19巻から30巻にわたり描かれる今編は、まさにH×Hの真骨頂。少年マンガという枠を超えて大人でも読み応えのあるストーリーになっている。
幻影旅団のときのように敵キャラをデフォルメして可愛く描く手法はキメラアント編でもあり、敵キャラに感情移入しやすい手法を冨樫先生は見つけたようですw
ただし冨樫らしいホラー要素が強くグロイ描写も描かれる今編では、せっかくの世界観が崩れてしまうと嫌う読者もいたと思う。
メリエル復活のところとか特にね。あれはどう見てもハメはずしすぎwww
出典:HUNTER×HUNTER21 冨樫義博
ちなみに個人的にゴンが年上キラーだったのは衝撃だった。あのどこぞの雑誌の表紙みたいな表情が妙に印象に残ってウザかったw
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60分の攻防戦
キメラアント掃討作戦の準備段階を経て、本命メルエムたちとのガチバトルで描かれた攻防劇は時間にして1時間もない。
単行本で言えば25巻から描かれる対決は「ナレーション」という今までにない方法で描かれたのが特徴。
心理描写や状況描写によって濃すぎるのほど1時間を描いていくのですが、こういった描き方は「カイジ」でお馴染みの福本伸行先生の手法に似ている。
ナレーションを意図的に入れることで複雑な心理描写を表現することができる上にストーリーにも重みが出ている。
ただしそれに比例して文章量が多くなるためテンポが必要になってくるが、途中中弛みはあったもののラストへ向けてのワクワク感は十分あった。
インフレ化
キメラアント編でよく言われるのが敵のインフレ化ですが、個人的には作者が意図的に設定していたように思います。
出典:HUNTER×HUNTER20 冨樫義博
ネテロがピトーをみたとき「ワシより強くね」と本音をポロリとしゃべっていた。意図的な設定でなきゃこんなセリフを登場人物に言わせるわけはないw
そしてなによりもゴンの目に表現されていたのように、頑固さや危うさは今までのストーリーで十分すぎるほど描かれていた。これはもう一種の伏線と言っていい。
GI編では手を吹っ飛ばされたところまで描いてしまったわけでです。ゴンにあと何が残っているのかといったら瀕死の状態になるしかない。
だって今まであんなにゴンを傷めて痛めてイタめつづけてきた作者がやることといったら何があるのかって話ですからね。ゴンさんになるラストは賛否両論ありますが個人的にはニジュウマル。
ゴンのココロ
GI編と比べてゴンの何が一番変わったって、キルアとの関係性ですよね。もしジンに会えたら「キルアはオレの最高の親友」と紹介したいというセリフでエンディングを迎えたのに、それが今編になるや急に状況が一変。
もう真逆の感情ですからね。
出典:HUNTER×HUNTER21 冨樫義博
カイトが生きていると本気で信じているゴン、純粋さがゆえに現実を目の当たりにしたときゴンが壊れてしまうという不安感は、ストーリーを読み進める読者の頭によぎったはず。この純粋さは狂気すら感じた。
それを象徴していたのがゴンの目
出典:HUNTER×HUNTER25 冨樫義博
▲光のないゴンの目
ゴンの目のアップは度々描かれていたのは鮮明に覚えている。その目に輝きはない。暗く寂しく冷たいながらも、その奥には抑えきれない怒りが表現されていた。
この怒りはキルアに八つ当たりとなって向かっていく。カイトが死んだという事実を冷静に受け止めるキルアに、ゴンは理解できなかったのかもしれない。
そしてなによりも、キルアに助けを求めず「一人で戦う」と宣言してしまうゴンとの間には深いミゾができてしまう。
出典:HUNTER×HUNTER30 冨樫義博
2人の関係の変化、そしてゴンの心の壊れップリをはキルアの目線からも描かれていた。キメラアント編の見せ場の1つ。
コムギというヒロイン
今編で思いのほかいい味を出していたのがコムギという少女。彼女と会ったことでメルエムに変化をもたらした。その最たるものが「自分の名前」。
出典:HUNTER×HUNTER24 冨樫義博
コムギに「総帥様のお名前は」と聞かれたことでメルエムは自分の存在意義について考えはじめていく。名前とは自己のアイデンティティを一番最初に認識する一種の記号、たかが名前、されど名前である。
蟻の王はコムギに出会ったことで何かが変わった。傷ついたコムギを抱きよせるメルエムに漂うのは「優しさ」、その顔は黒く塗りつぶされている。
出典:HUNTER×HUNTER25 冨樫義博
メルエムがはじめてみせるその表情は、さまざまな感情が込められていた、ゆえに作者はあえて表情を描かなかったのだろう。
確かなことはメルエムにとってコムギは「大切な女性」だったことである。その感情がなんだったのかは言わずもがなである。
ハンターハンター「キメラアント編」のラストがすごい!
キメラアント編での戦闘シーンは時間にしておそらく数分もない。しかし、そのわずかな時間を状況解説と巧みな心理描写によって描ききる。
非道
H×Hの展開といえばバトルマンガお決まりの悪い敵がいて、ゴンたちが倒すという流れだったが、キメラアント編では敵の描き方が違っていたのもストーリーに深みを与えていた。
とくに板挟みとなるハンター協会の立場はもはや少年マンガの枠を超えていた。
出典:HUNTER×HUNTER27 冨樫義博
どこぞの連合国のお偉いさんとの会話。責任は一切負わず、それでいていっちょ前に指示はする。まるで対岸の火事だ。お前が危機意識を持たなきゃだれが持つんだよと、どこかで見覚えのある怒りを覚える。
結局すべてをハンター協会に丸投げてしまう。ネテロの最期を見ても蟻以上にたちの悪い人間の姿を描いていた。
出典:HUNTER×HUNTER28 冨樫義博
キメラアントの王として絶対的なオーラ量とパワーでチート感を出していたメルエムが、はじめて「恐怖」という感情を持つ。それは暴力ではなく、人間がもつ底のない悪意に怯えた。
終わりのはじまり
ゴンがゴンさんになった時点で今後の成長は描きようがない。実際念が使えなくなったゴンが暗黒大陸編で登場する様子はなく、どうH×Hのエンディングを描くのか気になるばかり。
幽遊白書のように連載に追われることがなくなったわけで、時間はたっぷりあるだろうから絶対に投げ出さないでほしい。ホント主人公が屋台ラーメンの雇われ店長なんてエンディングは誰も読みたかない。
だからこそ、待ち続けますw
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