古谷マンガでどれを手に取るかで、その後の作者の印象は180度違ってきます。稲中から入るか、ヒミズから入るかでえらい違うわけです。
悲しいかなギャグ漫画は時事ネタ(当時の有名人とかさ)があるからどうしても「古く」感じてしまう、自然と話題になるのはブラック古谷。
ネットだとさらにグロさや救えない作品のほうが話題になるから、手に取りやすい作品は中年おっさんが若い彼女作ったストーリーしか知らない。
まぁ、それでも興味を持てばいいんですが、衝撃が強すぎるのかお腹いっぱいになる読者もいるみたい。
けどこのサルチネスって作品は中二病を患った中年オッサンが主人公なのはいつものパターンなんだけど、ラストがとてもよい!
つまり「サルチネス」は面白いなって言いたかったのである、マル
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ストーリー・あらすじ
中丸タケヒコ、31歳。
14歳の頃から自宅に引きこもり、近所でも評判のアンポンタン野郎。そして妹の愛ちゃんの幸せだけをいつも考えて生きていた。
そんなある日、一緒に暮らしている祖父から「愛ちゃんが28にもなって結婚できないのは、タケヒコが未だ引きこもりだからだ」と言われ、妹のお荷物になっていることを知りショックを受ける。
出典:サルチネス1 古谷実
この衝撃的な一言をきっかけにタケヒコは妹に迷惑をかけまいと、自立するため家出をし東京へと1人向かうことを決意する。
だがずっと家にいたタケヒコにとって働き口があるわけもなく、公園のブランコで1人妄想に耽っていた。
そんなとき、ホームレスになったばかりだという谷川俊平に「友達になろう」と突然声をかけられる。
出典:サルチネス1 古谷実
ここにもアンポンタン野郎が一人がいたのである。さらに偶然みかけたパンツ泥棒こと、河合タイチを加えて三人の奇妙な同居生活がはじまっていく。
果たしてタケヒコは愛する妹のために、東京で金を稼ぎ自立することができるのだうか!といったストーリー。
タケヒコ語録
古谷作品はとかく名言(迷言)が多い!
サルチネスで言えば主人公タケヒコの「タケヒコ語録」が妙に胸にささるのだっ!
たとえばだ、サイキックと名乗る催眠術師の夢を語っていた無職のオッサンに「人生から逃げるな!」と叱咤激励をする。
出典:サルチネス3 古谷実
人生という摩訶不思議な怪物から逃げるんじゃない!と言う、どんなにツラくてもみんな頑張って闘ってるんだというのだ。
名言は認める、だが、言っている本人の人生を振り返ってみると、フラフープを床に落とさず2年間過ごすとか、土の中に埋まる生活を数ヶ月続けるとか、そんなアホなもんばっかであるw
出典:サルチネス1 古谷実
人生を無駄にしてるのはタケヒコ本人であり、そして読者の多くが「お前が人生を語るな!」とツッコミを入れる。しかし、なぜか含蓄のある説得力に聞こえるから不思議である。そういえばこんなことも言っていた。
出典:サルチネス4 古谷実
なるほどねと思ったわ、
ついさっき読み始めた童貞中年ニート男の声に耳を傾ける理由がさ。
いい人間とそうでない人間
タケヒコが普通に生きられない理由はどこにあったのか。実はタケヒコは幼少時施設で育っていたのである。
5歳のとき母親が一度引き取りにきたのだが、その3日後に自宅に子供を放置したまま失踪してしまったという。
残酷な話である、、、
それからタケヒコは、万引きを繰り返し妹ともに飢えをしのいでいた。結局母親が戻ってくることはなく、警察に保護され母方の祖父に預けられ今日に至る。
涙なしでは語れない波乱万丈な幼少期だが、タケヒコはそれでも母親を憎んでいないとキッパリと言う。そこには彼なりの価値観があったのだ。
出典:サルチネス2 古谷実
母親も望んであんな人間になったのではないと断言する。しかしタケヒコは神は信じていない。そしてこの世には「愚か者」と「不幸な人間」しかいないとも言う。
タケヒコにとって母親は不幸な人間に映っていたのだろうか。結局、どんな境遇であれ、人生というバケモノに闘うことでして自分の人生は切り開けないってことか。つれーな。
だが、タケヒコはいい奴である
結局タケヒコは実家に連れ戻されることになる。東京に出たからってそうそう仕事はありつけない、逆に人様に迷惑をかけることになるだけ。
無意味とは言わん、だが100%間違ったやり方で人生という化物と闘ってきたタケヒコwすべては妹のためとはいいつつも、結局は身勝手で一方的な自己満行為でしかなかった。
しかし、家出をきっかけに周りも環境も、そしてタケヒコ自身も少しずつだが変わっていく。人生を、愛ちゃんのではなく自分のこれからの人生について考えはじめる。
そんなある日、タケヒコがずっと願っていた愛ちゃんの幸せ、出産の報告を受け「生きていてよかった」と涙しながら心の底から笑うのだ。
出典:サルチネス4 古谷実
最終巻の帯には「残飯おとこにだって幸福はおとずれるのだ!」というフレーズがババーンと載っている。
サルチネスとは、英語で「塩味」という意味のことらしい。その名の通りビターでダークな味(作品)ではなく、適度な塩味加減に仕上がっている。
赤ちゃんの誕生を無条件でこんなにも喜べる奴に悪い奴はいない。それこそ光の早さのごとくである。読後感バッチリな漫画だった。
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