無印の「人狼ゲーム」の続編となるのが「人狼ゲーム ビーストサイド」。主人公は無印編で生き残った仁科愛梨。
前回は村人として人狼を突き止めていくストーリーでしたが、ビーストサイドでは人狼役として、村人を襲う側へと回ります。
そのため、無印に比べてグロ度がアップ。一方で、ストーリーがやや雑になった感があり、辻褄が合わない部分があったのが気になるところ。
そこで、そこら辺を含めながら完結編となる「人狼ゲーム ビーストサイド」について紹介&考察していきます。
人狼ゲーム 無印漫画「人狼ゲーム」ネタバレ感想 多田の本心と結末を考察
漫画「人狼ゲーム」は月刊キスカで2014年~2015年7月号まで連載していたホラー漫画。もとは川上亮先生の小説「人狼ゲーム」 ...
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人狼ゲームビーストサイドのあらすじ
謎の組織に拉致された高校生、仁科愛梨(にしな・あいり)、強制参加させられた人狼ゲームで、多くの犠牲を払いながら生き残った愛梨。
しかしゲーム終了後にスピーカーから流れてきたのは、「前半戦終了」というアナウンス。そして、はじまる人狼ゲーム後半戦!
後半戦では「人狼」役として同じく前半戦で生き残った井上このみとともに、正体を隠しながら村人を追い詰めていく。
しかし、新たな役職「用心棒」「共有者」が登場、さらに心理戦に長けた住人・佐伯(さえき)まことにより、ゲームは複雑化していく。
果たして愛梨は無事に乗り切り、人狼ゲームというデスゲームから生き延びることができるのか!?人狼ゲーム完結編。
人狼ゲームのルールおさらいと新要素
まずは今回適用される人狼ゲームの基本的なルールから押さえておきたい。
- 住人は正体を隠した3人の人狼とその他の村人で構成
- 村人は毎夜0時~朝6時まで自室にて待機する
- 人狼は毎夜0時~2時の間に村人1人を殺害する
- 毎日20時に住人1名を投票し最多数の住人を処刑
大体は前半戦と同じながらも、後半戦では若干の変更があった。まず気になったのが、人狼役が二人から三人へと増えていたことだ。
どうやら、今回の人狼ゲームは、毎回同じルールが適用されるとは限らないようなのだ。人狼が増えたことでゲームにどう影響するのか。
さらに、住人側にも新しいルールが適用される。その一つが新たな役職。用心棒や共有者といった役職の追加だ。
新役職の登場
前半戦では住人と人狼、そして予言者の三つの役割でゲームは進行していたが、後半戦ではこれにプラスして、用心棒と共有者が登場します。
- 用心棒:自分以外の住人の一人を毎晩人狼から護れる
- 共有者:共有者は二人、お互いの正体を知っている
用心棒の登場によって、前半戦では毎晩住人を殺せていた人狼が、必ずしも殺せなくなってしまった。そして、気になるのが共有者という役職。
予言者や用心棒はゲームにおいてキーパーソンになるのは容易に想像がつくが、共有者はお互いの正体を知っているだけ、ゲームに直接関係がないようにも思う。
人狼役の愛梨も、特別な能力のない共有者がゲーム上どう影響してくるのか、はじめは把握しきれていなかった。しかし、のちに人狼を追い詰めていくことになる。
こうして見ていくと、村人側に新しい役職が加わったことで、ゲームバランスを考慮して、人狼役が三人になったと言えます。
勝利条件の変更
ほかにも前半戦との違いとして、人狼の勝利条件が変更されます。これにより前半戦ではできなかった駆け引きが可能になります。
人狼ゲーム勝利条件
ここでのポイントは二つ。
まず、人狼の勝利条件で「正体をバレずに」の文言がなくなったことで、人狼であることを自ら暴露することも可能になります。
実際この作戦は使われていました。
出典:人狼ゲーム ビーストサイド3 川上亮 小独活 竹書房
前半戦のルールに則れば、この時点で人狼であることがバレたこのみは、ルール違反で処刑される可能性が高かったですが、今回は問題なし。
さらに、「村人を皆殺し」にすることが人狼側の勝利条件がなくなり、「村人の数が人狼の数以下」と条件が変更されていた。
出典:人狼ゲーム ビーストサイド3 川上亮 小独活 竹書房
人狼と村人が同数になったらゲーム終了!!?
この勝利条件を利用して生き残ろうとしたのが人狼役の井上このみ。だが、彼女の理論は実際には破綻していた。
というのも、人狼と村人が同数なら人狼の勝利確定になるからだ。もう一度今回の勝利条件を確認してほしい。
人狼ゲーム勝利条件
今回の人狼の勝利条件は「村人の数が人狼の数以下の場合」、以下ってのは同数も含まれるから、同数なら人狼の勝利確定となる。
このみの提案が破綻している時点で、駆け引きの余地はそもそもない。しかも、他の住人は誰もツッコまないため、そのままスルーされてしまう。
人狼ゲームの魅力は心理戦、この部分が雑なのはダメすぎる。そもそも、今回のゲームにおいて唯一の切れ者、まことのあっけない退場がイタかった。
食わせ者!共有者まことの知略
今回の人狼ゲームのキーパーソンとなったのは共有者の佐伯まとこ。共有者という役職をうまく使い、他の住人に対して巧みな心理戦を披露していた。
まことの作戦は、自分が共有者であることを自らカミングアウトすることで、人狼ではないことをアピーし有利な立場を作っていった。
まことが嘘を言っている可能性も否定できないが、だとすれば本物が名乗り出ればいいという理屈。共有者という役職を巧みに利用していた。
出典:人狼ゲーム ビーストサイド1 川上亮 小独活 竹書房
さらに、自分の役職を自ら暴露することで、人狼に狙われるリスクも当然考えられるが、そもそも共有者はなんの能力もない、予言者が用心棒に比べて危険度は明らかに低い。
人狼が効率的に村人を処刑していくには、予言者や用心棒をはやめに始末したいところ。生き残れば、人狼であることがバレるリスクが上がるからだ。
こうした考えから、まことは場を制していく。
まことを中心にゲームは進んでいくと思いきや、突如として戦線離脱。しかも、処刑とは関係ないところでの死亡、作者ご都合主義にも思えなくもない。
そして、ここからグダグダなラストへ。まことがいなくなったことで、愛梨の「あのときのセリフ」を誰もツッコまないままラストを迎えてしまった。
ビーストサイドのラスト考察
人狼ゲームビーストサイド編では、愛梨が最後まで生き残るという形で終わりを迎えます。とはいえ、愛梨の心理戦が巧みだったかといえば決してそうではなかった。
逆に決定的な墓穴を掘っていたことから、すぐに人狼だとバレてもおかしくない状況だったのだが、最後まで触れられることはなかった。
問題のシーンは、このみを預言者に仕立て上げたこの場面。
出典:人狼ゲーム ビーストサイド3 川上亮 小独活 竹書房
「予言者を引いちゃった・・・」
愛梨はこのみを預言者と仕立て上げた張本人だったが、このみが人狼であることを自ら暴露した時点で、愛梨も共犯者、つまり人狼確定となる。
愛梨はこのみを「予言者」と言ったとき、このみも口裏を合わせるようにして、自分が予言者であることを認めていたわけだから、愛梨とこのみは繋がっているのは明白。
しかし、ここを指摘した住人は誰もいなかった。
結局、最後まで愛梨が人狼であるとバレることはなかった。ちなみに、最後まで残った一人に用心棒の対馬瞳が残ったが、愛梨との心理バトルの相手にならず死亡。
瞳を最後まで生き残らせるなら、もう少し歯ごたえのあるキャラでいてほしかった。愛梨のあの時のセリフをついてさえいれば、村人が勝利していたのは間違いなかった。
愛梨は裏切りを想定していた?
ちなみに人狼役の愛梨ですが、みんなでというよりは、自分だけが生き残ろうとする魂胆が見え見えだったように思います。
たとえば、このみが予言者であるとウソの情報をみんなに吹き込んだ場面。愛梨がとっさに思いついた作戦のようだったが、これが原因で墓穴を掘りこのみは脱落する。
出典:人狼ゲーム ビーストサイド3 川上亮 小独活 竹書房
何も聞かされていなかったこのみは、この場を切り抜けるためにすごい形相で愛梨を睨むのだが、どうやらこれが愛梨の作戦らしいのだ。
このみに相談なしに予言者に仕立てることで、リアルさを出し住人を信じ込ませる、たしかに作戦といえば作戦ではあった。
だが、愛梨の行動には人狼同士協力していそうで、協力していない。このみが窮地に追い込まれたときも、愛梨はまるで人狼ゲームを楽しんでいるかのように笑っていた。
出典:人狼ゲーム ビーストサイド3 川上亮 小独活 竹書房
笑って・・・ないよ
さらに、次に誰を殺すかを相談しているときも、今後の展開を全く読めていない愛梨が描かれており、発言するすべてが的外れ。
結局はこのみが一人で次の犠牲者を誰にするのかを決めていたほとで、愛梨のこうした行動が計算だったのかどうか。
ただ、ラストまで読むと単純に読み切れてなかっただけっぽいwww
人狼ゲームビーストサイド感想まとめ
無印と比べてビーストサイド編では、ストーリーのほころびが大きすぎるため、ストーリーに疑問を持つ読者は多いと思う。
前半戦ではできなかった新たな心理戦を展開していたのは面白かったんですが、肝心の理論が破綻していて心理戦になっていない。
愛梨の行動の穴、このみの明らかなセリフ矛盾、いずれも重要な場面だけに、そこがガバガバだとのめり込みたくてものめり込むことができない。
ちなみに、人狼ゲームの伏線はどうなったのか、回収されたのか、気になるところですが、結論から言えば一つも回収はされていないw
伏線は闇の中
ビーストサイド編でも犠牲になったのは北摂高校の生徒のみ。他の学生や一般人は参加していないことから、北摂高校がカギの握っているのは明らか。
さらに、今までの人狼ゲームで勝ち上がってきた生徒数から考えると、北摂高校の生徒の40人以上が犠牲になった計算になるのだが。
これほど多くの犠牲を出しながらもメディアでの放送が一切なく世間も騒がせていないことになり、気になることが多いのだが、黒幕の正体は不明のままです。
シリーズはまだまだ続きますが、愛梨が主人公となる「人狼ゲーム」は今回で最終回を迎えます。黒幕の正体は不明のままなので、今後のシリーズ作品の中で正体が明かされると思われます。
今作「人狼ゲーム ビーストサイド」の総評としては、楽しめる作品ではあるものの、前作以上にツッコみところが多いのは確か。
とはいえ、三巻完結でサクッと読める作品で、グロ要素も増し増しになっているので、こうした作品が好きな人なら読んでもアリかな。