映画公開から話題の尽きない『君の名は。』ですが、映画を観て「なぜ」「どうして」といった疑問を持った人もいるはずです。
何回も映画を観て確認する人もいますが、ほとんどの人は、いつか放送されるであろう金曜ロードショウで確認すればいいかなwと思います。
まぁ、その前にレンタルとか動画配信で登場するんだろうけど、その前にぼくなりにいろいろ考察してみたので興味がある方はどうぞ。
ただ、ここでは小説を元に話を進めていきます。
というのも、
小説と映画で物語上の大きな違いはないけれど、語り口はすこし差がある。(中略)このようにメディアの特性として必然的に相互補完的になっている。
出典:小説 君の名は。新海誠
と小説の「あとがき」に書かれているように、相互補完的ながらストーリーはほぼ同じなので、小説版を根拠としても問題ないかなと思ってます。
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時系列の疑問
まず整理していきたいのは時系列!タイムスリップ系ものは時間軸が前後しちゃうのでごちゃごちゃしがち。
そこで、はじめにここから整理していきます。
小説版では三葉と瀧のそれぞれの一人称視点でストーリーが展開していきますが、ここではより理解しやすい瀧視点で振り返っていきます。
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瀧視点の簡易時系列表が↑の図。番号の順にストーリーが展開していきます。
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①
瀧と三葉がはじめて入れ替わる
↓
②
震災後の糸守町で再び2人は入れ替わり、瀧はティアマト彗星落下日にタイムスリップする
↓
③
三葉が東京で遭遇した瀧が中学生だったことから、3年の時間のズレがあることを知る
↓
④
運命を変えることに成功!社会人となった2人が必然の再開を果たす。ここではじめて時間軸が同じになる[/aside]
ポイントは瀧と三葉が同じ時間軸に存在していなかったこと。はじめは同じ高校生だと思ってたんですが、新海監督の巧妙なワナでした!3年という時間差がなかなか絶妙ですよねw
この時間差があったからこそ、携帯電話が繋がらなかったり、ティアマト彗星を知らなかったり、瀧と奥寺先輩のデートの日に三葉と遭遇しなかったわけです。
宮水家の秘密
瀧と三葉の入れ替わり現象は宮水家がこれまで受け継いできた能力によるものでした。
これは、宮水家に受け継がれてきた役割なのかもしれない。千二百年ごとに訪れる厄災。それを回避するために、数年先を生きる人間と夢を通じて交信する能力。巫女の役割。宮水の血筋にいつしか備わった、世代を超えて受け継がれた警告システム。
出典:小説 君の名は。新海誠
三葉の祖母一葉が「お前誰や!」と三葉でないことに気づいたのも、宮水家代々伝わる血筋(巫女の力)によるものなんだと思います。
記憶が曖昧になってしまうのも、この能力が「夢」を通じて交信する能力によるものだから。夢っていうのは、体験したなにかは覚えてるんだけど、そのなにかが具体的には思い出せない、そんな感覚ですよね。
ただ、三葉のケースでは記憶はかろうじて覚えていることから、三葉の能力が強かったんだと思います。まぁ、これは元を辿れば、三葉の母親である二葉が神がかった力を持っており、それを三葉が受け継いたようですが。
詳しくは小説版のアナザーストーリー「君の名は。AnotherSide:Earthbound」で詳しく描かれています。興味ある方はコチラも読んでみてください。
なぜ瀧は糸守町で三葉と再び入れ替われたのか
切れそうな細い記憶をたぐり寄せて瀧は、糸守町の窪地にあるご神体の巨木に辿りついたわけですが、ここでのポイントは「口噛み酒」と「結び(ムスビ)」。
そこで、一葉ばあちゃんのセリフを思い返してみると、
「糸を繋(つな)げることもムスビ、人を繋げることもムスビ、時間が流れることもムスビ、ぜんぶ、同じ言葉を使う。それは神さまの呼び名であり、神さまの力や。ワシらの作る組紐(くみひも)も、神さまの技、時間の流れそのものを顕(あらわ)しとる」
出典:小説 君の名は。新海誠
ここでいう神さまってなにかといえば、ムスブ行為のことを「神さま」と表現していることが分かりますよね。そして、ご神体にお供えしていたのが三葉の口噛み酒。
口噛み酒にもただのお供えものではなく、しっかり意味がありました。
「あのご神体の下に」と言って、婆ちゃんが巨木を見る。
「小さなお社がある。そこにお供えするんさや。その酒は、あんたたちの半分やからな」
出典:小説 君の名は。新海誠
三葉の半身を意味している口噛み酒、それを瀧が結ぶ(飲む)。これによって瀧と三葉が繋がれ、再び入れ替わることができた。口噛み酒を飲むときの瀧のセリフにも「あいつの半分」というセリフがありましたよね。
神さま(ムスビ)によって奇跡が起きたのです!
瀧と三葉が再開できた理由
ティアマト彗星が落下する日にタイプスリップした瀧が三葉と出会えたのも口噛み酒を飲んだから繋がることができました。
さらには、2人が出逢った時刻は黄昏(たそがれ)どき。この世ならざるものに出逢える時間。そして2人が出逢えた場所がカルデラの頂上というのも絶妙。
一葉ばあちゃんの「ここから先は、カクリヨ(あの世)」なんてセリフから考えても、この世とあの世のちょうど狭間にあるのがあの地点。あの場所だから2人は逢えたといえそうです。
また、黄昏時とは「カタワレ時」と言い換えていました、つまり瀧と三葉の2人の関係にも掛かっていたわけです。
謎多き男・父親俊樹(としき)の疑問
個人的に解釈が難しいのが父親俊樹の存在。それもそのはずで、実は小説や映画では俊樹の詳しいエピソードには一切触れていないw
そのため俊樹について知るためには「君の名は。AnotherSide:Earthbound」を読まないと理解できないんですよね。
そもそも、俊樹が町長になろうとしたのは、糸守町に根強く残っている宮水家の呪縛を壊すためだったんです。
宮水家に代々伝わる巫女の力に糸森町の住人たちは、あやかっていたようです。ことあるごとに宮水家に相談し助言をいただく、そんな図式がこの村には根付いていました。
一葉(おばあちゃん)はもちろん、二葉(三葉の母親)も宮水神社の宮司として糸守町から出ることは許されなかった、宮司としての人生を受け入れるしかなかったのです。
しかし、父親の俊樹はこの悪しき習慣に疑問を持ちはじめます。一生糸守町で生きていく運命、とくに嘆いたのは子どもたちの将来でした。
そこで、町長になって政治によってこの町を変えようと野心を燃やしていったんです!
映画冒頭で俊樹の町長選挙の演説をするシーンがありましたが、すべては娘の将来のための行動だったんです。背景を知るとなんだかジーンときますよね(涙
三葉はどうやって父親を説得したのか
実の娘に対して「お前は頭がおかしい!」「病院へ行け!」とまで言わしめたバカ親父がなぜ納得するに至ったのか?
ある意味これが君の名の一番の疑問かもしれませんが、この疑問もアナザーストーリーを読むことで理解できます。
俊樹は当然、宮水家の不思議な力については知っています。その力が二葉に備わっていることも理解していたはずです。
最初は「頭がおかしい!」と聞く耳を持たなかった俊樹ですが、三葉の真剣な願いに信じたのではないでしょうか。
なんたって、娘を守るために町長に立候補したくらいですから、愛情表現は不器用ですが、娘を愛しているのは紛れもない事実。映画ではこの部分が省略させているため、「あれ?」とクエスチョンマークがついてしまう。
三葉はいつから瀧のことが好きだったのか
君の名は至極の恋愛ストーリーなので、やっぱり気になるのがいつから2人は好きになりはじめたのかということ。
小説のストーリーは瀧視点がメインで進んでいきますが、いかんせん恋愛下手。奥寺先輩とのデートでも食事にまで辿りつけなかったヘタレくん。いくら年下とはいえそこは男性がリードすべきでしょうw
なので、ここでは三葉視点で考えていきます。
三葉の行動で注目したいポイントは、東京に上京して中学生の瀧に会い髪の毛をバッサリきった描写でしょう。
三葉はあれだけの想いを背負って東京に来て、そして決定的傷つき、街に戻り、髪を切ったのだ。
出典:小説 君の名は。新海誠
髪を切る=失恋というのは今でもメタファーとして使われているので、三葉は瀧のこの時点ですでに恋愛を意識していたと考えていいのかなと思います。
1人東京に上京し顔も知らない瀧に「絶対に会える」と確信してたことからも、入れ替わり現象の中で三葉は恋に目覚めていったんだと思います。
テッシーは地元を抜け出すことができたのか
三葉の親友テッシー、ラストでは東京に上京しているような、しかも、サトちんと結婚する描写までありました。
でも、ぼくとしては地元を離れてないと思うんですよね。テッシーの「ブライダルフェアなんて、もう散々行ったやろう」というセリフからも、おそらく下見のために東京に来ていたのではないかなと思います。
父親の仕事を手伝う描写もありましたし、本人もこのまま土建屋の跡取りとなることを受け入れていました。
「普通にずっと、この町で暮らしていくんやと思うよ、俺は」
出典:小説 君の名は。新海誠
あのセリフは、テッシーなりに考えての答だったと思うな。
もちろん、本人は不満たらたら。
テッシーの親父さんが宮水市長の選挙応援団長をしているシーンが冒頭に描かれてましたが、あれって明らかな癒着関係ですからね、そんなドロドロなバトンを次に受け取るのはテッシー本人なんですからww
そりゃぁ、イヤになりますよ!
三葉は糸守町を抜け出せたのか
なら三葉は地元を抜け出せたのでしょうか?
ラスト、瀧と三葉が東京で出会うシーンが描かれますが、三葉の場合は宮水家の呪縛から解放され、恐らく東京で生活してるんじゃないかと思うんですよね。
なぜか?
小説のアナザーストーリーまで含めて読んでみると、父親の俊樹の存在が大きいんですよね。
正直いって家族は壊れてしまいましたが、俊樹は俊樹なりに娘のために政治の力によって自由にしようとしていたわけですから、宮司とは違う道を選んでいったと思います、いや、思いたい!
おわり