ヤンマガで絶賛連載中の「ザ・ファブル」、作者は南勝久。「なにわ友あれ」書いてた人。単行本13巻が発売されたんですが、これが予想の斜め上をいく面白さ。
宇津帆(ウツボ)編が終幕し新章へ向けての、ちょっとした息抜きとしてユルイ話を挟むことはマンガではよくありますね。ザ・ファブルもそうなんだけど、この「ユルイ話」がジンジョウでないほどの破壊力を持っていたのである。
笑いは「緊張」と「緩和」やで、とが明石家さんまは言ったが、漫画も同じ。進撃の巨人だって、緊張に中にギャグを放り込んでくるもんだから面白い、ザ・ファブルもそれに似てる。
けど、今回は面白さ+感動という、涙スパイスも入っていたもんだから、読み終わった後に心がジーーンと余韻が長く残っていた。
漫画「ザ・ファブル」感想 変顔、変顔、そして変顔w
ヤングマガジンで2014年から連載している南勝久先生の『ザ・ファブル』。殺し屋が主人公のマンガなのだが、表紙とは真逆にデュー ...
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クリスマス会
佐藤明(あきら)、本名は不明、ファブルと呼ばれる伝説のプロの殺し屋だが、今は大阪に身を隠し一般人を装いながら細々と生活を送る日々。
気づけば12月のクリスマス間近、生粋の酒乱、ミス・アルコール・ガールこと佐藤明の妹、洋子(ようこ)は、明のバイト先のみんなを呼んでクリスマス会をやることを明に提案するのだ。
出典:ザ・ファブル13 南勝久 講談社
洋子は楽しく酒が飲めればそれでいい、明のバイト先の社長も酒豪であることを兄から聞いていたこともあり、いかにして社長を限界まで酔わせられるか、今からワクワクの洋子。
明も妹の提案を承諾し、彼にとって「はじめての」クリスマス会が開催される!一方、クリスマス会の話を聞いた有限会社オクトパスの面々も、社長を筆頭に参加に乗り気。こうして、佐藤家でのクリスマスパーティーが実現したのである。
それぞれの思惑w
楽しい楽しいクリスマス会ではあるが、そのパーティーには思惑が渦巻いているのもまた事実。まず、社長の田高田、彼は明と岬をクリスマスパーティーに乗じてくっつけようと、さまざまな作戦を画策するw
出典:ザ・ファブル13 南勝久 講談社
田高田サンタは、若いトナカイ二人が「ツガイ」になることを狙っているのだ。お節介ではあるが、二人のことを思っているのがよく分かる、いい社長なのだ。
酒の飲むふりをしながら、二人が意識するように仕向けていく田高田。若いトナカイ同士、思惑通り急接近していく。だが、洋子がいると素になれないことを危惧した田高田は、洋子を酒で沈めてことを思いつく。
出典:ザ・ファブル13 南勝久 講談社
一方、洋子はというと、そんな作戦を知ってか知らずか、田高田をいかに泥酔させ、どんな酔い方を見せてくれるのかを画策してくのであるw
酒に酔い潰れた男の動きを魚のつまみに、酒を飲むのが何よりも楽しい洋子。酒神に愛された者しか享受できない、極上の遊び。酒に飲まれない強靭な肝臓を持つ女・洋子だからこそ味わえる楽しみである。
ここで、今回クリスマス会に参加しているメンバー4人の関係性について見ていきたい。佐藤洋子は兄明を監視しつつ、田高田をしっかりとマーク、田高田は明と岬をくっつけるためにも、洋子が少し邪魔者だと考えてる。
明はオクトパスでの弱虫キャラを維持するため、洋子の監視の下、バレないように演じきる。最後の一人岬は、単純にクリスマス会を楽しんでいる、そんな四人の関係性がイブに誕生したのだ。
腕相撲
まずは田高田が動いた!会話もお酒も進むなか、岬ちゃんの目の前で明に花を持たせようと、明に「腕相撲」と提案する。
出典:ザ・ファブル13 南勝久 講談社
勝ってはいけない勝が幕を開ける!
互いが互いに勝利を譲る腕相撲がはじまるw、佐藤は社長に花を持たせるために、そして、ヘタレキャラを演じるために勝ってはいけないのである。
しかし、勝者は田高田。自分が勝ってしまうというイレギュラーが発生するも、弱虫キャラを演じている佐藤は岬になぐさめられることで、いい雰囲気になっていく。
これはこれでいいか!
と田高田のイケテル大人っぷりに、横で見ていた洋子も「ステキ!」と熱視線を送るのである。しかし、いや、だからこそ、テキーラ対決を仕かけるであったw
出典:ザ・ファブル13 南勝久 講談社
腕相撲の勝者を祝うため洋子が注いだのはテキーラ!アルコール度数40%を超えるアルコールの塊のヤーツ!酒豪の田高田も思わぬ不意打ちに吐きだしてしまうが、彼女の顔を見るや
ドラッグガールがいよいよ仕掛けてきたな!
とテキーラ対決を阿吽の呼吸で認識し、洋子からの果たし状を男らしく受けるのである。しかし、洋子の底知れぬ酒豪をいまだ知らない哀れな子羊田高田。
テキーラ対決
出典:ザ・ファブル13 南勝久 講談社
グビコングビの応酬がはじまる!
だが、哀れな田高田、酒の神に愛されし洋子に勝てるはずもなく敗北。社長、遂に酒の限界値に達し、ロレツが周らなくなり、思考停止、そしてトイレで逆流、それをみて洋子、爆笑w
十分に楽しんだアルコールガール洋子、クリスマスパーティもお開きといった展開、隣の部屋では岬が酔いつぶれ、既にスヤスヤ夢の中、トイレで悶絶している田高田のために洋子は布団を敷くのであった。
父親の背中
洋子はテーブルで酔いつぶれたフリ、布団を田高田に譲る考えのようである。しかし、トイレから出てきた社長は酔いに揉まれウィー、ウィーと意味不明なことを言いながらも、頭を強引に働かせる。
出典:ザ・ファブル13 南勝久 講談社
隣の部屋を見ると布団が敷いてある、田高田のために洋子が敷いてあげたものなのだが、目の前のテーブルにはテキーラ対決をした洋子が寝ている。
酔いつぶれながらも、顔をパンッパンッと気合を入れて、風邪をひかないようウィー、ウィーと洋子の体を持ち上げて布団に連れて行く。
出典:ザ・ファブル13 南勝久 講談社
明らかに酔いつぶれて、意識も朦朧としているのだが、なんとか洋子を布団まで持って行くことに成功。布団に寝かしつけ、頭をポンポンと、まるで父と娘のような関係に思わずホロリ。そして腰をポンポンと叩きながら、自分は隣のテーブルの椅子で眠る。
田高田社長!!!
このとき洋子は寝たふりをしてるだけど、田高田の優しさに身を任せている。幼いときに両親を事故でなくしてしまった洋子、田高田が思い出の中の父親と重ねてしまったようだ。
ウツボ編では、ファブルのサポート担当と思いきや、砂川を軽くあしらってしまうほどの実力が発覚。そんな姿を見ただけに、洋子の「されるがまま」感はさらにグッとくるんだよね~。
爆笑ではじまったクリスマスパーティー、だが、いつの間にか気づけばお涙チョロリのイイ話になっとった。まさに南マジック!
ええ話やった