福本伸行が描く『カイジ』はキャンブル好きの青年伊藤開司(カイジ)が己の命を賭ける賭博漫画。
借金返済のため、次々と危険なゲームに参加していくのだが、そもそもカイジが借金まみれになった原因というのが、バイト先で顔見知りになった後輩の連帯保証人からでした。
堕落的な毎日を過ごしてはいたものの、借金地獄に陥ったのは自業自得ではなかったのです。そして、この「連帯保証人」制度を調べていくと、かなり危険な法律であることが分かりました。
そこで、漫画『カイジ』を反面教師として連帯保証について考えていきます。
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借金地獄になったきっかけ
カイジが借金を背負ってしまったきっかけは、ささいな親切心からでした。
出典:賭博黙示録 カイジ1 福本 伸行
バイトしていたコンビニの後輩から頼まれたことで、断ることもできずに渋々快諾してしまったカイジ。「迷惑かけませんから」というセリフは借金を頼むときの常套句となっていますが守られることはなかった。
結局、後輩は借金を1円たりとも返済せず、カイジが知ったときには金利も上乗せされ、30万がたった14ヶ月で358万円にまで膨れ上がっていた。
ただ、ここで補足しておきますと、金利20%というと、ふつうは「年利」をイメージしますが、ここでは「月利」20%(もちろん複利)というありえない数字になっていました。
これは明らかな違法であり詐欺ですから、契約自体がそもそも成立していないのですが・・・
出典:賭博黙示録 カイジ1 福本 伸行
連帯保証人詐欺を知ったカイジだが、遠藤さんの口車にまんまと乗せられ、人生逆転をかけた希望の船エスポワールに乗り込むことになる(この時点でカイジは「債務者」へと転落した)。
明日は我が身!カイジのケースは特別なことではなかった
保証人に同意するとどのような責任を負ってしまうのか。
カイジは「後輩のため」に契約内容を確認もせずに、押し切られるように同意しましたが、感情にまかせた契約は、たとえ身内であっても後でしっぺ返しを食らう可能性があることを忘れてはいけません。
日本弁護士連合会が実施している破産申立事件に関する調査結果によると、「第三者の債務の肩代わり」による破産はおよそ10%にも及ぶことが明らかになりました。
破産者の10人に1人が「他人の債務」が原因という恐ろしい結果に。
つまり、程度の差こそあれ、カイジのような状況は現実に起こっていたわけです。
連帯保証人が負うべき債務とは
保証人についてより深く理解するために今回参考にしたのは、自由国民社から出版されている『保証・連帯保証のトラブルを解決するならこの1冊>』です。弁護士の石原豊昭先生が監修として編纂に携わっています。
この中で、保証人の責任について解説しています。
保証人になると債務者が契約どおりに支払いをしない(あるいは支払いたくても支払えない)ときには、債務者にかわってその全額を支払わなければなりません。これが保証人の保証債務であり、ケースによっては、そのために自分が全財産を失うことも起こりうるのです。
出典:保証・連帯保証のトラブルを解決するならこの1冊 自由国民社
カイジも連帯保証人になったばかりに、破産寸前にまで追い込まれていったわけです。
「保証」と「連帯保証」では法的責任がまるで違う
ここまでの記事の中で「保証」「連帯保証」と区別なく明記してきましたが、実は「保証」と「連帯保証」とでは、法的な意味や責任がまるで異なります。
通常の「保証」の場合には、保証人に対して請求が来た場合に、「先に債務者に請求してくれ」という主張(催告の抗弁)ができます。また、保証人の財産に強制執行をかけてきたときには、主債務者に財産があることと執行が容易なことを証明できれば、先に主債務者の財産に強制執行をかけろという主張(検索の抗弁)もできます。
出典:保証・連帯保証のトラブルを解決するならこの1冊 自由国民社
※主債務者とはお金を借りた張本人のことを言い、連帯保証人(債務者)と区別するため主債務者と表記。
しかし、連帯保証では「催告(さいこく)の抗弁」も「検索の抗弁」も主張できないというのです。
しかし、連帯保証の場合には、いずれの抗弁もできません。債権者は、債務者と保証人のどちらでも、取りやすい方からすぐに債権の回収をはかれるのです。
出典:保証・連帯保証のトラブルを解決するならこの1冊 自由国民社
連帯保証に伴う責任の大きさが分かると思います。契約にサインしてしまうと、債務者と同等の返済責務が負わされると思ってください。
たとえ、身内でも、ましてや両親であっても、自分が納得できない保証・連帯保証はすべきではないのです。
連帯保証は債権者と債務者の契約
「絶対に迷惑はかけないから」「今月の資金繰りさえなんとかなれば」などなど、あの手この手で連帯保証をお願いしにきます。
もちろん、頼んでくる方も相手を陥れようとするよりも、どうしよもない状況で懇願してくるケースも多々あります(だからこそ余計に辛い)。
しかし、今まで見てきたように、「連帯保証」に伴う責任は、債務者と同じくらいの責務が生じると思ってほぼ間違いありません。
いくら気の毒と思っても、自分の人生を天秤にかけるようなマネは誰もしないはずです。法律上いつ借金の請求がきてもおかしくない立場にあるわけですから。
ここで、もう一度バイトの後輩からのセリフを見ていきます。
出典:賭博黙示録 カイジ1 福本 伸行
保証人を頼まれた場合、どうしてもお願いしている人との契約と思いがちですが、契約するのはあくまで債権者になります。
お願いしている目の前の人は債務者にすぎません。そして、あなたもその1人になろうとしているのです!
酷な言い方ですが、どんな理由であっても信用しうる根拠は全くないのです。
債務者が「絶対に迷惑はかけない」などと誓ってくれていても役には立ちません。保証契約の当事者である債権者には関係ないことだからです。
出典:保証・連帯保証のトラブルを解決するならこの1冊 自由国民社
金銭トラブルの中でも連帯保証は身近な問題の一つと言えます。実際の法律を読んでいくと、債務者にとってかなり割に合わない契約になっていたことが分かったと思います。
カイジのような転落人生になりかねない現実があることは重々知っておくべきです。