゴン、理由は命を懸けたこのバトルが「楽しいから」。
頭のネジが緩んでいるとしか思えない、まるで悟空的発想。地球の運命よりも強えぇ奴と戦いてーじゃねえんだよwww
出典:HUNTER×HUNTER6 冨樫義博
でも、この後ウイングさんがゴンをバチコーンと叩く。本気で叱ってくれる大人なんてそうそういないよ。ウイングさんはゴンにとって念の師匠だけでなく心(燃)の人生の師匠としても描く。
まさに少年マンガらしさを感じるコマである。
ただこの後もゴンは懲りることはないんだけどねwww
読者への伝え方
ウイングさんが説明する念には、一読しただけでは理解しきれないボリュームがあります。燃からはじまり纏・絶・練・発の基礎四大行に加えて、発にはさらに六性図という六つの系統からなる念が存在する。
ゴンたちは主に念の基礎となる四大行の修行を重ねていった。流れとしてはカストロ戦をきっかけに六性図の説明があり水見式でそれぞれの系統を調べていく。
この六性図の説明のシーンでカストロ戦のビデオを使うことで読者を退屈させることなく念の説明をしていたのは面白い。ちなみにこの手法はナックルのハコワレの説明においても同様の手法で描いています。
出典:HUNTER×HUNTER6 冨樫義博
SFはフィクションに説得力をもたせることで読者に感動や興味を抱かせますが、はじめにヒソカvsカストロ戦を描き、その後ビデオ解析によってもう一度、今度はどのように念を駆使して戦っているのかを実例を元に説明してみせた。
これによってバトルにおける念の使用、戦略、相性などを退屈させることなく読者に伝えることに成功する。ヒソカという魅力的なキャラもあって本来ならメンドくさい設定を楽しく読めてしまうのはさすが。
バトル漫画において技や設定を読者にどう説明するか実はとても難しいのだが、それをサラッとやり遂げてしまう冨樫、さすがとしか言いようがない。
ヒソカの立ち位置
ヒソカとゴンがライバルのような特別な関係になったのも今編のポイントの一つ。とくにヒソカの心理描写が見どころである。それはカストロ戦の後にマチに腕を治してもらったときのセリフに表れていた。
出典:HUNTER×HUNTER6 冨樫義博
ヒソカが言う「新しいオモチャ」とはゴンたちのこと。次のターゲットを見つけたことで幻影旅団の団長とタイマン勝負になっていく展開はご承知の通り。
もし仮にヨークシンシティ編で団長とタイマン勝負が実現していたなら、グリーンアイランド編でのヒソカが仲間になる展開には持って行けなかった。ゴンとヒソカの関係がハンター試験編と比べて良好な関係になっていったのはそのためだろうか。
そして暗黒大陸編での団長とのタイマン勝負。「団長」がいたからこそゴンとの奇妙な関係を生み、それでいて戦う対象からうまい具合に外れることができた。
出典:HUNTER×HUNTER7 冨樫義博
天空闘技場編のラストでは「次はルールなしの真剣勝負」と言っていたヒソカを考えると、どこまで作者が構想していたかは分かりませんが、絶妙なストーリー構成によってゴンとヒソカの関係が描かれているのが分かる。
ゴンの母親の正体
天空闘技場編が終了し、ゴンはキルアを連れて故郷のクジラ島に戻ったときミトさんからゴンの両親について話す場面がありました。
出典:HUNTER×HUNTER7 冨樫義博
ゴンはミトさんが本当の母親のとこは聞かなかった、ジンが残したカセットテープに吹き込まれていた母親についても聞くのを拒否。母親については作者としてももう描かないのかもしれませんね。
ゴンの母親はミトさん!でまとめちゃってるので。選挙編でもジンには母親についてなにも聞かなかったので今後も言及されないと思う。
主人公飛び抜けて人気になれない説
単行本のおまけページに第一回キャラ人気投票が載っているんですがこがれが面白い。一位がゴンじゃなくてキルアなんですよね。
思い出すのが幽遊白書のキャラ人気投票。ここでも飛影人気が多くて、主人公浦飯幽助は上位にはいるけど一位になれななかったイメージがあるw
H×H各編考察ハンター試験編 | 天空闘技場編 | ヨークシン編 |
1-5巻 | 5-8巻 | 8-13巻 |
G.I編 | キメラアント編 | |
13-18巻 | 18-30巻 |