漫画版エヴァ最終巻となる単行本14巻のラストのコマです。
サード・インパクト後の世界でシンジ君のバッグに付けられいたミサトからもらった十字架のペンダントがとても印象的なコマです。
出典:新世紀エヴァンゲリオン(14) 貞本 義行 カラー
ペンダントの描写はこれだけではありません。
サード・インパクトにおいて、神の子としてリリスと融合したレイに質問攻めにあっていましたが、あのときもミサトのペンダントの描写が。
ラストに描かれたミサトペンダントの意味とはなんだったのか、そのほか気になる点を考察しながら漫画版エヴァを考えていきます。
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ミサトの最後のキス
これまでのシンジ君にとってエヴァに乗っているのではなく、父さんやネルフの大人たちの命令に従て乗らされてる感が強かったわけです。
そして、トウジ、アスカ、レイ、そしてダメ押しのカヲルくんを自らの手で握りつぶすというトラウマによって、精神がズタボロになってしまった。
出典:新世紀エヴァンゲリオン(12) 貞本 義行 カラー
彼が選んだのは「乗らない」という選択。大人なんて信じられらいとダダをこねます。人類の滅亡を受け入れるというよりも、すべてが嫌になった感じ。
だが、ここでミサトが「希望を持ってほしい」と訴える。まるで、引きこもりの息子を無理やり部屋から引きずり出す親のそれですw
そして、ミサトの本気のキスシーンへ。
出典:新世紀エヴァンゲリオン(12) 貞本 義行 カラー
大人になりなさい、シンジ君
シンジもミサトのキスを受け入れますが、なぜこんな時にミサトはキスをしちまったのか。おそらく、これは一種の通過儀。
愛する人のいない苦しい世界を守る意味を見出せず、父親ゲンドウと同じくリリスの卵に還元してしまってもいいと思っていました。
それを、ミサトのキスという行為によって、シンジ君の心を強引に返させ、そしてなんだかんだ成功したわけです。
ゲンドウの態度からますます内にこもったので、誰かがきっかけを作らなきゃいけなかった。しかも、相当のインパクトが必要。
サード・インパクトと十字架のペンダント
悲しいことに、ミサトはサード・インパクトが起こる前に死んでしまったことから、シンジ君が選んだ新しい世界にはいません。
出典:新世紀エヴァンゲリオン(12) 貞本 義行 カラー
シンジ君を逃がすため自爆したミサト
LCL化は他者との境界線が曖昧になった(ATフィールドが消失した)状態、肉体はないですが魂は存在しています。
そのため、再び自分と他者を意識すればATフィールドが展開して、肉体が元に戻るようになる、それがサード・インパクト後の世界です。
けど、ミサトはLCL化される前に死亡してしまいました。そのため、ミサトの象徴であるペンダントが描かれるラストになった。
キスの前にミサトはシンジ君に十字架のペンダンとを渡します。ゼーレが送り込んだ戦略自衛隊に追い詰められたあの時です。
出典:新世紀エヴァンゲリオン(12) 貞本 義行 カラー
十字架ペンダントはこのあと度々登場します。サード・インパクトが発生したとき、シンジ君に人類の未来が委ねられた場面。
出典:新世紀エヴァンゲリオン(14) 貞本 義行 カラー
シンジ君が綾波(リリス)に他者と関わりを求める決断には、ミサトが影響があるのは、このコマからして明らかです。
シンジ君がユイの言葉を思い出したことが決定打となり、人類補完計画が頓挫しましたが、ミサトの存在が大きいことは言うまでもありませんよね。
漫画版エヴァのラストシーン
ここまで漫画版のストーリーを見てきた通り、ミサトの影響力は大きかったのは確かです。人類を救った遠因といってもいいと思います。
ミサトの話はひとまずここまでにして、次からは漫画版エヴァの終盤より、気になったところを考えていきます。
新しい世界の季節はなぜ「冬」なのか
気になったのがどうして新しい世界では、季節が冬だったのか。エヴァの第壱話が夏だったことからも個人的に気になった部分でした。
思い出してほしいのはユイのセリフです。13巻においてシンジ君が思い出した母ユイとの記憶、この中でユイはこう言ってます。
出典:新世紀エヴァンゲリオン(14) 貞本 義行 カラー
シンジに雪をみせてあげたい
作中に根拠を求めるならば、このユイのセリフが理由になりそうです。シンジ君は生命の海で母親との再会を果たします。
そこで、母親との会話を思い出した。世界の人たちを幸せにすること、一緒に雪を見たいこと、だからラストでは雪が降っていたのかなと。
出典:新世紀エヴァンゲリオン(14) 貞本 義行 カラー
粉々になった綾波の粒子?
ただ、あれが雪なのかとツッコまれれば、知らんと答えるしかない。というのも、綾波(リリス)が粉々になって、それが地球に降り注いてたから。
いろんな解釈ができそうではある。
漫画版エヴァのキーワードは「手」
漫画版エヴァの特徴の一つに「手」があります。ここでいう手とは、比喩的な意味です。手に重要な意味を持たせていたのは注目したい。
94話のタイトル「掌(てのひら)」では、人と人との関わり合いを「手」という描写で表現していましたよね。
ミサトに平手打ちされたり、トウジに殴られたり、アスカに首絞められたり、シンジ君の他者との関わりあいは手で十分伝わりますw
たとえばゲンドウはアダムを取り込んだとき、手にアダムが現れますが、このときのセリフに注目してほしい。
出典:新世紀エヴァンゲリオン(13) 貞本 義行 カラー
最も醜い部分
ゲンドウは自身の手について「最も醜い部分」と言っていたけど、ここでいう手は他者との関わりを比喩した表現です。
つまり、このセリフが意味するところとは、他者との関わりあいの一切を拒否するゲンドウの価値観を示しているセリフなのです。
現にゲンドウはユイとの再会のためだけに生きた男であり、息子のシンジさえも拒絶していました。
そして、ゲンドウがレイに拒絶されたときのセリフには「私がほしいのはこの手じゃない」と言っていたのも印象的でした。
これを踏まえて、各キャラ、ここではレイとアスカそれぞれのラストで描かれたシンジとの関わり合いを見ていきたいと思います。
レイとのラストシーン
出典:新世紀エヴァンゲリオン(14) 貞本 義行 カラー
シンジ君とレイのこの握手はとっても重要なシーンです。さっきもお話ししたように、漫画版エヴァの手が意味するのは他者との関わりあいです。
シンジ君とレイが握手をしたあと、レイがはじけちゃったのも、握手をしたことで他者との境界線ができたからですよね。
生命の海はATフィールドが消失し他者との境界線が曖昧なところです。だけど、シンジ君は最終的に他者と関わりあうことを選びました。
シンジ君が他者との最初の関わりあいとして選んだのがレイです。握手は、他者との境界をはっきりさせる行為、エヴァ風に言えばATフィールドを有効にする行為。
他者を認識することは自分を認識することでもあります。比較対象は、自他二つが存在してはじめてできること。
そして、自分を自覚することは人の形を取り戻すこと、ATフィールドが復活し、自然は自己修復をはじめる、つまり、新しい世界が形成されていくという流れ。
アスカとのラストシーン
出典:新世紀エヴァンゲリオン(14) 貞本 義行 カラー
アスカの場合も見てみましょうか。これもレイと同じです。手をつなぐ行為は他者との関わり合いを比喩したものです。
このコマをみて、私なんかは、もしかしたらこの世界でもシンジ君とアスカがどこかで関わり合いをもつのかもしれないと思ったりします。
同級生なのか、友達なのか、恋人になるかもしれませんが、どの可能性もあります。だって、この世界ではシンジ君の決断によっていくらでも未来は変わるんだから。
こんな風に、シンジの関わり合いの描写として「握手」という行為で描かれていたように、漫画版エヴァでは手に重要な意味を持たせておりました。
漫画版エヴァラストコマを考える
どうやら新しい世界では、サード・インパクト前の容姿は同じだけど、記憶は引きつがれていないみたいですね。
ラストコマでは「未来は無限に広がっている」というシンジ君のポジティブ発言と、ミサトの十字架ペンダントがキラリんちょ。
出典:新世紀エヴァンゲリオン(14) 貞本 義行 カラー
ミサトはLCL化する前に死んだことから、新しい世界にはいませんが、シンジ君は例の十字架ペンダントは持っています。
生命の海でも十字架ペンダントを大切に持っていたので、新しい世界においても大切に持っているみたいです。
ただ、ペンダントにまつわる記憶があるのかは分からない。そもそも人間がLCL化して再び人の形になったとき、記憶はどうなっちゃうのかね。
オワリ
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